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医大生・たきいです。

医大生的独言。

「極論で語る感染症内科」を読んで

2016-01-29 23:26:35 | 医学書レビュー

発売前から増刷という噂の今医療業界で注目度の高い本をご紹介。自分がブロガーじゃなかったらAmazonから届いてすぐ読み切るなんてことなかったんだろうけれど、これはもう「プロ」根性みたいなものを自分でも感じてしまいます(笑)。それにあんまり努力しているつもりはないけれど労せず1年間で10冊も医学系の本読み切れたのでブログ式勉強法オススメです。医大生・たきいです。



というわけで本日ご紹介したいのが、これ。

極論で語る感染症内科 (極論で語る・シリーズ)
香坂 俊
丸善出版


今をときめく人気感染症科医師、イワケン先生でお馴染みの岩田健太郎先生の新著。

極論はこれまで、循環器、神経、腎臓と出版されておりますが、このシリーズの発起人は慶應循環器内科の香坂先生だそうで。今まで著者の下に「監修」として香坂先生のお名前がありましが、本書では「監修」が「編集協力」に変わっています。このあたりにイワケン先生の本気が見て取れるのではないかと。

イワケン先生の既刊でオススメなのは個人的にこれ(↓)ですが、

神戸大学感染症内科版TBL: 問題解決型ライブ講義 集中!5日間
岩田健太郎
金原出版


この本を読んで以来、わたくしイワケン先生のファンになっています。BSLの受け持ち症例と関係のあるトピックスくらいはUptoDateに目を通していたりと普段の生活に影響を及ぼすレベルです。

「本書の原稿の多くは、事前にブログやFacebookにアップしたものだ(まえがきより)」とのことでしたが、やはり岩田先生の他書で既出のネタも少なくないように感じてしまったところも否めません。ただしもちろん本書の書き下しの部分もあったのだろうし、自分の頭の中で整理できていないところも多そうなのでこの辺はわたくしの勉強不足なところを見定めたいと。

個人的に読みどころだと思ったのが「筆者談」のコーナー。「イワケンはこう考える」と称して4本のコラムが。「ガイドラインを読み込むということ」「医局と学会」「製薬メーカーとの付き合い方」「リスクマネジメント」、目次にも載らぬこれらのコラムが秀逸でここだけでも一読の価値あり。試験には絶対出ないだろうけれど職業倫理感を養う上でどれも考えていきたい内容です。

イワケン先生の本を読むといつも思うことですが、「頭を使える」医者になるための努力をしなければいけないと強く感じさせられます。1950年には医学知識が倍になるのには50年かかったそうですが、2020年には医学知識が倍になるのには73日しかかからないそうで。暗記の技術ではなく調べる技術こそ重要視される時代は確実にやってきます。さてそのためにはどうするか。

ところで娘さんが溶連菌感染をしてしまって診療所に連れて行ったときのエピソードには少し笑ってしまいました。主治医が処方しようとしていた抗菌薬を「やんわりと断って」別な抗菌薬に変えてもらったそうですが、果たして本当に「やんわり」だったのか気になるところ。笑





(このシリーズは薄さが取り柄だと思う人(笑))

「神経内科の外来診察―医師と患者のクロストーク」を読んで

2015-12-04 23:59:59 | 医学書レビュー

2週間があっという間の名残惜しい診療科でありました。もう1クール回ると冬休みです。だけど冬休み前にもやることいっぱい。医大生・たきいです。



本日ご紹介したいのがこの一冊。

神経内科の外来診療 第3版: 医師と患者のクロストーク
北野 邦孝
医学書院


神経内科の読み物的一冊。神経内科の読み物は「極論」に引き続き2冊目ですが、神経内科には読み物が実によく似合う。

「医者と患者のクロストーク」と副題として銘打たれたこの本は、外来での医者と患者の対話が書き起こされている形式。診察室が頭の中に浮かんでくるような巧みな文章でぐっと引き込まれます。我々学生は教科書としてよりも副読本的なスタンスで手に取ってみると楽しく読めそうです。特に細かい処方薬の使い分けや、「添付文章には××と書いてあるけどそんなのとんでもない」といった内容の、学生にはレベルの高すぎる話も出てきてその辺は割と読み飛ばしていまいました。笑

「典型症例を記憶しなさい」とよく言われます。神経は「病みえ」の評価も高いらしく、わたくしも結構お世話になりましたが、絵でグッと記憶するより、こうして対話文を読んだ方が個人的には記憶に残りやすかった気がします。対話形式の典型例集っていうのもアリだと思います。他の診療科でも類書がないのか知りたいところ。あったら買います。マジで文系脳ですわたくし。

