山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

大正ロマンの古民家を見に行く ・母屋編

2022-12-12 18:08:59 | 歴史・文化財

 建築家の三須克文(ミスヨシフミ)さんが林業家の古民家を購入して再生しているというので、「春野人めぐり」のイベント案内に乗じてそそくさと見に行く。ゼネコンで活躍した人が古民家再生によって地域おこしの一端を担うという三須さんの生き方がうれしい。民家をスクラップしてコンクリート造りが花形だった世界から古民家再生へという180度違う世界へと飛び込んだのだ。

 場所は秋葉神社上社へいく麓の表参道入り口にあった。竹林と広大な山を背にした古民家は再生の途上にあった。

          

 伊豆から取り寄せたという石の塀を過ぎると玄関があった。その格子ガラス戸のデザインは当時としては斬新だったのだと思う。現在はその左隣の部屋を改造してお客用の玄関にしている。週末には佐久間町出身で猫の好きな奥さんを中心に「まろや」という古民家カフェ・民泊を運営している。

  

 母屋に案内された。林業家の住まいらしく部屋の周りは木材がふんだんに使われている。天井は木目模様を生かしたモダンなデザインに驚く。このへんは林業家の豪勢さと建築家の大正モダニズムの息吹が感じられる。

   

 目立たない隣の部屋の天井は板目でも柾目でもない複雑な「杢」(モク)模様だらけだった。欅の大木だろうか、原木のねじれや瘤模様を生かして切り出されたものだ。その木目模様には、「玉杢」とか「泡杢」とか「虎斑(トラフ)」とか多様な種類があるが、どれにあたるかは素人にはわからない。わかるのは贅を尽くした貴重な造形美であるということだけだ。

      

 さらにその隣の部屋の床の間には、スライスしたヒノキが飾られていた。これだけで座禅ができそうだ。ちなみに、この部屋で数人のうら若き女性のお客が談笑しながらコーヒーを飲んでいた。その部屋の板戸は、全体が一枚板だった。巨木をふんだんに使われた古民家であることがこれだけでもわかる。

  

 廊下から外を見ると整備が終わった日本庭園が見えた。まるで、旅館にいるみたいだ。ガラス戸は「手吹円筒法」という、円筒ガラスに切れ目を入れ再加熱して板状ガラスにした「手延べガラス」ということだった。明治から大正にかけて作られた「大正ガラス」に違いない。横からガラスを見るとゆがみがある。三須さんによれば、30年近く空き家だったのに「一枚も割れていなかったのが奇跡だ」と語る。

         

 「これだけがお宝だった」と語る、日本の林業の偉人・金原明善83歳のときに揮毫した扁額を見る。「山林は興を引くこと長し」という杜甫の漢詩のようだ。山林での暮らしに強く魅かれた明善らしい言葉だ。ガラクタの山からこれを見出した時は大いに喜んだ三須さんだ。なんとかきれいに修復することができた。

 母屋の案内の次に周辺を見に行く。それは次回のブログに続く。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「諸君 ! 脱帽したまえ ! 天... | トップ | 大正ロマンの古民家を見に行... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

歴史・文化財」カテゴリの最新記事