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医大生・たきいです。

医大生的独言。

「神戸大学感染症内科版TBL」を読んで

2015-11-04 22:48:15 | 医学書レビュー

実習中、上の先生方からブロガーであることをバレがちなわたくしですが(笑)、今の診療科では珍しくバレずに終わりそうだと思っていたのに、肩を叩かれ、

「よっ、ブロガー」

と。先生方、こんなに拙いブログをご覧いただきまして誠に恐縮です。医大生・たきいです。







さて、最近読み終わったのがこの一冊。感染症の世界では超有名な岩田先生のご著書です。


神戸大学感染症内科版TBL: 問題解決型ライブ講義 集中!5日間
岩田健太郎
金原出版




神戸大学医学部の4年生への講義録。講義といっても一方通行の講義というわけではなく、学生に課題が与えられてそれに応え、双方向で講義が進められていくイメージ。途中で台風が来て、講義が中止になるやならざるや、だなんていう場面もあって結構臨場感があります。

5日間の講義。講義の終わりには岩田先生から課題が出されます。「はじめに」にもちょっと言及がありましたが、この企画を本にしたことにはデメリットもあって、神戸大の学生が宿題として家に帰ってうんうん考えてきた時間が、本の上ではあっという間に過ぎてしまうということです。岩田先生が学生に課した課題を自力で取り組んで来ればいいのでしょうが、そこまでガッツをもってこの本を読み切れる人はほとんどいないでしょう。将棋の棋譜並べをするときに、対局者と同じだけの消費時間分考えて棋譜並べする人がどれだけいるのかという話です。少なくともわたくしには無理です。笑

この本を読み終わっての一番の感想は、今まで医学知識の蓄積の仕方間違えてたかも…ということでしょうか。

疾患に付随する徴候なり検査結果なりというのは多彩なものがありますが、今まで、どれもが並列な関係で多く言えれば勝ちみたいな感覚で勉強に取り組んでいた気がします。こういう頭の使い方では臨床ではつかえないのだ、と、この本を読めば少なくともそう思えるのです。それぞれにはグラデーションがあって、そのイメージで疾患を記憶しないといけない。グラデーションとともに疾患を記憶して行って、臨床では仮設生成の繰り返し。なるほど。何割がこうなるのか。感度と特異度は。陽性尤度比は。かなり大事なことで、ややもすれば誤診につながりかねないということにようやく気が付けました。感度も特異度も正しいお作法という認識くらいでしかありませんでしたが、岩田先生に神戸大の学生がすかさずツッコまれているシーンを読んで、ようやく大事さが直感的にも痛感できた気がしています。ビギナーのうちにこのことに気が付けてよかった。5日間の講義中、最終日になってもこのことに気が付けていなかった学生さんは岩田先生から怒られている一コマもありました。生講義だと怖かったのかな

読みどころは他にも。

「イ○ーノート」「ス○ップ」などといった医学生の所持率高めな本も岩田先生の手にかかればまさかのエロ本よばわりです

「もっともああいった参考書ってさ、やっぱり知的レベル的にはちょっと微妙なので、あんまり人前では読まない方がいいと思うけど。何と言うのかな、エロ本と一緒だからさ。要するに読むことは否定しないけど、人前で読むのはやめた方がいいってことだよね。」(神戸大学感染症内科版TBL<金原出版>p.410より)

他にも「病み○」は教科書じゃないと頑なに主張する派の先生とか、医学生が使うカンタン教科書に対して難色を示すタイプのめんどくさい先生は大学病院でもたくさん働いてらっしゃるような気がしますが、それがただのギャグとかネタとかいう低次元なものとして受け取ってしまっている医学生は少なくないでしょう。「○○センセーの前でイ○ーノート持ってくと怒られるわー」的なことを言って。でも、どうしてカンタン教科書が臨床の現場では弱いのかと理論的に説明してくれたのはこの本が初めてでした。案外、格とか信頼性とかそういう問題でもないんですねこれが。詳しくは本書で。