ただし、本書には画像が皆無なのでこれをメインとして初心者が勉強するわけにはいきませんし、医者の発言の真意を汲み取るには少なくともCBTを受けた以降の方が楽しく読める気がします。ハマった小説のようにグイグイと読んでしまった一冊でした。





(先生に連れて行ってもらったじゅうじゅう焼きがめちゃくちゃうまかった人(笑))






「絵でわかる感染症」を読んで

2015-11-29 23:59:59 | 医学書レビュー

ご飯食べにいくくらいしか予定がなかった土日というのはどうも寝すぎてしまいます。医大生・たきいです。





さて、本日ご紹介したいのがこれ。


絵でわかる感染症 with もやしもん (KS絵でわかるシリーズ)
岩田 健太郎,石川 雅之
講談社



著者はご存知、感染症の大家の岩田先生。タイトルは「絵でわかる」ですぐが、「絵でわかるシリーズ」というのがあるんですね。他には「漢方医学」「東洋医学」なんかがあるんですがこれらも気になります。「人類の進化」「日本列島の誕生」とかも面白そう。ていうか「日本列島の誕生」って医学と関係ないと思うんだけどどういうこと(笑)。「絵でわかるシリーズ」、必殺!カルバペネム!的な香り漂う広域スペクトラムな人気シリーズでした。

岩田先生のブログを見てみると、軽く本書の紹介文が。

「プロフェッショナルな内容なんだけど、だれでも読み通せるものを目指しました。ぜひどうぞ。」

とのこと。

かわいい顔してるけどこの本中身結構ガチです

感染症科の先生から病棟で教わって「それマニアたちの小ネタっしょ」と思ってしまった内容も、この本にしれっと書いてあってビビりました。優秀な学生様を除いた多くの凡人医学生の皆様、軽いノリのこの本で簡単に感染症の知識がゲットできると思ったら間違いです。確かに「だれでも読み通せる」のは確かなんですけど情報量多いです。気合いいれて読まないと。

特に抗菌薬の話なんかはページ数も多く割かれていて、ガチです。勉強中の辞書的な使い方もできてしまいそう。「ボクなんも抗菌薬理解してないんすけどとりあえずまずはポイント教えてください」というわたくしを代表とした凡人医学生のニーズには「やさしイイ」のほうがマッチするかも。それくらい「やさしイイ呼吸器」の抗菌薬の説明は肺炎限定だけれどもコンパクトにまとまっています。

レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室[ベストティーチャーに教わる全27章]改訂第2版
長尾大志
日本医事新報社


「絵でわかる感染症」、読みどころはなんといっても「絵」。これだけでも買う価値あり。ゆるキャラたちが抗菌薬の構造式を挙げながら、「これは覚えないよ?」とか言ってみせつつ「天丼」で攻めてくる2章とか結構笑ってしまいました。あとはプロフェッショナルの本音。「まあ、本業の医者でも、というかHIV診療を本気でやろうと考える感染症屋でも、この薬には萎えます。ウンザリします。」(p.112)っていう何気ない一節も「ほほー」と思えます。

ところで。本書の随所に「構造主義」を意識したと思しきフレーズが散見されますが、岩田先生は本書の執筆期間にこんな本読んでたんじゃないかとか推測しました。下の本「積ん読」してるんですよね(笑)。東大に行った高校の同級生はそういや高校生のときから読んでたなぁ、と。「構造主義」といった現代思想も語れないようでは知識人を名乗れないんだろうな、と、ややピンボケした感想を第一に思ってしまった「絵でわかる感染症」なのでした。調べもので今後もお世話になりそうです。

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)
内田 樹
文藝春秋








(レポート書かずに土日を終了してしまってやや危機感を感じている人(笑))

「極論で語る神経内科」を読んで

2015-11-25 23:59:52 | 医学書レビュー

極論シリーズ、最後にご紹介するのは「極論で語る神経内科」でございます。同シリーズには循内と腎内もありますが、それぞれこちらから。「極論シリーズ」はこれで全部読んだ格好となります。「読んだ」と「理解した」「覚えた」には少々乖離があるような気がしますがひとまず細かいことは気にしません。医大生・たきいです。

