すでにご存知のように、フランスの銀行、ソシエテ・ジェネラル(Societe generale)で一人のディーラーによる49億ユーロ(約7,800億円)という巨大な損失が発覚しました。その額の大きさから、地元フランスでは、もちろん一大ニュース。

25日のメトロ紙です(写真の人物は、この件とは全く関係ありません)。世紀の損失とか、世紀の衝撃とかいった意味でしょうか、こうした事件の今までの記録(1995年、イギリス、ベアリングス社の約1,600億円)を塗り替える一大損失ですから、「世紀の」という形容詞が誇大表現には当たらないほどの衝撃ですね。

同じく25日のフィガロ紙です。不正行為を行なったジェローム・ケルヴィエル氏(Jerome Kerviel)の写真つき(今よりも若い時のものだそうです)でトップニュースです。ソシエテ・ジェネラルに50億ユーロの損失をもたらした男・・・
普段は冷静に事件の背景や今後の課題などを論評するフランスの新聞も、さすがにその衝撃から社会面的関心でまとめた記事も多く出していました。それらを総合すると、このケルヴィエル氏、生まれは1977年1月11日。31歳の誕生日前後に、自分の権限を越える不正取引を繰り返していたことになります。リヨン第二大学で、市場金融の修士号を取得。2000年からソシエテ・ジェネラルに勤務していたそうです。はじめの5年間は、サポート部門に勤務し、その間に社内のさまざまな管理、チェックシステムに精通したそうで、その知識が不正取引を隠すのに役立ってしまったようです。
今日、フランスでもディーラーの成功報酬は大きく膨らんでおり、優秀なディーラーは50万ユーロから100万ユーロ(約8,000万円~約1億6,000万円)の年収になっているそうです。そうした環境にありながら、ディーラーとしては平凡な能力と評されるケルヴィエル氏の年収は10万ユーロ(約1,600万円)ほどしかなく、今回の不正取引でも自分の資産として手をつけた形跡はないそうです。とは言うものの、一般的フランス人よりは高収入で、裕福な人が多く住むヌイイ市に住んでいるようです。
銀行の人事担当者は、ケルヴィエル氏が性格的に弱く、家庭に問題を抱えていたと言っていますし、上司は、これは彼個人がやった行為であると強調しています。ディーラーという職種もありますし、また個人主義のフランスですから、個人で勝手にやったというのもそうなのだろうと肯けますが、上司が敢えて言うのは却って組織を守るためというニュアンスが出てしまうような気もしますね。

同じ日のフィガロ紙の経済面ですが、写真の建物が、ラ・デファンス地区にあるソシエテ・ジェネラルの本社。さすがに立派なビルですね。ここで働く社員にインタビューもしています。ケルヴィエル氏と同じ職場で働く社員にはかん口令が出されたそうですが、それ以外の部署の社員にとっても、ショックであり、この話題で持ちきりだったようです。多くの社員にとっては、この損失による人員削減が行なわれるのかどうか、業績に連動したボーナスに大きな影響がでるのではないか、ボーナスが削減されれば腕のいいディーラーは転職して行ってしまい、銀行の将来が心配になる・・・もちろん、余裕かやせ我慢か、これで不正ランキングのトップに君臨できる! とか言う社員もいるようですが、一方、たぶん悪循環に巻き込まれた若いディーラーが損失を一気に取り返そうとして、さらに抜き差しならない状態に落ち込んでしまったのではないか、しかも世界的株価急落がその損失に拍車をかけたのだろう、と分析する社員も。新聞記事曰くは、タバコを吸いに屋外に出てきている社員たちは普段以上にタバコを吸いすぎたに違いない、何しろ49億ユーロが煙と消えたのだから・・・

ソシエテ・ジェネラルのオフィスは街中にも多くあり、ATMで現金を引き出している顧客もよく目にします。今回の損失、そしてサブプライムローン問題の影響もあったものの、2007年にソシエテ・ジェネラルは55億ユーロの税引き前利益を出すそうです。従って、先のイギリス、ベアリングス社のように倒産ということにはならないようです。しかも今日では、預金者は7万ユーロ(約1,100万円)までは保証されるそうですから、取り付け騒ぎには発展していません。さらに、資本増強のため55億ユーロの増資を行なうそうで、こうした状況と今後の施策等について、ソシエテ・ジェネラル社長名で株主宛、新聞紙上でメッセージが出されています(やはり、あて先は株主、世間様ではないんですね。企業は株主のために存在する・・・)。

