MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ウィーアーリトルゾンビーズ』

2019-06-19 03:58:32 | goo映画レビュー

原題:『WE ARE LITTLE ZOMBIES』
監督:長久允
脚本:長久允
撮影:武田浩明
出演:二宮慶多/水野哲志/奥村門土/中島セナ/佐々木蔵之介/工藤夕貴/池松壮亮/佐野史郎
2019年/日本

観客の共感を拒絶する作品について

 バンドを扱った最近の作品を例に挙げるなら、バンド活動を通じて主人公たちの成長が描かれる『小さな恋のうた』(橋本光二郎監督 2019年)という「正統派」のものがある一方で、『さよならくちびる』(塩田明彦監督 2019年)のような、物語よりもバンドそのものの「生々しさ」を描くようなものもある。
 ところで本作は、作風としては後者にあたるはずなのだが、『さよならくちびる』ではまだ描かれていた主人公たちの葛藤というものさえない。主人公で13歳の4人の子供たちは全員両親を失っているのだが、例えば、ヒカリやイシやタケムラがイクコに自分たちの亡くなった母親の面影を認めてもイクコは完全に拒絶する。誰かが「マジ」になろうとすると誰かがニヒルに対応することで物語はクールに進行し、ラストは両親の葬儀に出席しているヒカリが鯨幕に見ていた「幻想」のような形で終わり、ストーリーの大雑把さも手伝って観客に共感する隙さえ与えない。
 顔のアップでシークエンスを作ったり、楽曲の良さを下手なボーカルで歌わせたりと、この「敢えて」が成功しているかどうかは微妙で、個人的には1980年代によく見た「パルコ/電通」作品のようなポストモダンのあざとさが悪目立ちしているように感じた。映画というよりもインスタレーション作品だと思うが、主人公たちと同じ10代の観客には共感を得るのだろうか?


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『泣くな赤鬼』

2019-06-19 00:56:48 | goo映画レビュー

原題:『泣くな赤鬼』
監督:兼重淳
脚本:兼重淳/上平満
撮影:向後光徳
出演:堤真一/柳楽優弥/川栄李奈/竜星涼/堀家一希/武藤潤/佐藤玲/キムラ緑子/麻生祐未
2019年/日本

子どもっぽい「赤鬼」について

 「赤鬼先生」と呼ばれる高校教師の小渕隆が何歳なのか具体的な言及はなかったが、主人公を演じた堤真一が50歳を過ぎており、それが現在の主人公の年齢と捉えるならば「ゴルゴ」と呼ばれる教え子の斎藤智之を受け持ったのは30代後半から40代前半であろう。
 ところで赤鬼とゴルゴが関係をこじらせた原因は、野球に関するセンスは誰よりも良かったにも関わらず、それが災いして野球に真摯に取り組もうという気概が野球部の顧問をしていた赤鬼に感じられなかったためで、三塁手として定位置にいたゴルゴに対して和田圭吾を競争相手にして奮闘させようとするのだが、明らかに自分の方が上手いと確信しているゴルゴは不満を持ち、練習に参加しなくなり、和田が言った嘘を信じたゴルゴは赤鬼に不信感を抱き、学校も辞めてしまうのである。
 ゴルゴに根性が無いというのは間違いないと思うが、それは赤鬼も同じであろう。例えば、赤鬼が教師になりたての20代くらいであるならば、感情の行き違いという事態はあり得ると思うのだが、40歳くらいのベテラン教師ならばもう少し大人になって野球部を辞めるというゴルゴを身を挺して止めるべきなのである。どうも赤鬼が生徒に対して意固地になる子供っぽさが気になって共感できなかった。


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