原題:『WE ARE LITTLE ZOMBIES』
監督:長久允
脚本:長久允
撮影:武田浩明
出演:二宮慶多/水野哲志/奥村門土/中島セナ/佐々木蔵之介/工藤夕貴/池松壮亮/佐野史郎
2019年/日本
観客の共感を拒絶する作品について
バンドを扱った最近の作品を例に挙げるなら、バンド活動を通じて主人公たちの成長が描かれる『小さな恋のうた』(橋本光二郎監督 2019年)という「正統派」のものがある一方で、『さよならくちびる』(塩田明彦監督 2019年)のような、物語よりもバンドそのものの「生々しさ」を描くようなものもある。
ところで本作は、作風としては後者にあたるはずなのだが、『さよならくちびる』ではまだ描かれていた主人公たちの葛藤というものさえない。主人公で13歳の4人の子供たちは全員両親を失っているのだが、例えば、ヒカリやイシやタケムラがイクコに自分たちの亡くなった母親の面影を認めてもイクコは完全に拒絶する。誰かが「マジ」になろうとすると誰かがニヒルに対応することで物語はクールに進行し、ラストは両親の葬儀に出席しているヒカリが鯨幕に見ていた「幻想」のような形で終わり、ストーリーの大雑把さも手伝って観客に共感する隙さえ与えない。
顔のアップでシークエンスを作ったり、楽曲の良さを下手なボーカルで歌わせたりと、この「敢えて」が成功しているかどうかは微妙で、個人的には1980年代によく見た「パルコ/電通」作品のようなポストモダンのあざとさが悪目立ちしているように感じた。映画というよりもインスタレーション作品だと思うが、主人公たちと同じ10代の観客には共感を得るのだろうか?