マンガが“manga”として世界で通用しているのは、今までも何度かご紹介してきましたが、思わぬ雑誌でも取り上げられていました。
“National Geographic”(『ナショナルジオグラフィック』誌)、自然科学を中心に地球に関するテーマで編集されている雑誌で、180カ国で読まれています。そのフランス語版の9月号の表紙です。この出で立ち、そしてJAPONの文字・・・すぐマンガ、コスプレ系の話題であることが分かりますね。地球を考える雑誌の表紙にまで、ついにマンガは進出!
記事は、いかに日本でマンガが大きな存在であるかを、『ゲゲゲの鬼太郎』や今年のアングレーム(Angoureme)国際バンド・デシネフェスティバルで最優秀コミック賞を取った『のんのんばあ』で有名な水木しげる氏の紹介から始めています。特に、その故郷、境港市では120体もの妖怪の像を800mにわたって設置。その通りも「水木通り」と命名。その作品を紹介する記念館ともども、今や人気の観光スポットとなり、年間100万人もの観光客が訪れるようになっているそうです。
マンガの歴史は、1814年に遡ります。葛飾北斎が『北斎漫画』を始めたのがその起源。そして今では、日本人の50%が少なくとも週に一度は読むまでになっています。特に今日の隆盛の基礎を作ったのは『マンガの神様』とも言われる手塚治虫。手塚治虫を中心に、第二次大戦後の廃墟のなか、日本人に新しい時代へ向かう勇気を、新しい指針を提示してくれたのがマンガだったと、日本のマンガに詳しいJean-Marie Bouissou氏(パリ政治学院ディレクター)は言っています。さらに、マンガは紙に描かれた映画とも言え、登場人物たちの動作は誇張されていますが、その一つ一つに感情が見事に表現されており、現実社会ではストレートな感情表現をしにくい日本人にとって、この豊かな感情表現がマンガを愛する理由の一つになっているのではないか・・・。
マンガは単に面白いだけではなく、人生を生きていく上での哲学を教えてくれるものでもある、と日本の多くの読者が言っています。特に悪に立ち向かう勇気、そして友情、これらが表現されている作品ほど、ファンが多いとか。
マンガの売り上げは、日本の出版界の三分の一を占め、40億ユーロ(約6,600億円)にもなっているそうで、発行部数も多く、『少年ジャンプ』は1995年には650万部も出ていました。また、時代とともに変化する読者の好みを探るため、出版社ではアンケートを頻繁に実施し、その変化を登場人物に反映させるようにしているとか。マンガにおいては、ストーリーよりも登場人物が大切なんだそうです。しかし、こうした環境に、マンガは自分の描きたいように描きたい、という若い漫画家もいて、彼らにとっての憧れの地は、最も自由に制作ができそうなフランスだそうです(このあたり、フランスの雑誌の記事ですから・・・)。
同人誌を中心に、数多くの漫画家希望者がいて、制作者サイドにも広い裾野があるのが、マンガの強みにもなっているようです。また、好きな漫画を描きたい、ということだけが慢画家志望の理由ではなく、収入のよさもよく知られているそうです。単に出版されるだけではなく、アニメ化されたり、映画化されたり、ビデオゲームに採用されたり・・・それだけ有名漫画家の収入は大きく増えることになりますね。そこがより多くの人を惹きつける理由にもなっているとか。
また、マンガには時代を先取りする力がある。だから、読みながら、もしかするとこうした時代がもうすぐ来るのでは、という期待を抱く読者も多い。特に、可愛くとか家庭の世話をしてというように社会的制約の多い女性たちにとっては、マンガを通して、男女平等とか、あるいは自分の生きたいように生きることのできる社会を期待することができたのではないか。あるいはこういう社会に変えて行きたいという、変革の源になったのではないか、とも言われているようです。
こうした理由は、日本でのマンガ人気の説明にはなりますが、では世界で愛されるわけは? それは豊穣にして多様性に富んだ要素がマンガにはあるからだろうと説明されています。北斎漫画から始まった浮世絵の伝統、現実を白日の下に晒す写実的写真の影響、西洋の映画の手法・・・こうした洋の東西も時代も問わず多くのものを受け入れて成立しているマンガなればこそ、多くの国で受け入れられる普遍性があるのではないか・・・この記事はそう紹介しています。その結果、2005年には日本はアメリカに次ぐ文化輸出大国になっており、またBBCとアメリカのメリーランド大学が33カ国4万人を対象に行なった「世界に好影響を与える国調査」では、日本は輝くトップの座を獲得しました!
