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50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

失われた購買力を求めて。

2007-12-12 05:15:22 | マスコミ報道
まずはともあれ、11日のメトロ紙をご覧ください。



記事の内容よりも、見出しに注目を! “A la recherche du pouvoir d'achat perdu”(「失われた購買力を求めて」)・・・どこかで聞いたことのあるようなタイトルですよね・・・『失われた時を求めて』、プルーストの有名な小説のタイトルです。“A la Recherche du Temps perdu”・・・編集の担当者なのか、記者自身なのか、うまく決まった! といったところでしょうか。

こうした洒落た見出しは、ときどき目にします。



“Paris brille-t-il ?”(パリは輝いているか)・・・基になったのは、“Paris brule-t-il ?”(『パリは燃えているか』)、ご存知ですよね、パリ解放までのさまざまな人間模様を描いた、1966年のルネ・クレマン監督の作品。懐かしいのでちょっと調べてみたのですが、本当に豪華キャストだったんですね。ジャン=ポール・ベルモンド、シャルル・ボワイエ、アラン・ドロン、シモーヌ・シニョレ、イブ・モンタン、カーク・ダグラス、オーソン・ウェルズ、ジョージ・チャキリス、アンソニー・パーキンス。そして脚本は、まだライターだったフランシス=フォード・コッポラ。

このタイトルは11日に出た無料の情報誌“A nous Paris”(我等にパリを)の表紙に出ていたのですが、この情報誌の名前自体が洒落。基になったのは、たぶん、“A nous la liberte”(『我等に自由を』)。1931年のルネ・クレール監督作品。大量生産時代に生きることの大変さが描かれていますが、後に作られたチャプリンの『モダン・タイムス』に影響を与えたとか与えなかったとか、問題になっていたほどの名作ですね。

・・・名画の懐かしさに、思わず洒落の解説という、洒落にならないことを書いてしまいました。で、肝心の記事の内容なのですが・・・

まず、「我等にパリを」誌のほうは、イリュミネーションや店頭の飾り付けで、今パリが輝いている、という話題です。すでに何回かご紹介していますが、後日また別の写真をご紹介しようと思っています。

そして、メトロ紙のほうですが、フランス人の購買力が落ちている、それを向上させるには・・・ということで、今月、調査をしたようです。購買力が落ちているということは、要は収入の伸び以上に物価が上昇している。だから買いたいものが買えなくなってきている、ということですよね。こうした状況を改善するには、給与を上げる。しかし、今や「もっと働いて、もっと稼ごう」という、サルコジ時代。今までと同じように働いていては、収入の増加は期待薄。そこで、出てくるのが、残業と休日出勤!

残業分には課税しないという政府案を考慮に入れた上で、残業もいとわないですか、という質問には、何と78%がウイ。残業します!と言っています。今年7月の調査では65%だったウイが78%に増加。残業でもなんでもして、とにかくお金を、をいう層がふえているのでしょうか。

また、安息日である日曜日に働くことについては、平日よりも給与基準を高くするという条件の下、59%が働いても良いと答えています。男女別では、男性の63%、女性の55%ということで、男性のほうが日曜出勤に抵抗がより少ないようです。

この日曜出勤が最も影響するのがデパートなどの流通・サービス業。商店が日曜日も営業できるよう、現在の規制を緩和すべきかどうかという質問には、賛成が2004年の46%、06年の56%、そして今年の63%へと、一気に増えてきています。旅行者や週末時間をもてあましている人にとってはありがたい日曜営業、もしかすると、遠くない将来、実現するかもしれないですね。

しかし、働く人にとっては、残業や休日出勤が増えると、収入は増えるかもしれませんが、減るものがある。ここで、まさに洒落た見出しの基に戻るのですが、減少するのは自由な時間。『失われた時を求めて』になってしまうわけです。でも、自由な時間とより多くの収入、どちらかを選ばなければならないとしたらどちらを選ぶか、という質問に対しては、2001年の調査では47%と47%で、まさに均衡。それが今回の調査では、自由な時間が減っても、もっとお金を! という人が63%。逆に、武士は食わねど高楊枝、お金よりも自由な時間が大切さ、という人は37%に減少しています。このままでは、休暇を減らしてでも働いてもっと給料を、という声だって出てくるかもしれないですね。有給休暇が年間5週間、うらやましい、と思われていたフランス社会も、今、大きく変わりつつあるのかもしれません。

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フランスの文化は死んだのか?

2007-12-09 05:11:16 | マスコミ報道
「ハチのムサシは死んだのさ」、そして「フランスの文化も死んだ」のか? ハチのムサシのほうは、平田隆夫とセルスターズの1972年の大ヒット曲。一方の、フランス文化のほうは・・・(その前に、この駄洒落、以前も使いましたね、お恥ずかしい)



4日のフィガロ紙です。「ノン、フランスの文化は死んでいない!」という見出しですが、どうしてこういう見出しになるかというと・・・左側に出ている“TIME”のヨーロッパ版のトップ記事~フランス文化の死。ショッキングなタイトルですね。その概略はというと・・・

・フランスの週刊誌は自慢げに文芸欄を掲げているが、この秋727作も出版されたフランスの小説、残念ながら外国の編集者の興味をほとんど惹くことがない。・ドイツの雑誌によると、今世界で最もメディアへの露出の多いアーティストのトップ・テンにフランス人はいない。・フランスは年間に200本もの映画を製作しているが、どれも低予算で製作した愛すべき駄作で、映画館へ行く観客の半分はアメリカ映画を観ている。・アメリカの書店で見つけられるフランスの小説は10作程度だが、一方フランスで売られているフィクションの30%は英語から翻訳されたものだ。・パリは印象派やシュールレアリスムの発祥の地だったが、今やロンドンやニューヨークのその地位を奪われてしまった。フランスは世界の絵画販売実績の8%を占めるに過ぎず、アメリカの50%、イギリスの30%に大きく水をあけられている。・フランスの文化省は国家予算を芸術家に惜しげもなく使っているが、その成果は・・・