因みに。「感染症」というタイトルは銘打ってありますが、感染症のことは置いといて、医学生が知るべき正しい勉強法が載っている本だと思ったほうがよいでしょう。ようやく感染症の症例が出てきたのは本書の後半に差し掛かって以降っすからね(笑)
うちの大学でもこういうエキサイティングな講義あればいいのになー。







(典型症例だけ集めた国試出題基準全疾患集とかあったら売れるんじゃないかなと思った人(笑))






▼エ○本も読みたいあなたはこちらから
イヤーノート 2016: 内科・外科編
岡庭豊
メディックメディア

【やさしイイ】呼内回る前に読んでおきたいこの一冊

2015-10-25 23:57:04 | 医学書レビュー

プレゼントでもらった天下一品のラーメン並無料券でタダメシだった晩御飯でした。抜かりなく期限内に使い切ります。医大生・たきいです。



久々に「読んでおきたいこの一冊シリーズ」でございます。本日は呼吸器内科編。CBTを受けるまででわたくしがメジャー科の中で一番理解できていなかった気がする科目しれません。そんな苦手な呼内もようやく分かってきました。本日ご紹介する、理解の助けとなった一冊がこれ。


レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室[ベストティーチャーに教わる全27章]改訂第2版
長尾大志
日本医事新報社



この本、元はブログだったそうです。著者は滋賀医大の長尾先生という方。「ベストティーチャー」の称号をお持ちで、若手医師、医学生から絶大な支持を得ておられるそうです。

「ブログを毎日継続することで何より自分の知識の整理になりました。」(「初版のまえがき」より)

毎日ブログを書いているのはわたくしも一緒ですが、下らない内容の「医大生・たきいです。」と有用な情報がたくさんの「やさしイイ呼吸器教室」との両者のブログの質は雲泥の差です。アクセス数くらいはひょっとしたら勝っているかもしれませんが(笑)。こういう役に立つ系ブログには敵いません。わたくしも長尾先生のように人の役に立つようなブロガーになりたい。。。

さて肝心な内容は。かゆいところに手が届く一冊というべきでしょうか、よく分からないから丸暗記しちゃっていたような箇所がハッキリクッキリ説明されてあります。そういうことだったのか、の嵐。

フローボリューム曲線、A-aDO2の考え方、間質性肺炎、このあたりは「やさしイイ呼吸器教室」を読んでようやく理解できました。

膨大な医学知識の迷路に入って途方に暮れることがよくあります。まず押さえるべき内容はなんなのか。どれも大事だと言われてもどう覚えたらいいか分からない……。そんなときに学習の道標となるのが、専門家の「これだけは」というお言葉。その教えに従って知識を整理していけば、教授試問で「一番大事なのはどれなの?」だなんて問われても、バッチリ答えられちゃうわけなのです。

続編もあるらしいです。

レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室[ベストティーチャーに教わる胸部X線の読み方考え方]
長尾大志
日本医事新報社


画像教室編もただいまさっそくAmazonでポチっちゃったほど。それだけ分かりやすくていい本でした。








(掃除に着手せぬまま土日が終わってしまった人(笑))