(日系旅行代理店がフランス人向けに組んでいる日本ツアー、マンガをテーマにしたものも人気だそうです)
経済面でその存在感が薄れようと、政治的には相変わらず小国であろうと、今や日本には文化があります。「文化出る国、日本」になりつつある・・・そう実感させてくれる記事でした。『ナショナルジオグラフィック』の特集記事になるほどですから、もう確信しても大丈夫そうですね。今までそれに携わる人たちの自助努力でここまで花開いてきた日本のポップカルチャーですから、あとは、変に政治に翻弄されないようにと願うばかりです。
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“National Geographic”(『ナショナルジオグラフィック』誌)、自然科学を中心に地球に関するテーマで編集されている雑誌で、180カ国で読まれています。そのフランス語版の9月号の表紙です。この出で立ち、そしてJAPONの文字・・・すぐマンガ、コスプレ系の話題であることが分かりますね。地球を考える雑誌の表紙にまで、ついにマンガは進出!
記事は、いかに日本でマンガが大きな存在であるかを、『ゲゲゲの鬼太郎』や今年のアングレーム(Angoureme)国際バンド・デシネフェスティバルで最優秀コミック賞を取った『のんのんばあ』で有名な水木しげる氏の紹介から始めています。特に、その故郷、境港市では120体もの妖怪の像を800mにわたって設置。その通りも「水木通り」と命名。その作品を紹介する記念館ともども、今や人気の観光スポットとなり、年間100万人もの観光客が訪れるようになっているそうです。
マンガの歴史は、1814年に遡ります。葛飾北斎が『北斎漫画』を始めたのがその起源。そして今では、日本人の50%が少なくとも週に一度は読むまでになっています。特に今日の隆盛の基礎を作ったのは『マンガの神様』とも言われる手塚治虫。手塚治虫を中心に、第二次大戦後の廃墟のなか、日本人に新しい時代へ向かう勇気を、新しい指針を提示してくれたのがマンガだったと、日本のマンガに詳しいJean-Marie Bouissou氏(パリ政治学院ディレクター)は言っています。さらに、マンガは紙に描かれた映画とも言え、登場人物たちの動作は誇張されていますが、その一つ一つに感情が見事に表現されており、現実社会ではストレートな感情表現をしにくい日本人にとって、この豊かな感情表現がマンガを愛する理由の一つになっているのではないか・・・。
マンガは単に面白いだけではなく、人生を生きていく上での哲学を教えてくれるものでもある、と日本の多くの読者が言っています。特に悪に立ち向かう勇気、そして友情、これらが表現されている作品ほど、ファンが多いとか。
マンガの売り上げは、日本の出版界の三分の一を占め、40億ユーロ(約6,600億円)にもなっているそうで、発行部数も多く、『少年ジャンプ』は1995年には650万部も出ていました。また、時代とともに変化する読者の好みを探るため、出版社ではアンケートを頻繁に実施し、その変化を登場人物に反映させるようにしているとか。マンガにおいては、ストーリーよりも登場人物が大切なんだそうです。しかし、こうした環境に、マンガは自分の描きたいように描きたい、という若い漫画家もいて、彼らにとっての憧れの地は、最も自由に制作ができそうなフランスだそうです(このあたり、フランスの雑誌の記事ですから・・・)。
同人誌を中心に、数多くの漫画家希望者がいて、制作者サイドにも広い裾野があるのが、マンガの強みにもなっているようです。また、好きな漫画を描きたい、ということだけが慢画家志望の理由ではなく、収入のよさもよく知られているそうです。単に出版されるだけではなく、アニメ化されたり、映画化されたり、ビデオゲームに採用されたり・・・それだけ有名漫画家の収入は大きく増えることになりますね。そこがより多くの人を惹きつける理由にもなっているとか。