極論で語る循環器内科書評
極論で語る循環器内科 第2版
香坂 俊
丸善出版



極論で語る腎臓内科書評
極論で語る腎臓内科 (極論で語る・シリーズ)
香坂 俊
丸善出版






さてさて神経内科。「極論シリーズ」の中でダントツの薄さを誇ります。ケース付きのiPhoneとほぼ同じ厚さ。

さて、極論循内も極論腎内もなかなかよかったし、神経内科も読んでみるかと何も考えずに買ってしまった一冊ですが衝撃の事実が。

この本、もれなく医局から借りられます。

しかもこの本で抄読会するのでみっちり読まされます。

そうと知っていたら経費節減していたかもしれません。うちの学年に教えてくれる優しい人はいませんでした……ブログ読んでくれてる同級生の誰か、教えてくれてもいいじゃない。循内、腎内ときて次は神内買っちゃうでしょうこの流れ。

でもいいんです。本というのは「買っちゃたよ…」というのが一番読むモチベーションになるタイプの人間なので。

極論で語る神経内科 (極論で語る・シリーズ)
香坂 俊
丸善出版


やはりこのシリーズは循環器が一番アツいことに揺るぎはありませんでしたが、本書も極論シリーズの良さが生きてスピード感がありました。あとがきの末尾に「神経内科は絶対に面白い。」とありますが、この言葉に持っていくための本編132ページともいえます。神経内科を銘打った本に「神経内科は絶対に面白い。」と言い切っている類書が他にあるでしょうか。

実はわたくし神経内科が苦手なので夥しい数の神経学的所見や難しい疾患の概念を前にして辟易としてしまって神経内科の何が楽しいのかと思ってしまうことも多々ありましたが、本書を読むと、「ハハーン、神経内科のセンセーってこれが楽しくて神経内科してんのね」っていうのが分かってくるでしょう。教科書というより読み物。こういう本好きです。他の診療科の「極論」も読みたい。






(寒すぎてちょっとだけ布団に入ろうと思った瞬間に朝まで寝てた人(笑))

「私は咳をこう診てきた」を読んで

2015-11-09 23:50:45 | 医学書レビュー

部屋汚さ過ぎて、届いたばかりでついさっき部屋に持ってきたはずのAmazonの袋が一時行方不明になる事件が起こりました(笑)。そろそろ心を入れ替えて部屋の掃除に取り組もうかと考えた次第です。医大生・たきいです。






呼吸器内科の勉強でもすっかと軽い気持ちで手に取った一冊がこちら。2,000円という医学書にしては安い本です。

私は咳をこう診てきた
亀井 三博
南山堂


この本、呼吸器の勉強しようかなという意図でなんとなく手に取ってみたのですが、いい意味で裏切られました。読み終わってから知りましたが、巷では診断に至るまでの思考過程が実によく分かる一冊、だなんていう評価を得ているようです。検査前確率を以って有効な尤度比の検査を選んで診断まで持っていくプロセスが実に明解に書いてあります。ここまで丁寧に医者の頭の使い方を示してある本は他にあるでしょうか。非常に勉強になりました。診断だけではなく、その先の治療に関しても、プロフェッショナルの心意気が手に取るように見えてきて興奮を覚えました。

ただし。この本に一番感銘を受けた点はもっと他にあるんです。著者の亀井先生は、自らを「文系医師」と名乗っておられますが、淀むことなく流れるような文章が実に美しい。本文中に「私は映像が浮かぶような病歴が好きだ」(本著p.82)との記述がありましたが、薄い本ながらも結構たくさん載っている症例のどれもが、患者さんと真摯に向き合っているのだと伝わってくる美しい文章の上に病歴が書かれてあるのです。

私なんかが見よう見まねで小説のような病歴の書き方をしてしまったら空中分解して上の先生から怒られてしまいそうなことは目に見えていますから迂闊なことはしません。まずは基本の型があるわけですから。だけれども、これから何年かかるかは分からないけれど、いつかこんな美しい文章のカルテを書けるようになりたい。このブログ上で、「俺って文系だわ」とほざいていたことがこれまで何度かありましたが、失言でした。こうした美しい病歴を書ける方でなければこの業界で文系と名乗ることは許されないでしょう。精進します。

試験前に勉強が間に合わなくて泣きそうになったことはこれまで何度かあったけれど(笑)、医学書読んで初めて感動して泣きました。特に最後の「在宅ケアの章」は涙なしには読めません。悟りました。医者ってこういう職業だったのか。もっと読み込んでいきたい一冊です。この本、2,000円は安いと思う。

因みに。一般的な医学生が「呼吸器の勉強してー!」とお考えの際は、恐らくこっちの本のほうがオススメでございます。

レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室[ベストティーチャーに教わる全27章]改訂第2版
長尾大志
日本医事新報社








(今週の実習はハードそうで冷や汗な人(笑))