落日のフランス文化、それに引き換え、今や文化の中心は、アングロ・サクソン! こうした“TIME”の意見に、アカデミー会員のMaurice Druon氏が「ノン、フランスの文化は死んでいない!」と反論しているわけです。

4~5年に一度、必ずこうしたアンチ・フランスの記事がアメリカのメディアに登場してくる。今回の記事には、「気の毒で、かわいそうなフランス人」というトーンが加わっているが、とりとめもない、いい加減な記事に過ぎない。記事の筆者は「文化」と「娯楽」を混同している。プルーストやモネ、ピアフ、トリュフォーを全く同列に並べて論じている。しかも、こうした有名人がいないからもはやフランスの文化は死んだと言っているが、文化とは興行成績や売り上げで決められるものではない。文化は長い時間のうえに聳え立つものだ。サルトルやマルローを見るが良い。彼らは今でもわれわれの同時代人としてその作品は常に新鮮だ。また、多くの芸術家たちが今でもフランスへやってくるのは、なぜか。それはフランスが常に文化の地だからだ。筆者は一度、コレージュ・ド・フランスやフランスの大学を歩いてみるが良い。多くの文化に触れることができる。明日の芸術に影響を与える思想に出会うことができる。何と教養のない、アメリカなのか。いや、アメリカにも多くの優れた研究者や学者、思想家、芸術家はいる。しかし、彼らは、“TIME”などには寄稿しないのだ。

どうもアメリカに全面戦争を仕掛けるというよりは、“TIME”と問題の記事を書いた筆者だけを攻撃しているようです。フランス文化が死んだなどとでたらめを言うのは、アメリカのごく一部だけで、大多数のアメリカ人は今でもフランス文化を愛してくれている、という自信の表れなのでしょうか。それとも、あくまで個人主義。こうした記事を書いた人と、掲載した雑誌の問題で、アメリカ全体の問題ではない、と考えているのか。どうなのでしょう・・・

こうしたアカデミー会員の碩学の反論を受けて、中面で、フィガロ紙はいかにフランスには有名な文化人がいるかを紹介しています。



スタンフォード大学の教授をしているルネ・ジラールの本は人類学としても哲学としても世界的な評価を得ている。ソプラノ歌手のナタリー・デッセイはメトロポリタンオペラで、今シーズンの幕開きで大成功を収めた。映画『エディット・ピアフ~愛の讃歌』(La Mome)はアメリカでもヒットし、主役のマリオン・コティヤールはオスカーの候補と噂されている。パリ市のレンタサイクル「ヴェリブ」をデザインしたパトリック・ジュアンはシェフのアラン・デュカスがラスヴェガスやニューヨークに展開する店のデザインを手がけ好評を博している。ケ・ブランリ美術館を設計した建築家のジャン・ヌーヴェルはガラスの塔をマンハッタンに建てようとしている・・・

こんなにフランス人の学者・芸術家たちがアメリカで活躍している。フランス文化が死んでいない証拠だ!・・・でも、どうして、アメリカで活躍している人たちばかりなのでしょう。アメリカでこんなにフランスの文化人が話題になっているのだから“TIME”の記者も知っていてよさそうなものなのに・・・ということなのでしょうか。でも、でもなのですが、どうしてこんなにも多くのフランス人がアメリカで研究生活や芸術活動を行っているのでしょうか。アカデミー会員曰くは、フランスは文化の中心だから多くの芸術家が集まってくる。ということは・・・そうです、今や文化の中心は、アメリカ。だからこそ、フランス人ですら、アメリカへ向かう。そのようにフィガロ紙自身が言ってしまっているようにも取れますね・・・あまりに皮肉な見方でしょうか。

アメリカへ渡るフランスの文化人。その一方で、今でもフランスへやってくるアメリカの文化人がいるのも事実。結局は、フランスの文化は死んでいない。しかし同時に、アメリカも文化の中心地としての地位を確立している。そして、どちらかというと、アメリカの文化の影響力のほうが世界的には大きくなってきている。ということなのではないでしょうか。フランスとアングロ・サクソンの対立、あるいは競争。政治的にはフランスから一方的に歩み寄ってしまいましたが、文化ではどうなるでしょうか。そして、その間に我らが日本文化が割って入っていけるでしょうか。ぜひ、存在感をましてほしいものです。頑張れ、日本文化!

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フランスは、お高い。

2007-11-30 05:18:04 | マスコミ報道
フランス人はお高くとまってるからな~、というお高いではなくて、今日のテーマは、文字どおり、高い。物価が高い、やってられない! という話題です。



29日のフィガロ紙ですが、フランス、物価の高い国、という見出しです。では、実際、どう高いのでしょうか・・・

調査した国は25カ国。ヨーロッパ22カ国の首都とアメリカの主要6都市、それに北京、上海、東京で、計29都市・・・???合計すると31都市ですよね、でも記事には確かにこう書いてあります。崇高な観念とは関係ない少々の事は気にしないお国柄、しかも単純な計算間違いは店頭などでもよくあることですから、気にしないことにしましょう。とにかく、欧米と中国、日本の29都市ほどで実施した消費者物価の調査によると、パリは安いほうから21番目(高いほうから9番目と言いってくれたほうが分かりやすいのですが、せっかくフランスは物価の高い国と見出しでも言っているのですから・・・これもお国柄でしょうか)。では、どんな商品が調査の対象になったのでしょうか。



