原題:『Ben Is Back』
監督:ピーター・ヘッジズ
脚本:ピーター・ヘッジズ
撮影:スチュアート・ドライバーグ
出演:ジュリア・ロバーツ/ルーカス・ヘッジズ/キャスリン・ニュートン/アレクサンドラ・パーク
2018年/アメリカ
キリスト教の教義を挟まずに薬物依存者と接する意味について
『ビューティフル・ボーイ』(フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン監督 2018年)同様に薬物依存症に苦しむ息子とその母親の物語で、詳細は描かれていないが息子がドラッグに嵌るきっかけが親の離婚と再婚という点も同じである。『ビューティフル・ボーイ』と本作の違いはキリスト教の教えが示されないことで、治療施設からクリスマスイブに突然帰って来た息子のベン・バーンズに対して実の母親のホリーはベンを施設に戻すことなく徒手空拳でベンに接する。それは恐らく宗教が間に入ると「本当」のベンが見えなくなると思ったからであろう。実際に、ベンは自身が依存しているだけでなくドラッグの仲介をすることで他人も薬物中毒に陥れていたことを知ったホリーは愕然とするのである。
『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』(小林聖太郎監督 2019年)が飼い猫のチビが行方不明になったところからストーリーが動き始めたが、本作は飼い犬のポンスがいなくなったところから「地獄」が始まる。猫と犬の違いでこんなに人生が変わるのかと感じているのは私だけであろう。