25日のフィガロ紙です。通常のビジネスでの困難な環境と特別な出来事が重なったが利益を出していること、特別な事件は、一社員の並外れたシステム上の隠蔽技術によるものだが、それを見抜けなかった管理体制にも問題がある。関係者の責任を明確にし、すでに解雇もしている。そして、社長自らの辞任についても申し出たが、理事会で拒否され、その任を継続することになった。役員たちの支援を得ながら、業績を回復すべく全力を傾注する覚悟である、といったことを述べています。

27-28日付けのル・モンド紙ですが、何も見なかった、何も知らなかった、と言っているとまるで砂上の楼閣のようになってしまう・・・金融監査の無力さ、今回の事件の政府への報告の遅れなどをはじめ多くの解明すべき点が残っていることを指摘しています。
高飛びしたとか、自殺したのではなどといった噂も流れたケルヴィエル氏ですが(このへんは、日本と近いですね)、噂は噂、きちんと(というのも変ですが)検察の取り調べに応じているようです。どこへ行こうと、いかなる銀行も彼を雇用することはもはやない、とフランス銀行総裁がショックのあまりか息巻いていたそうですが、司直の手によって裁かれるようです。ただし、額も額ですが、横領とかではなく、言ってみればマネーゲームの失敗という判例がフランスにはないため、どういう判決が出るか推測は難しいようですが、新聞各紙は5年から15年の禁固刑になるのではと言っています。先輩格にあたる(この言い方も変ですね)ベアリングス社事件の当事者(ニック・リーソン氏)は6年半の禁固刑でしたが、受刑中に事の経緯をまとめて出版(『私がベアリングス銀行をつぶした』)。映像化もされたようです。印税等が入ったのでしょうが、その後の長い人生、どう送るのでしょうか。そして、ケルヴィエル氏の場合は・・・
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25日のメトロ紙です(写真の人物は、この件とは全く関係ありません)。世紀の損失とか、世紀の衝撃とかいった意味でしょうか、こうした事件の今までの記録(1995年、イギリス、ベアリングス社の約1,600億円)を塗り替える一大損失ですから、「世紀の」という形容詞が誇大表現には当たらないほどの衝撃ですね。

同じく25日のフィガロ紙です。不正行為を行なったジェローム・ケルヴィエル氏(Jerome Kerviel)の写真つき(今よりも若い時のものだそうです)でトップニュースです。ソシエテ・ジェネラルに50億ユーロの損失をもたらした男・・・
普段は冷静に事件の背景や今後の課題などを論評するフランスの新聞も、さすがにその衝撃から社会面的関心でまとめた記事も多く出していました。それらを総合すると、このケルヴィエル氏、生まれは1977年1月11日。31歳の誕生日前後に、自分の権限を越える不正取引を繰り返していたことになります。リヨン第二大学で、市場金融の修士号を取得。2000年からソシエテ・ジェネラルに勤務していたそうです。はじめの5年間は、サポート部門に勤務し、その間に社内のさまざまな管理、チェックシステムに精通したそうで、その知識が不正取引を隠すのに役立ってしまったようです。
今日、フランスでもディーラーの成功報酬は大きく膨らんでおり、優秀なディーラーは50万ユーロから100万ユーロ(約8,000万円~約1億6,000万円)の年収になっているそうです。そうした環境にありながら、ディーラーとしては平凡な能力と評されるケルヴィエル氏の年収は10万ユーロ(約1,600万円)ほどしかなく、今回の不正取引でも自分の資産として手をつけた形跡はないそうです。とは言うものの、一般的フランス人よりは高収入で、裕福な人が多く住むヌイイ市に住んでいるようです。
銀行の人事担当者は、ケルヴィエル氏が性格的に弱く、家庭に問題を抱えていたと言っていますし、上司は、これは彼個人がやった行為であると強調しています。ディーラーという職種もありますし、また個人主義のフランスですから、個人で勝手にやったというのもそうなのだろうと肯けますが、上司が敢えて言うのは却って組織を守るためというニュアンスが出てしまうような気もしますね。