記事は26商品を対象にした調査といっていますが、紙面に写真つきで紹介されているのは24商品。あと2商品あるのか、はたまた24商品が正しいのか・・・細かいことは言わないようにしましょう。何せ、ここは、フランス。さて、記事によると、ソフトドリンク片手にDVDを楽しむのに最も安上がりなのは、上海。DVD(『カジノ・ロヤイヤル』)と缶入りコーラの料金の比較なのですが、それぞれ最も安いのは、24商品の一覧表を見ると、上海ではなく北京! パリから見れば、極東の都市が北京でも上海でも同じなのでしょうね・・・愚痴はともかく、要は、中国が最も安い。DVD=6.13ユーロ、コーラ=0.20ユーロ。それに対して、パリはそれぞれ25.32ユーロ(29都市中最も高い)に1.04ユーロ(最も高いのはノルウェーで1.69ユーロ、コーラ33cl缶が280円です!)。では、同じような生活水準のドイツはどうかというと、それぞれ、19.32ユーロと0.46ユーロ。やはり、パリのほうが高い。パリは、物価高。

全商品を通して見た場合、最も高いのはノルウェーだそうですが、これはVAT(付加価値税)が高いからだそうです。そして、対象商品の中で特にパリが高いのは、DVD、コーラ以外に、ビッグマック、ガソリン、生理用品だそうです。ということは、パリのマクドは高い・・・因みにビッグマックセットは高いところで6.05ユーロ(約1,000円)。店によって価格が異なるのですが、いずれにせよ、高いはずです。


(経済面の一面。最上部で中面にあるこの記事を紹介していますが、写真はビッグマックですね)

こうした物価高について、アナリストは次のように言っています。物価が高いのは、それだけでは特に問題にはならない。給与水準との比較だ。もし物価がある国より2倍高いとしても、給与水準が3倍あれば、購買力はより高いということになる。肝心なのは、購買力だ。

なるほど、そういうことですね。でも、外国からの留学生などにとっては、物価高は、痛い。でも、痛いのはフランス人も同じなのでしょう、サルコジ大統領に、多くのフランス人が最も望んでいることのひとつが、購買力の向上。“le pouvoir d'achat”という購買力を意味する文字が新聞紙上に踊らない日はありません。購買力のアップ・・・方法は、給与を上げるか、物価を下げるか。給与を上げるのでしょうね。サラリーを上げろという言い方はちょっとストレートすぎてはしたないので、いかにも経済学的高尚な要求のように聞こえるよう購買力の向上と言っているような気もしますが・・・

また、世界共通の商品の価格が国によって異なっているそうです(当然ですね)。例えば、ノキアの携帯N95、パリでは669ユーロしますが、ポルトガルでは579ユーロ、ニューヨークでは508ユーロ。こんなにも違うそうです。一般的に、フランスは流通間の競争が少ないので、消費者価格が高いままになってしまうそうです。このことが、フランスの購買力を5%引き下げているとこの記事は言っています。

ところで、ここまで、我らが日本が話題にのぼってきませんね。以前なら、物価高世界一、とか言われていたのですが、どうしたのでしょう。確かに、調査対象商品が異なるので、それほど高くないのかもしれないですね。でも、一覧表をよく見てみると・・・Ipod、一番安いのは日本。マイクロソフトのXBox、最も安いのは日本。任天堂のWii、最も廉価なのは日本。ノキアの携帯、最安値は日本。ソニーのプレイステーション、日本。ソニーのデジタルビデオ、これも日本。アルコールのウォッカ、これまた日本。ウォッカを飲みながらIT機器に囲まれて暮らすのに最も安上がりな主要国は、どうやら日本になってしまっているようです。逆に日本が最も高い商品はひとつもありません。ユーロに換算していますので、ユーロに対する円安が大きく影響しているとは思いますが、日本は物価安! それに対する、フランスの物価高!! 華の都パリは、物価高です! 特に日本と比べて・・・週末前に、元気の出ない話題で、恐縮です。

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日本、また不景気へ!?

2007-11-22 05:13:53 | マスコミ報道
もうすぐ師走。年の瀬になりますが、皆さんの周りはいかがですか。景気の良い話はありますか。

日本の景気、フランスの記者の目にはどう写っているのでしょうか・・・



14日のフィガロ紙、その経済面なのですが、見出しは、不況がひそかに進行する日本、といった意味ですね。第3四半期、日本のGDPは対前年で0.6%の成長を記録した。しかも、輸出ではなく、個人消費や設備投資によって経済が成長したというのに、どうしてまた不況が進行しているなどという事になるのでしょうか。

第3四半期の成長は一時的なもので、株価を押し上げるほどのものではなく、またアナリストたちは景気後退前の一時的反撥に過ぎないと言っているそうです。確かに第2四半期はマイナス成長でしたね。

景気後退を言われる背景には、三つ指標が同時に赤ランプを点灯させているという状況があるそうです。ここで言う三つの指標とは、輸出、個人消費、設備投資のことで、それぞれに問題が顕在化しつつあるそうです。

輸出は円高(21日には108円まで上昇していますね)と、サブプライム問題にゆれるアメリカでの需要の落ち込みが影響して、厳しくなるだろう。個人消費は、基本的には停滞したまま。企業の好業績にもかかわらず、給与はたいして上がらず、預貯金も超低金利の下では利子を生むこともない。そこへ、インフレが徐々に進行し始めている。これでは個人消費が活性化しようがない。設備投資も、超放任主義(様子眺めで、何ら策を講じていない?)の日銀の政策の下、公定歩合はほとんどゼロのままなので、これ以上のてこ入れは難しい。


