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山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

島崎藤村『破戒』を読む

2014-02-17 21:18:30 | 読書
 島崎藤村『夜明け前』を読んでから、以前読んだけど記憶が定かではなかった『破戒』を読むことにした。
 詩人として脚光を浴びていた藤村が始めて挑戦した小説でもある。
 日露戦争を推進した時代での執筆だった。

                             
 大河小説『夜明け前』ほどのスケールはないが、物語としてはシンプルなストーリーだった。
 そのため、2本の映画にもなっている。
 木下恵介監督(1948年)の作品では、丑松が池部良、猪子役が滝沢修。
 市川崑監督(1962年)の作品では、丑松が市川雷蔵、猪子役が三国連太郎。
 それぞれ豪華キャストに恵まれている。

      
 「」としての差別は、つい最近まで人間として認められないとんでもない扱いだった。
 その言われなき煩悶を抱えながらの青年教師丑松は、じわじわと差別の包囲網に追い詰められ、最終的に生徒の前で身分を告白してしまう。

 当時の学校長や視学官等の管理教育体質は、現代とまったく変わらない。
 救いは、身分を公表して闘う猪子先生の姿と同僚の友人銀之助の支えだった。

                    
 むかし、解放同盟の研修会に仕事として参加したことがある。
 差別を放置してきた国の官僚を糾弾する内容で、理解できることも多かったが、激しい糾弾は逆効果であると感じたことがある。

      
 それこそ、藤村のように人間の内面から提起する内容が相手の心を揺さぶる。
 矛盾を深く抱えた藤村ではあったが、だからこそ、相手の抱える悩みを寄り添おうという謙虚さがある。
 物語の結末については『橋のない川』の「住井すえ」が異論をとなえているが、この問題を真摯に受け止めようとする藤村の姿勢は今日においても新鮮である。
 
コメント
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