【極論】腎内回る前に読んでおきたかったこの一冊

2015-08-10 23:59:59 | 医学書レビュー

本ブログの医学書レビュー記事のタイトルとよく見比べていただきたいのですが、

<医学書レビュー過去記事>
【極論】循内回る前に読んでおきたいこの一冊
【まとめてみた】精神科回る前に読んでおきたいこの一冊

今回のタイトルは

読んで「おきたかった」

でございます。諸般の事情をお察しくださいませ(笑)。正直者です。医大生・たきいです。





腎臓もやるじゃないか――

口の悪いアメリカ帰りの循環器内科の先生が監修を務める【極論】シリーズ、今回は「極論で語る腎臓内科」のご紹介です。

極論で語る腎臓内科 (極論で語る・シリーズ)
香坂 俊
丸善出版


国試の腎内領域の問題、特に臨床実地問題には病理画像がつきもののようですが、本書は驚くべきことに腎臓なのに病理画像が1枚も載ってません。よって国試向けの勉強としては他の本でも勉強しないといけないのは明白ですが、逆にいうとそれが本書の最大の特徴かなとも思います。腎生検を取り上げない腎臓内科の本。「使える知識だけを」という【極論】シリーズの狙いは本書でも貫かれています。

病棟を回った時には、どうしてここにいる先生たちはこの診療科の道を選んだのだろうということまではたったの2週間では感じ取れなかったのですが、この本を読むと腎臓内科医の誇りのようなものがなんとなく感じれるのがgoodでした。

ただし、診療科の特性上なのか、極論で語る循環器ほどの読後の爽快感はなかったかも…(笑)


【極論】循内が、
うおおお、マジっすか!!!

って雰囲気だったと仮定すると、

【極論】腎内
へー、なるほどねー。

くらいです。

「この本は腎臓病に興味のある学生さん、研修医、そして一部の若い腎臓内科医を対象としています。」
(極論で語る腎臓内科 あとがきより)

とありましたが、

むしろ、腎内って何が楽しいの?って思っちゃった医学生にもいいんじゃないかと。
未だに「腎生検画像がどれも同じにしか見えない」というレベルの筆者を「もうちょっとちゃんと腎臓勉強してみようかな」と思わせてくれたのが本書を読んだ一番の収穫だったのかもしれません。






(読み物系の消化器の本を熱望している人(笑))






極論で語る腎臓内科 (極論で語る・シリーズ)
香坂 俊
丸善出版

【まとめてみた】精神科回る前に読んでおきたいこの1冊

2015-07-10 23:59:59 | 医学書レビュー

2週間お疲れ様でしたということで班のみんなでランチ。



友達が食ってたトビウオがめちゃくちゃ気になりました。ギョギョッ。医大生・たきいです。



以前、精神科医に「初学者の学生が読むのにいい精神科の教科書はどれですか?」と聞いてみたら教えていただいたのがこの2冊。標準精神医学と現代臨床精神医学。

標準精神医学 第6版 (Standard textbook)
野村 総一郎
医学書院


現代臨床精神医学
「現代臨床精神医学」第12版改訂委員会
金原出版


個人的にやや厚いながらも「現代臨床」の文章のほうが読みやすかったんですが、幅広く勉強するには薄い「標準」のほうがいいかなと身の丈に合わない発言をして結局統合失調症とうつ病のあたりをちょっとしか読まなかったことが印象深い。なんとなく覚えた単語を羅列することはできても、今一つポイントを掴みかねていました。さらには勉強しなきゃいけないのは精神科だけではないので、なかなか通読は難しいわけです。といっても勉強熱心で優秀な同級生は何気なく通読していたあたりに能力の差を感じましたが(笑)

ベテランドクターとして現在ご活躍の世代は、なんと国試でさえもマイナー科は厚労省から発表された科目しか出題されなかったのだとか。今年は皮膚科は勉強しなくていけますラッキーとか昔の医学生は言えてたわけです。それならば1冊読破とかもやれそうなものですが、現代の医学生はすべからく全科目制覇することが求められます。秀でた能力をお持ちの方々は何から勉強してもやり切れるのでしょうが、凡人医学生はどうすれば効率がいいかと考えなければ今の時代生きていけないのです。

なかなか時間は割けないけど、国試の4問に1問は占めると言われているマイナー科。短時間でビシっと要点を抑えられる方法はないものか…という医学生のお悩みを解決するのがこのシリーズ。