(パリで日本といえば、やはり駐仏日本大使館でしょうか・・・記事内容とは関係ないのですが、日本代表として、その建物をご紹介しますね)

しかも、労働人口の10%を抱える建設業界の不況がさらに景気を引き下げようとしている。耐震偽装問題から建築確認の審査を厳格にした改正建築基準法が6月に施行された影響で、住宅着工戸数が7月・8月に対前年で40%も落ち込んでいる。この業界の業績後退は、家具、不動産など他の業界へも波及して行くだけに、今後の景気動向にもマイナスの影響が懸念されている。

失われた10年からの回復・・・しかし、また再び、景気後退の局面へ! 

こちらの新聞記事は基本的に署名入りの記事ですので、そういい加減な内容ではないと思いますが、どうお読みになりましたでしょうか。年末へ向けて、良い気分のしない内容ですね。景気の良い話を聞きたいのですが・・・。でも、事実は事実。この記事が言っていることが正しいのであれば、一人ひとりが不景気に備えねばならないですね。短観では大企業は横ばい、中小企業は悪化となっていますが、緩やかな回復基調にあるみたいなことも言われています。実態はどうなのでしょうか・・・


(頑張れ日本・・・日の丸イメージの写真、大使館は内容とは関係ありません)

私たちに国全体の景気をどうこうする事は出来ません。せめて、自分のことは自分で守るしかないのかもしれませんね。後顧の憂いなきよう、景気後退に備えて家計をしっかりさせないといけないのかもしれないですね。せっかく取り戻しはじめた日本経済への自信だったのですが・・・サルコジ大統領は来週から中国訪問へ。経済界も同行することでしょう。もはや日本経済より中国経済。断定されてしまうような感じですね。でも、日仏関係は、文化で頑張りましょう。文化出づる国日本、へ! (ストが一向に収束しないパリで、こんなことを考えたりしています。22日も、交通ストは継続されるようです。9日目です・・・)

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青年はアメリカをめざす。

2007-11-18 05:10:29 | マスコミ報道
五木寛之の作品に『青年は荒野をめざす』という小説があります。覚えていますか・・・と言うと、対象が一定年齢以上になってしまいますね。では、ご存知ですか。文庫本で、今でも出ているようですから、若い人でも読んだことがあるかもしれないですね。また同じタイトルで、五木寛之作詞、加藤和彦作曲のフォークソングにもなっていますので、ご存知の方、意外に多いかもしれません。人生の意味を探して、日本人青年のヨーロッパ冒険の旅―――。

では、今のフランス人青年たちはどこをめざしているのでしょうか。



親米路線を取るサルコジ大統領が若者にも人気があることで分かるように、フランス人青年たちにとって、アメリカは憧れの対象でもあるようです。そしてその傾向は、研究者たちの間でも顕著なようです。上の写真は、13日のフィガロ紙、経済面のトップ記事。「大学:どうしてフランス人はアメリカへ行くのか」という見出しです。

学位を取ったフランス人がさらに研究を続けるためにアメリカへ渡るケースが増えている。実際、学位取得後に海外へ出るフランス人の行き先では、アメリカが最も多く、続いてカナダ、イギリス。研究分野では、経済学と生物学の研究者に特にアメリカへ行く、いわゆる頭脳流出が顕著になっている。しかもその行き先は、主にハーバードとマサチューセッツ工科大学(MIT)。どうしてアメリカへ、どうしてその2校へ・・・



主な理由は二つあるそうです。まずは、研究環境。それぞれの大学とも、財団、卒業生、企業、政府からの援助に恵まれていて、研究費用のみならず、奨学金・給与など十分なサポートがあり、安心して研究に専念できる。もう一つは、学際研究が認められていること。従来の垣根を越えた新しい研究対象であっても、積極的にサポートが受けられるそうで、そうした学際研究から、新たな成果が生まれやすくなっているそうです。

こうした環境で、のびのびと研究にいそしむフランス人若者たち・・・しかし、良いところがあれば、大変なところもある。世の常ですね。アメリカの大学も決して桃源郷ではない。大変なところとは・・・

研究を続けるためには、その成果を発表し、資金援助を受けられるようにしなくてはならない。黙っていては援助は来ない・・・いいテーマだ、いい成果が期待できそうだ、ということを援助する人たちに認知させる必要があり、そのためには研究成果を専門誌などに頻繁に発表する必要があるそうです。しかも、大学で講義をすることも必要で、研究、発表、講義という生活を6~7年やって、その成果が認められれば大学にポストが得られるが、認められないと大学を去らねばならないそうです。従って、成果が期待できるかどうかを研究者自身が素早く見極めなくてはいけないため、成果が早く出るテーマに研究が集中してしまうことが弊害としてはあるそうです。

しかし、それにもかかわらず、アメリカへ。大学に残って研究生活を、あるいはビジネスの世界へ。高給という高待遇が魅力の一つになっているようです。ただ、もちろん全員が全員うまく行くわけではなく、失意の内にフランスへ戻る人もいるそうです。競争社会。厳しいものですね。

そうした競争原理を大学にも導入しようという動きが、今フランスにもあります。サルコジ大統領が推進する「改革」の一環として、大学の自治拡大ということが言われています。各大学の裁量権を拡大する。その代わり産学協同などを通して、大学自らがさらに稼ぐように。もっと働いて、もっと稼ごう、というサルコジ流改革の大学版です。

