原題:『ザ・ファブル』
監督:江口カン
脚本:渡辺雄介
撮影:田中一成
出演:岡田准一/木村文乃/山本美月/福士蒼汰/柳楽優弥/向井理/佐藤二朗/佐藤浩市
2019年/日本
「寓話」で描かれる意味のないイラストについて
タイトルの「ファブル」は「寓話」という意味らしいのだが、これは主人公の殺し屋の佐藤アキラを指しているのだから「伝説(の殺し屋)」と訳した方が良いと思う。
ミサキを演じた山本美月の顔をヨウコを演じた木村文乃がやりたい放題で変顔にさせていたシーンは大いに笑ってしまったが、ここではアキラが描いたイラストについて論じてみたい。
バイト先でミサキに乞われてアキラはパソコンやノートにイラストを描くのだが、決して上手いとは言えないその作品は何故か絶賛されて採用されるのである。このシーンの伏線は入院している海老原の元にアキラのボスが訪れた際に、サヴァン症候群を話題にするのだが、要するにアキラはサヴァン症候群であるために訓練によってさらに感性が研ぎ澄まされ、猫舌になり、事件現場の当時の状況まで見えるようになり、しまいには芸人のジャッカル富岡のつまらないネタにも面白みを見出してしまうのである。
ところでアキラはその後、一人で部屋で飼っている「カシラ」と呼んでいるインコを描いているのだが、そのイラストはまあまあ上手いのである。これが意味することは普通の生活を送っているうちに殺し屋としての能力が落ちた分、他の才能が伸びているという暗示かと思ったのであるが、その後アキラが描くイラストは下手なので、どうやらアキラのイラストに意味を持たせていないようなのである。あれだけアキラにイラストを描かせておきながらそこに何も暗示させていないという演出はもったいないというか不可解としか言いようがない。