【ネタバレありまくりです】
これまで映画人として全てをやり切ったイーストウッドが、これ以上ない完璧な最後をこの映画に込めた。まさにイーストウッド的なヒーローの終焉劇といえる映画。
古きアメリカ体質を体現したような偏屈老人ウォルトは、ハリー・キャラハンに通じるものがある。神なんぞ信じない実存主義者。言葉汚く他者を罵り、自分の中に絶対的な正義(と思っているもの)がある。しかしいつも葛藤の中でイラつき、眉根にシワを寄せて生きているという矛盾を抱える。(その実、根は悪い人でない)
そんなウォルトもモン族の姉弟に出会う事で少しずつ心を開く。聡明で屈託のない姉スーとの交流から「米食い虫」と差別していたアジア系人種への気持ちは氷解していく。また弟のタオを「トロ助(絶妙な訳!)」と呼びながらも、自身の息子とは結べなかった親子の情を育んでいく。タオに教授する「男とはこうあるべきだ講座」の微笑ましさといったらどうだ。グラン・トリノをデートに使えという、あの誇らしげな満足げな顔はどうだ。
しかし彼は自身が正義と信じて起こした安易な行動により、逆に大事なものをチンピラ達に壊されてしまう。戦時中コリアンに対して犯した罪に同じくオレはまたも間違いを犯したのか。しかし結局彼は神には懺悔することはなく、地下室に閉じ込めたタオの前で懺悔にも似た言葉を吐く、「オレの手はそういう血で汚れている」。そしてあくまでも自分の正義に則った実存主義を貫き通すことで復讐を果たす。これがオレの生き様だ、よく見ておけタオよ。しかしその方法はもうダーティー・ハリーのような「暴力には暴力を」ではなかった。過去へのそして現在への贖罪を果たしウォルトの魂が救われた瞬間だった。さらにその意志はグラン・トリノを通してタオに引き継がれていく。
やーん、かっちょえぇやん。(≧≦)ノノノバシバシ
結局これって「オレはかっこいい死に際を探していた」って事でしょ。でもギリギリのところでジイさんの自己満足に陥っていない、絶妙!でもこれって男だけが分かるマスターベーション映画かもしれん(ジイさんだけに (c゜ε゜c)ププ)。女性にも感想を聞いてみたいものだ。尊厳死という意味では『ミリオンダラー・ベイビー』にも通じるものがある。
ところで最近のイーストウッド作品がスゲエって思うのは、映画の題材として人間の中にある重厚な命題に真正面から向き合い、ちゃんと彼なりの答えを出しているところにあると思う。よくある問題提起をして観客に考えさせるような玉虫色映画では決してないところに強く惹かれるのだ。(たとえその答えに納得いかなくともね。)
これ『ダーティー・ハリー The End 』ってしても面白いかも。
イーストウッドが好きだった人、オススメ。男泣きに泣け!それ以外の人には保証しかねるけどw
評価:★★★★☆
一つだけ難を言えばタトゥーが「家庭」ってのはなんとも…w
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