しかし、大学はあくまで研究の場で、こうした動きには反対だ、という学生たちが、今行われている公共交通機関のストと連動して、大学封鎖などを行なっています。14日には、全国85大学の内、政府発表で30ほど、学生側発表で60ほどの大学で、封鎖やデモ、授業ボイコットなどが行なわれたそうです。しかし・・・



15日のフィガロ紙に出ていた写真ですが、こうして労働組合のデモに合流した学生はわずかで、インタビューで紹介されているように、政治より、復習や宿題のほうが心配だ、という学生が多いそうです。産学協同にしても、その企業に就職でき易くなるのなら賛成、という学生の声も紹介されていました。右傾化して、政府支持の学生も多いとか。68年の五月革命の再現など、とても望めるような状態ではないようです。

フランスの青年は今、政治より現実の生活に目を向けて、アメリカをめざす・・・時代が変わり、めざすところも変わりましたが、でも、何かをめざしているのは同じ。何かをめざす熱意が若さの証明でしょうか。『青年は荒野をめざす』にも「人生は何度でも新しくなる。青春は、その人の気持ちの持ちようで、何回でも訪れてくれるんだよ」という一説があります。さて、私たちも、何かをめざして新たな一歩を踏み出してみましょうか、遅すぎるなんて言わずに。

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オリンピックを、歩きながら見よう!?

2007-11-14 05:40:04 | マスコミ報道
今、ソウルでは、歩行者同士の衝突に気をつけなくてはいけない! そんな記事が、こちらの新聞に出ていました。それとオリンピックと、どういう関係が・・・?



11-12日付のル・モンド紙に挟み込まれていた週間テレビガイドの表紙です。ハロー、テレビ!・・・そうです、モバイルテレビが間もなく始まるというニュースです。

中面の記事によると、今フランスでは地上波デジタル放送が携帯で見れるようですが、来年には多くのチャンネル(16局)が見れるようになる。すごい! 外出先でも歩きながらでも見たい・・・そんな番組の筆頭は、なんといってもスポーツ。そして、来年のスポーツの目玉といえば、北京オリンピック。オリンピックを携帯で見よう。フランス選手、フランスチームをいつでもどこでも応援しよう、となるわけですね。

でも、ソウルは・・・今、モバイルテレビで先行しているのが、韓国。外出先ではもちろん、歩きながらでもモバイルテレビを見ている人が多い。そこで、歩行者同士の衝突も起きてしまう。フランスでも、気をつけよう。と、まあ、こうなるわけですね。

このル・モンド紙の記事によると、モバイルテレビが見れるようになるのは、2008年8月8日午後8時8分・・・北京オリンピックの開会式に合わせてだといっています。でも、時差は? 夏ですから6時間。ということは、8月8日の午後2時8分のはずですが・・・今ごろ来年の夏のことをいえば、鬼も笑う・・・で、アバウトな話のようです。

実はそのアバウトさ加減を、別の記事が証明してくれています。



9日付のフィガロ紙なのですが、モバイルテレビが来年末には実現・・・!? 来年8月なのか、来年末なのか・・・

この記事によると、携帯電話や携帯テレビなどで受信できるテレビ番組の放送事業者をここ3ヶ月で募集し、来春に選定。夏には試験放送にこぎつけられそうだ。この時期に行なわれる北京オリンピックは、加入者を勧誘するには絶好のチャンス。そして、本放送は、来年のクリスマス・プレゼントとして間に合うか、2009年初頭になるだろうということです。つまり、来年夏は試験放送で、どれだけの局が始められるかは、まだ不確定のようです。従って、フィガロ紙の経済面の記事は慎重に来年末という本放送の時期を取り上げていますが、いかにル・モンド紙といえども週間テレビガイド面ですから、オリンピックをモバイルテレビで見よう、と煽っているようです。編集の立場により、同じひとつの事でもスポットを当てる場所が異なると、内容まで異なって見えてしまう、という見本みたいな報道ですね。

といううるさいことは措いておいて、来年にはフランスでもモバイルテレビが見れるようになるそうです。

そして、モバイルテレビに関係するニュースをもう一つ。



12日付のマタン・プリュス紙ですが、最近、タクシー内でテレビが見れるようになったそうです。今は120台、来年1月には350~400台に受信装置が取り付けられる! さらにモバイルテレビが始まるとタクシーに乗っていても多くのチャンネルが見れそうですね。でも、運転手までテレビに夢中になってしまうと・・・タクシー同士の衝突に気をつけよう、などという記事が登場しないことを願っています! 

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フランスで、過労死!?

2007-10-30 18:18:35 | マスコミ報道
(ときどき更新の②です)

KAROSHIとアルファベットで海外メディアが伝えるように、働きすぎて病死する、あるいは自ら命を絶つのは日本人に多い。そう思われることが多く、私もそう思っていたのですが、フランスでも、問題になっているようです。

ただし、フランスの場合、社会一般に過労死が増えているというわけではなく、ある企業の、しかもある事業所での過労死が、特にメディアに注目されています。


(10月21-22日付のル・モンド紙です)

その事業所とは自動車メーカー、ルノーのテクニカルセンター。ここでは、去年10月から今年2月にかけて、2人の社員がオフィスで、もう1人が自宅で、自ら命を絶っています。一事業所で、これだけ続けて自殺者が出るというのは、やはり異常。その背景及び対策について、調査委員会が検証しています。

9,257人の社員のうち62.7%に当たる5,800人(その半分が管理職と技術者)にアンケートに答えてもらい、また120人に個別インタビューを行ったそうです。その結果、明らかになったのは・・・