同じ日のフィガロ紙の経済面ですが、写真の建物が、ラ・デファンス地区にあるソシエテ・ジェネラルの本社。さすがに立派なビルですね。ここで働く社員にインタビューもしています。ケルヴィエル氏と同じ職場で働く社員にはかん口令が出されたそうですが、それ以外の部署の社員にとっても、ショックであり、この話題で持ちきりだったようです。多くの社員にとっては、この損失による人員削減が行なわれるのかどうか、業績に連動したボーナスに大きな影響がでるのではないか、ボーナスが削減されれば腕のいいディーラーは転職して行ってしまい、銀行の将来が心配になる・・・もちろん、余裕かやせ我慢か、これで不正ランキングのトップに君臨できる! とか言う社員もいるようですが、一方、たぶん悪循環に巻き込まれた若いディーラーが損失を一気に取り返そうとして、さらに抜き差しならない状態に落ち込んでしまったのではないか、しかも世界的株価急落がその損失に拍車をかけたのだろう、と分析する社員も。新聞記事曰くは、タバコを吸いに屋外に出てきている社員たちは普段以上にタバコを吸いすぎたに違いない、何しろ49億ユーロが煙と消えたのだから・・・

ソシエテ・ジェネラルのオフィスは街中にも多くあり、ATMで現金を引き出している顧客もよく目にします。今回の損失、そしてサブプライムローン問題の影響もあったものの、2007年にソシエテ・ジェネラルは55億ユーロの税引き前利益を出すそうです。従って、先のイギリス、ベアリングス社のように倒産ということにはならないようです。しかも今日では、預金者は7万ユーロ(約1,100万円)までは保証されるそうですから、取り付け騒ぎには発展していません。さらに、資本増強のため55億ユーロの増資を行なうそうで、こうした状況と今後の施策等について、ソシエテ・ジェネラル社長名で株主宛、新聞紙上でメッセージが出されています(やはり、あて先は株主、世間様ではないんですね。企業は株主のために存在する・・・)。

25日のフィガロ紙です。通常のビジネスでの困難な環境と特別な出来事が重なったが利益を出していること、特別な事件は、一社員の並外れたシステム上の隠蔽技術によるものだが、それを見抜けなかった管理体制にも問題がある。関係者の責任を明確にし、すでに解雇もしている。そして、社長自らの辞任についても申し出たが、理事会で拒否され、その任を継続することになった。役員たちの支援を得ながら、業績を回復すべく全力を傾注する覚悟である、といったことを述べています。

27-28日付けのル・モンド紙ですが、何も見なかった、何も知らなかった、と言っているとまるで砂上の楼閣のようになってしまう・・・金融監査の無力さ、今回の事件の政府への報告の遅れなどをはじめ多くの解明すべき点が残っていることを指摘しています。
高飛びしたとか、自殺したのではなどといった噂も流れたケルヴィエル氏ですが(このへんは、日本と近いですね)、噂は噂、きちんと(というのも変ですが)検察の取り調べに応じているようです。どこへ行こうと、いかなる銀行も彼を雇用することはもはやない、とフランス銀行総裁がショックのあまりか息巻いていたそうですが、司直の手によって裁かれるようです。ただし、額も額ですが、横領とかではなく、言ってみればマネーゲームの失敗という判例がフランスにはないため、どういう判決が出るか推測は難しいようですが、新聞各紙は5年から15年の禁固刑になるのではと言っています。先輩格にあたる(この言い方も変ですね)ベアリングス社事件の当事者(ニック・リーソン氏)は6年半の禁固刑でしたが、受刑中に事の経緯をまとめて出版(『私がベアリングス銀行をつぶした』)。映像化もされたようです。印税等が入ったのでしょうが、その後の長い人生、どう送るのでしょうか。そして、ケルヴィエル氏の場合は・・・
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