また、マンガには時代を先取りする力がある。だから、読みながら、もしかするとこうした時代がもうすぐ来るのでは、という期待を抱く読者も多い。特に、可愛くとか家庭の世話をしてというように社会的制約の多い女性たちにとっては、マンガを通して、男女平等とか、あるいは自分の生きたいように生きることのできる社会を期待することができたのではないか。あるいはこういう社会に変えて行きたいという、変革の源になったのではないか、とも言われているようです。
こうした理由は、日本でのマンガ人気の説明にはなりますが、では世界で愛されるわけは? それは豊穣にして多様性に富んだ要素がマンガにはあるからだろうと説明されています。北斎漫画から始まった浮世絵の伝統、現実を白日の下に晒す写実的写真の影響、西洋の映画の手法・・・こうした洋の東西も時代も問わず多くのものを受け入れて成立しているマンガなればこそ、多くの国で受け入れられる普遍性があるのではないか・・・この記事はそう紹介しています。その結果、2005年には日本はアメリカに次ぐ文化輸出大国になっており、またBBCとアメリカのメリーランド大学が33カ国4万人を対象に行なった「世界に好影響を与える国調査」では、日本は輝くトップの座を獲得しました!
(日系旅行代理店がフランス人向けに組んでいる日本ツアー、マンガをテーマにしたものも人気だそうです)
経済面でその存在感が薄れようと、政治的には相変わらず小国であろうと、今や日本には文化があります。「文化出る国、日本」になりつつある・・・そう実感させてくれる記事でした。『ナショナルジオグラフィック』の特集記事になるほどですから、もう確信しても大丈夫そうですね。今までそれに携わる人たちの自助努力でここまで花開いてきた日本のポップカルチャーですから、あとは、変に政治に翻弄されないようにと願うばかりです。
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私は、萩尾望都さんや山岸凉子さんの漫画が好きです。子供の時はなぜか(兄弟がいるからか?)少年サンデーも読んでいました。ストーリー性はほとんど文学にも劣らないと思う優れたものもたくさんありますし、やっぱり夢があります。漫画は、絵と文章が両方駆使されるので理解がストレートなのだと思います。よいマンガが、たくさん紹介されるように願っています。
『日出処の天子』は今でも日本の家に残っていると思います。『アラベスク』もあったような・・・一時、夢中で読んだ記憶があります。
何回も言っていますが、最近日本語を学び始めたきっかけが漫画というヨーロッパの人が多くいます。マンガ人気、たんなるブームでは終わらないと思っています。
私も漫画大好き、といっても何でも、と言うわけではなく特定のものに嵌ります。
小学生の頃から日本の素敵な漫画に浸ってきた目から見れば、外国の漫画って、一般に顔は可愛くないし絵は粗雑な感じがします(偏見??)。
日本の漫画は、外国に来て見直すようになったものの一つです。嬉しいです。
いつも楽しみに拝見させてもらってます。
大好きな辻邦生さんの記事や、ラグビー、カルチェラタン・・。
私が興味を持っている事を記事にしてくださることが多く、毎日訪問させていただいてます。
思うのですが、日本の文学の才能は小説から漫画に移行していってのではないでしょうか?
それは手塚治虫さんの功績(?)なのでしょう。
日本語だと読めない本も漫画でしたら海外で受け入れられやすいですね。
マンガもやはり文化。その国の文化を反映してるような気がします。日本のマンガからは、「間」の文化を感じますし、フランスのBDには「考え話す文化」を見て取れそうな気がします。日本の「間」の文化を反映しているマンガを、映画のようだと理解してくれているのは、なるほどと納得してしまいました。
コメントありがとうございます。
村上春樹が今年のノーベル文学賞の候補だといわれたり、北野武が相変わらず人気があったり、音楽の世界でも若手演奏家がいろいろ受賞したり、そしてマンガの人気。日本は立派な文化の国になっているような気がします。それに最も気付いていないのが日本だったりするような気もしてしまいます。
これからも、ご訪問・コメント、よろしくお願いします。