管理職と技術者の31.2%が強度のストレスを抱えているそうで、同じ立場のフランス人平均10.3%の3倍。多くの社員がストレスに悩んでいるようです。そのストレスの元は・・・

仕事が忙しすぎるにもかかわらず、サポートがない。成果に対する見返り、特に昇進が見えにくい。その結果、仕事へのモチベーションが下がり、働く意味を見失っている社員が71%に達しているそうです。では、どの程度忙しいのか・・・

フランスでは一日7時間、週35時間労働になっていますが、この事業所では、社員の三分の二が恒常的に一日9時間働いており、管理職では87.5%が10時間以上働いているそうです。あるプロジェクト・リーダーは「朝8時から夜8時までオフィスで働き、家で夜10時から12時あるいは午前1時頃まで働いている」といっています。フランスのサラリーマンがこんなに働いているとは! 課された仕事を決められた期限までに行うのはほとんど無理なのだが、無理だとか出来ないとかは誰も言わないそうです。きっと、Job Descriptionがはっきりしていて、どんな仕事をして給与いくらという個人契約になっているので、それが達成できなければ解雇される可能性もある。そこで、仕事が多く、責任も重く、ただし給与もいい管理職ほど、無理をする事になっているのでしょうね。「一時的に12時間くらい働く事は厭わないが、14時間も16時間も働く事は無理だ」と言っている管理職もいます。では、どうして、こうも忙しいのか・・・

以前から忙しいのは忙しかったそうですが、特に忙しくなったのは経営陣が「プラン2009」という新しい戦略を発表してからだそうです。新車の開発から製造、そして発売まで、1993年には54ヶ月かけていたのが、今では26ヶ月になり、今後の新車はさらに短期間で開発・製造する事が求められているとか。その結果、働いても働いても仕事をこなせず、ストレスが溜まり、悲劇になってしまう・・・

こうした状況に、会社側は社員を350人増員したり、臨時工を200人雇ったりしたそうです。また、社員の一体感を高め、モチベーションを上げるべく、「チームの日」という行事を行うそうです。日本にある工場祭とかそういった社員行事のようなものなのでしょうね。しかし、社員たちはその効果に懐疑的だそうです。

管理職ほど働くフランスの職場。でも、ちょっと度を越してしまっているのかもしれませんね。フランスで過労死が問題になるとは、思ってもみませんでした。国際的競争と労働環境・・・因みに、「プラン2009」、カルロス・ゴーン氏の戦略だそうです。

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マンガ、その人気の秘密。

2007-10-23 01:47:45 | マスコミ報道
マンガが“manga”として世界で通用しているのは、今までも何度かご紹介してきましたが、思わぬ雑誌でも取り上げられていました。



“National Geographic”(『ナショナルジオグラフィック』誌)、自然科学を中心に地球に関するテーマで編集されている雑誌で、180カ国で読まれています。そのフランス語版の9月号の表紙です。この出で立ち、そしてJAPONの文字・・・すぐマンガ、コスプレ系の話題であることが分かりますね。地球を考える雑誌の表紙にまで、ついにマンガは進出!

記事は、いかに日本でマンガが大きな存在であるかを、『ゲゲゲの鬼太郎』や今年のアングレーム(Angoureme)国際バンド・デシネフェスティバルで最優秀コミック賞を取った『のんのんばあ』で有名な水木しげる氏の紹介から始めています。特に、その故郷、境港市では120体もの妖怪の像を800mにわたって設置。その通りも「水木通り」と命名。その作品を紹介する記念館ともども、今や人気の観光スポットとなり、年間100万人もの観光客が訪れるようになっているそうです。



マンガの歴史は、1814年に遡ります。葛飾北斎が『北斎漫画』を始めたのがその起源。そして今では、日本人の50%が少なくとも週に一度は読むまでになっています。特に今日の隆盛の基礎を作ったのは『マンガの神様』とも言われる手塚治虫。手塚治虫を中心に、第二次大戦後の廃墟のなか、日本人に新しい時代へ向かう勇気を、新しい指針を提示してくれたのがマンガだったと、日本のマンガに詳しいJean-Marie Bouissou氏(パリ政治学院ディレクター)は言っています。さらに、マンガは紙に描かれた映画とも言え、登場人物たちの動作は誇張されていますが、その一つ一つに感情が見事に表現されており、現実社会ではストレートな感情表現をしにくい日本人にとって、この豊かな感情表現がマンガを愛する理由の一つになっているのではないか・・・。

マンガは単に面白いだけではなく、人生を生きていく上での哲学を教えてくれるものでもある、と日本の多くの読者が言っています。特に悪に立ち向かう勇気、そして友情、これらが表現されている作品ほど、ファンが多いとか。

マンガの売り上げは、日本の出版界の三分の一を占め、40億ユーロ(約6,600億円)にもなっているそうで、発行部数も多く、『少年ジャンプ』は1995年には650万部も出ていました。また、時代とともに変化する読者の好みを探るため、出版社ではアンケートを頻繁に実施し、その変化を登場人物に反映させるようにしているとか。マンガにおいては、ストーリーよりも登場人物が大切なんだそうです。しかし、こうした環境に、マンガは自分の描きたいように描きたい、という若い漫画家もいて、彼らにとっての憧れの地は、最も自由に制作ができそうなフランスだそうです(このあたり、フランスの雑誌の記事ですから・・・)。



