50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

世間をお騒がせし・・・

2008-03-20 04:55:05 | マスコミ報道
・・・申し訳ありません。このように、よく罪を犯した人や関係者、あるいは企業のトップが謝っていますね。特に、ここ数年、決まり文句になっているような気さえします。でも、お騒がせするって、どういうことで、どうしていけないことなのでしょうか。日本社会では、取り敢えず謝らないと、社会的バッシングを受けてしまうので、何はさておき謝ることが大切なのですが、それにしても謝罪の言葉が、犯罪の種類に関係なく、一様に「世間をお騒がせして申し訳ありません」・・・実際、世間は、騒がされたと不愉快に思っているのでしょうか。そう思って立腹の人もいるのでしょうが、マスコミをはじめ多くの人は、かっこうの話題ができて、表面上は怒っていても、心のどこかでは楽しんでいるのではないでしょうか。正直なところ、そう思いませんか。騒ぐだけ騒いで、飽きると、もはや話題にもしなくなる。ギョウザ事件も、もうニュースバリューがなくなってきたのか、ネット上のニュース欄ではあまり見かけなくなりました。最終的に、うやむやでおしまいでしょうか。今は、日銀総裁選び・・・

・・・こんなことを勝手に考えてしまったのは、あのジェローム・ケルヴィエル被告が、18日に保釈されたからです。覚えていますが、ジェローム・ケルヴィエル。あのソシエテ・ジェネラルの50億ユーロ損失事件(こちらでは“l'affaire Kerviel”ケルヴィエル事件と呼ばれています)。


弁護士とともに、かつての悪名高きサンテ刑務所を後にするケルヴィエル氏です。19日付のフィガロ紙のトップ記事。事件発覚直後は、自殺したのではなどという噂も流れましたが、どうして、どうして、そんな柔じゃなさそうです。門の外で待ち構えるマスコミに、笑顔で手を振って・・・でも、はじめからこうだったのではなく、門を出たときはうつむき加減だったそうです。しかし、弁護士のアドヴァイスで顔を上げ、手を振って挨拶をしたそうです。でも、この写真や、18日夜に流されたニュース映像では、全く悪びれたところがないように見えてしまいます。日本だったら、世間様はどう反応するでしょうか。ワイドショーではどんなコメントが聞けるでしょうか。

あくまで仕事を遂行した結果の損失である、という主張なのでしょうね。実際、個人的利益にはなっていないようですし。そしてこうした意見は、弁護士と本人だけではなく、家族・親戚や地元の人々の間にも広まっているようです。塀の外に出たという連絡を受けて、母親はさすがに気恥ずかしそうに、保釈されてほっとした、と言っているようですが、叔母さんは、仕事をしただけで何も悪いことはしていない、それが証拠に自由の身になったじゃないか。周囲の人たちも、多くが無実だと言っているそうです。

凶悪犯とかではなく、金融犯罪。それでも、日本では、取り敢えず、世間をお騒がせして・・・と謝るところですが、こちらでは堂々と無実だと言い切っているようです。ま~、個性を大切にする個人主義のお国柄、そもそも世間様がいないのかもしれないですね。でも、何事につけ自己主張をしないといけないというのは、それはそれで大変なのでしょうが、世間様に後ろ指を指されないようにと生きていくのも楽じゃないですよね。どちらにしろ、人生楽じゃない。


楽じゃない人生で、騒ぎを利用してひと儲け、という人たちも、確かにいるようです。同じフィガロ紙ですが、まずはTシャツ。ジェローム・ケルヴィエルは天才だ! 『煙と消えた50億ユーロ』というタイトルの本がフランスでは出版されたようですし、これ以外にも数冊、関連本が準備中だそうです。もちろん、一番盛り上がっているのはネット上で、ケルヴィエル氏をヒーロー扱いしたシリーズ物が作られたり、地球上の50億人がひとり1ユーロずつ提供すれば、ケルヴィエル氏のキャリアが救われる、とユーモアでカンパを募るサイトも現れたり・・・そして、忘れてはいけないのが、パパラッチたち。この日も記者とカメラマン合わせて50人ほどが寒さの中、見逃せない瞬間を長時間待っていたそうです。微笑みながら手を振ったケルヴィエル氏は、弁護士とともにクルマの中へ。もちろん、パパラッチはバイクで追いかける。しかし、きちんと警察が間に入って、ケルヴィエル氏は何処へともなく消えていったそうです。

司法当局(パリ控訴院:日本の高裁にあたるようです)が保釈を認めたのは、今後証拠隠滅を図られる恐れがまずない、というほどコンピューターや携帯の通信記録も含め、十分な証拠が集まったからだそうです。しかし、保釈されたからといって、ケルヴィエル氏、全く自由の身になったわけではなく、イル・ド・フランス地方(パリとその近郊)から出る場合は、司法当局の書面による許可を得ないといけないそうですし、週に1回は警察に出頭し所在確認をしなくてはいけない。また、事件の関係者に会ってはいけない(リストができているそうです)。株の売買など事件に関連することは行なってはいけない・・・いろいろ条件が付けられているようです。それでも、やはり自由は嬉しい。ゆっくり休みながら、今後の対応などを考えていくそうです。

そして、当然のことながら、紙面のどこにも、世間をお騒がせして、という表現はありませんでした。「世間をお騒がせして申し訳ありません」・・・この表現、外国の人にはいったいどう説明すればいいものやら。


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2 コメント

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お騒がせ (Bon)
2008-03-21 14:02:32
本当に無実だと思っていたら、世間に迷惑をかけたのではなく、確かに世間がかってに騒いでいるだけで、あくまで仕事を遂行した結果かも知れませんね。
世間が騒げば、誰かがもうかる?



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便乗 (take)
2008-03-21 17:24:33
Bonさん

確かに! 世間の話題に便乗して一儲けという抜け目のない人は、どこにもいるようですね。
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