精神科 (シリーズまとめてみた)
天沢 ヒロ
医学書院


そうです、今年から発売開始されたまとめてみたシリーズです。

臨床ではAの場合もある、Bの場合もある、Cの場合もあるという例外的なことに驚くばかりですが、基本を知らなければなにが例外なのかも分かりません。著者個人の意見ですが、医学生はまず基本を完璧にすることが重要だと考えています。―まとめてみた精神科「まえがき」より


待ってましたこういう本。冗長な説明は皆無。端的なイメージの暗記で国試の過去問もスラスラ解けちゃいます。精神科回っている間に2回読みましたが、精神科だけなら国試行けるんじゃないかと思えたほどです。一読すれば理解できる文章の平易さももってこい。まずはコレで全体を大まかに理解してから講義にでれば理解も深まりそうですし、前述の2冊ももっと楽しく読めそうです。

そういえばCBT。あの試験って何故か精神科の問題いっぱい出題されていた気がします。自分だけだったのかもしれませんが10問くらい出題されていたのでは。CBTの試験中に「こんなに精神科たくさん出題されるならもっと勉強しておけばよかったよ…」と後悔した記憶があります。まとめてみた精神科を読んでおけば、CBTの精神科問題はラクラク満点狙えるでしょう。コスパのいいCBT対策としても本書はオススメです。

というわけで、診療科ごとに読んだ本の感想をブログに書いていこう式勉強法を始めておりますが(笑)、これなら続けられそうですのでどうぞ今後ともご期待くださいませ。







(夏休みの計画立て始めた人(笑))

【極論】循内回る前に読んでおきたいこの一冊

2015-06-26 20:08:20 | 医学書レビュー

ハードな2週間がようやく幕を閉じました。QOLを完全に犠牲にして異様なエンゲル係数を記録した模様ですが、そこで気づいたことは、本業でいっぱいいっぱいになると部屋が指数関数的に汚くなるということ。研修医になったら悲惨なんだろうなおれの部屋(笑)。医大生・たきいです。






文系タイプの人間なので、「文脈」がないと覚えるのが苦手です。医学部の授業ではレジュメが配られることが多いでしょうが、そもそも文章がそこにはないわけで、そこから文脈を見出すには授業にちゃんと出ていたか、優秀な頭脳の持ち主でなければ厳しいはず。だからこそわたくしは本を読もうかなという方針。しばらく試験もないので、1年間本を読みつつゆったり勉強していこうかなと。

そこでオススメするのがこの一冊。

極論で語る循環器内科 第2版
香坂 俊
丸善出版


医学部業界で今話題の【極論】シリーズでございます。

わたくしより優秀な医学部の学生のみなさんはどんどん読んで欲しいですが、平均的な頭脳の医学部生のみなさんには忠告です。医学部3年生以下の循環器初学者にはあまりオススメできないかもしれません。現場の空気まで伝わってくる一冊なので、なかなかこの本のノリについてこれない恐れがあります。まずは大学の配布資料なり、病みえですよ。

何故かっていうと例えば、

PCIとは

そういうものなのです

(極論で語る循環器内科第2版p.98より引用)


という斬新な説明がありますが、どう考えても初学者向きの本じゃありません。笑

「循環器疾患すっかり忘れてしまったけど、これから循内じゃん!!」

みたいな医学部4、5年生に強く勧めたいです。


自分なりに全力を出し切ったこの2週間でしたが、唯一後悔することと言えば、

【極論】を読み終えてから循内の病棟実習に出ればよかった……

ってことです。復習がてら土日にもっかい読もうかなぁ。このシリーズ気に入りました。後に腎内も回るので、新刊の『極論で語る腎臓内科』もAmazonでポチりました(笑)

この本も素晴らしかったですが、楽しく勉強できたのは、特にチームの研修医の先生方のおかげであります。この場をお借りして感謝申し上げます。







(飲み会3連チャンかましてくる人(笑))






極論で語る腎臓内科 (極論で語る・シリーズ)
香坂 俊
丸善出版