同人誌を中心に、数多くの漫画家希望者がいて、制作者サイドにも広い裾野があるのが、マンガの強みにもなっているようです。また、好きな漫画を描きたい、ということだけが慢画家志望の理由ではなく、収入のよさもよく知られているそうです。単に出版されるだけではなく、アニメ化されたり、映画化されたり、ビデオゲームに採用されたり・・・それだけ有名漫画家の収入は大きく増えることになりますね。そこがより多くの人を惹きつける理由にもなっているとか。

また、マンガには時代を先取りする力がある。だから、読みながら、もしかするとこうした時代がもうすぐ来るのでは、という期待を抱く読者も多い。特に、可愛くとか家庭の世話をしてというように社会的制約の多い女性たちにとっては、マンガを通して、男女平等とか、あるいは自分の生きたいように生きることのできる社会を期待することができたのではないか。あるいはこういう社会に変えて行きたいという、変革の源になったのではないか、とも言われているようです。

こうした理由は、日本でのマンガ人気の説明にはなりますが、では世界で愛されるわけは? それは豊穣にして多様性に富んだ要素がマンガにはあるからだろうと説明されています。北斎漫画から始まった浮世絵の伝統、現実を白日の下に晒す写実的写真の影響、西洋の映画の手法・・・こうした洋の東西も時代も問わず多くのものを受け入れて成立しているマンガなればこそ、多くの国で受け入れられる普遍性があるのではないか・・・この記事はそう紹介しています。その結果、2005年には日本はアメリカに次ぐ文化輸出大国になっており、またBBCとアメリカのメリーランド大学が33カ国4万人を対象に行なった「世界に好影響を与える国調査」では、日本は輝くトップの座を獲得しました!


(日系旅行代理店がフランス人向けに組んでいる日本ツアー、マンガをテーマにしたものも人気だそうです)

経済面でその存在感が薄れようと、政治的には相変わらず小国であろうと、今や日本には文化があります。「文化出る国、日本」になりつつある・・・そう実感させてくれる記事でした。『ナショナルジオグラフィック』の特集記事になるほどですから、もう確信しても大丈夫そうですね。今までそれに携わる人たちの自助努力でここまで花開いてきた日本のポップカルチャーですから、あとは、変に政治に翻弄されないようにと願うばかりです。

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ウツ、ウツ、フランス人も悩んでいる。

2007-10-20 01:33:47 | マスコミ報道
社会が変化し、家族の姿が変わり、職場も変貌する。そうした環境の変化に伴い、精神的な悩みを抱える人が多くなっている・・・どうも、日本だけではないようです。



「フランス人五人に一人がウツに悩んでいる」と伝える16日のフィガロ紙です。Credoc(Centre de Recherche pour l'Etude et l'Observation des Conditions de Vie:暮らしに関する調査研究センター)の調査によると、今現在ウツ状態にあるという人が5%、ここ3ヶ月の間にウツ状態を経験した人が13%、過去3年の間に経験した人が17%だそうです。5%と13%を合わせて18%、見出しの五人に一人となるわけですね。

特に多いのは、18-25歳の男女、35-44歳の男性、45-54歳の女性だそうです。若い世代では、進学、就職などのストレス、40歳前後の男性には職場での責任や解雇の恐怖感、50歳前後の女性では更年期や老後への不安・・・これらの理由は私が勝手に推測したものなのですが、こう考えると、国は違えど、同じようなことに悩んでいるんだなと思えてきますね。日本人と対極にあるように感じていたフランス人が、急に身近に思えてしまいます。フィガロ紙の記事は世代ごとの理由は紹介していないのですが、フランス人全体としてウツに悩む人たちの背景には、「不安感」、「孤独感」、「老いへの不安」があると指摘しています。

専門医は、成果主義、個人主義、ストレスの蔓延する今日の社会がさまざまな病気の温床になっている、と警告を発しているそうです。フランスは昔から個人主義の国と思っていたのですが、きっと最近ではちょっと度を越してしまって問題化しているのかもしれないですね。ギスギスした社会・・・先進国共通の問題なのかもしれません。

悩みを抱える人たちの家庭環境では、所得の低い層ほど悩む人の割合が高いそうです。不安定な暮らし、将来への不安、そうしたことが発症の引き金になりやすいとか。また、気力減退、解雇への不安、疎外感・・・こうしたことが多くのケースに見られる原因だそうです。

そして、ウツに悩む人たちを取り巻く周囲の問題として挙げられているのが、「無理解」。色眼鏡で見られる、あるいは一度その烙印を押されてしまうといろいろな場面にそのレッテルがついてまわる・・・従って、自分がウツに悩んでいることを周囲に言えない人が過半数、24歳以下では67%に達しているそうです。このあたりも、多くの国共通なのかもしれないですね。個性を認めるというか、違うことを評価するフランスにおいても、こうした状況です。ましてや、均質な社会では・・・今の時代、生き抜くのは、難しい。

専門医は、少しでもウツだと感じたら、ためらわずに専門医の診断を受けるようにとアドバイスしています。現状は、ウツ症状のある人の半分しか治療を受けておらず、そのまた半分の人しかきちんとした治療を行なっていないそうです。一般医に相談する人が多いそうですが、ウツの診察には45分から1時間必要で、とても一般医がそこまで一人の患者に時間を割けない。やはり、専門医の診断を仰ぐべきだそうです。また、心理療法に頼る人も多いようですが、これはあくまで補助的なもので、やはり専門医の指示の下、抗鬱剤などの投薬を正しく行なうことが必要だといっています(これはあくまでフィガロ紙の記事によると、です。日本では、異なるアドバイスがなされているかもしれません)。


(多くの企業が集まるデファンス地区。ここでも人知れず悩んでいる人が多いのかもしれませんね)

行き過ぎた個人主義やそこから来る孤独感、そして何よりも競争社会から来るストレス、そしてまた社会の周辺部で不安定な暮らしを営む人々が抱く疎外感・・・国境を越えて、多くの国で、そして多くの人が同じ悩みを抱えているようです。しかも、そうした悩みを抱える人たちへ理解を示そうとしないどころか、弱者のレッテルを貼って社会的に葬り去ってしまう周囲の人たち。これまた、同じような状況のようです。「タフでなければ生きていられない」。しかし、本当にタフな人であるならば、弱者への理解、あるいは支援の手を差し伸べることができるのではないでしょうか・・・「やさしくなければ生きている資格がない」(『プレイバック』~レイモンド・チャンドラー)。

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ロボットは、日本から。

2007-10-16 00:18:02 | マスコミ報道
ロボットが、ついに家庭に入り始めた! そんな話題を紹介する新聞記事が、先日フィガロ紙に出ていました。


(10日付です、NECのPaPeRoが家庭文化欄の一面に出ています)

私にとってロボットといえば、はじまりは鉄腕アトム。自分で歩き、走り、自由に空を飛び、考えたり、話すこともできる・・・21世紀にはこんなロボットが誕生するのでは、という淡い期待を抱いていたものです。しかし、そうした夢もさまざまな現実の前にいつの間にか色あせ・・・忘れかけていた頃、突如、ロボットが脚光を浴び始めました。

工作機械としては、着実のにその性能を進化させていたようですが、それが二足歩行のロボットとなって登場。ホンダの“ASIMO”でした。1990年代後半。それからは他メーカーも開発に加わり、ロボットの人間化が進んでいるようです。

そうした日本のロボット開発の状況は、時々フランスのメディアも伝えています。フィガロ紙も、“La plupart viennent du Japon”(ほとんどが日本生まれだ)と紹介しています。今や、ロボットといえば日本、というイメージはしっかりと定着しているようです。


(右端がご存知アシモ、中央がフランス製の人間型ロボットで名前はナオ(Nao)、日本ぽい名前ですね)

フィガロ紙の記事は、ロボットの現状とその明るい将来を少し詳しく紹介しています。今後のロボットの活躍の場は、無限にあるに違いない・・・それは、コンピューターが誕生したとき、人はこれほどまでの可能性を秘めた技術とは思わなかったのと同じことだ。今やコンピューターは、たんなる計算以上のことをやってのける。ワード、エクセルから、デザイン、そしてインターネット。それと同じことがロボットに起きても不思議ではない。

今現在、商業化され家庭に入り始めているロボットは、大きく2種類に分類できる。一つは、子供の学習教材的な役割を担っているロボット。乗り物や昆虫などの形をしているが、子供がプログラミングできるキットになっていて、遊びながらプログラミングを学べるようにもなっている。

もう一つは、家事用ロボットで、掃除、床磨きなどができるが、今はまだ主にオフィスなどで用いられている。しかし、さらに進化すれば、お年寄りに代わって多くの家事を代行することもできるようになるだろう。音声認識により喋ることもでき、人の顔を認識することにより、防犯の働きも担えるようになる。しかも、一人暮らしのお年寄りの体調が悪くなった際に、それを認識し、病院に連絡することも可能になる。また、ネット上の文字を読み返事を出したりすることもOK。さらに、ロボット自体がメディアとなり、テレビや電話などの機能を内蔵することもできる。

なるほど、ロボットの可能性は、無限大といってもいいほど、大きいものがあるようですね。こうした現状と将来性の紹介の後に、フィガロ紙の記事は、いかにもフランスらしいなと思わせるコメントを付け加えています。

ロボットの開発は、日本だけでなく、アメリカ、カナダ、韓国、フランスなどでも行なわれている。しかし、人間の姿形をしたロボットは、主に日本、韓国で開発されている。そこには、アジア諸国のアニミズムの影響が見て取れる・・・アジアでは、モノに感謝したり、モノにも霊的なものを認めたり、自然は共生する仲間である。つまり、アジアでは、自然界のあらゆるものに霊魂や精霊などが存在し、人間を取り巻く現象もそうした霊的なものによって惹き起こされるという、原初的宗教観が今でも生きている。一方、欧米では自然は征服すべき対象に過ぎず、宗教も一神教である。そういえば、キリスト教という一神教は進化した宗教であり、アニミズムや多神教を信じる人々は遅れている! こう信じている人がこちらには多くいます。遅れている進んでいるではなく、宗教観が違うのだと思うのですが、日本の辞書にも、アニミズムは「宗教の原初的な超自然観の一つ」(広辞苑)と出ているので、八百万の神なんていっているうちは宗教的には遅れているということなのでしょうか・・・(不勉強で、このあたり、確信なしです)。

そして、もう一つ。無限の可能性を秘めているロボット。そこに残されているのは、アシモフの「ロボット工学三原則」だ。

• 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
• 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
• 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
(『われはロボット』小尾芙佐訳 昭和58年 早川書房 P5 より孫引き)

便利だからといって、何をさせても、あるいは何をしてもいいというわけではない。アシモフの三原則を忘れてはいけない・・・やはり、ここにはロボットをも決して対等とは見做さず、服従させるべきものであるという意識が滲んでいるような気がします。一方、日本では、可愛い、友達だ、仲間だ・・・科学者は別かもしれないですが、一般的には何も規制など設けず、受け入れてしまいそうですね。

ロボットにどう対応するか、そこにも彼我の差が、どことなく、表れているような気がします。へたの考え休むに似たり、でしょうか・・・

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