明るいときに見えないものが暗闇では見える。

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【ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ】 ひきこもらず

2009年04月22日 | 映画
【ネタバレ注意】

ひきこもり系作家として有名な滝本竜彦氏のベストセラー小説の映画化。
『悪魔のいけにえ』崇拝者のボク的には、題名に"チェーンソー"と入っているだけで"観賞すべきリスト"に入ってしまったりする(^_^;

平凡な高校生陽介の前に現れたセーラー服の美少女 雪崎絵理。彼女は夜な夜なチェーンソーを振り回す不死身の怪物と戦っていた。人生の目標もなくなんとなく生きてきた陽介。なぜだか彼もその闘いに巻き込まれていく。二人は何のために戦っているのか。とにかく奴を倒すことが僕らの生きる意味。。。

プロットだけ聞くとオタク系映画?という感じがあり、それだけで一般の映画客には避けられてしまいそうなところではあるが、アニメでなく実写で映像化したところが万人向けになっていてよかったと思う。

エンジン音をうならせるチェーンソー男。「私が悲しくなればなるほど、アイツは強くなるんだよ。」 絵理は突然の交通事故で家族を失った。チェーンソー男と彼女の闘いは、彼女の「死にたい」という想いと「生きたい」という想いへの隠喩(メタファー)となっている。彼女の心の悲しみが大きくなればなるほど、死への願望が強くなる。

陽介は無駄に学生生活を送っている高校生。多勢に同じく生きている意味、人生の目的が見出せない。そんな中、親友の能登がバイクで事故死する。陽介にはそんな死がやるせないのと裏腹に彼が何かスゴイコトを成し遂げたように感じていた。アイツには追いつけない。そんな中、命をかけて闘う絵理に出会う。彼はセーラー服の美少女を守ってカッコよく死ぬことに憧れを感じる。「俺は、最高のエンディングを求めていた」


チェーンソーのエッジのようなギリギリの場所(心理)で必死に生きる絵理と、ダラダラとなんとなく幸せでいいのかな?というネガティブパッピーに生きる陽介。正反対の方向に生きる意味を見失っていた二人の心が呼応し、共に心を通わせ闘うことによって本当の「生」とは何かを感じていく。


脚本はまだ相当練り直しが必要ではないかと思わせる荒削りぶりで、もうちょっとがんばってほしかった感あり。たぶん大半の方は観終わったあとモヤモヤ感ありで、伊藤四郎さんにスッキリさせて欲しかったのではないだろうか。ボクもだいぶ脳内補完して、こんなこと言いたかったのだろうと納得させている感じ。編集もあのレベルなので人によっては愚作扱いにもなろう。しかしひとつ間違うと重たくなりがちな主題をこれでもかというすっとんきょうな設定の上で軽々と描ききっており、目新しいチャレンジ作品として非常に興味深かった。

これまで滝本竜彦氏の作品は「NHKへようこそ」だけ読んでいた。ひきこもりの大学中退の主人公が自分の不遇をNHK(日本ひきこもり協会)という組織のせいであるという妄想にとりつかれていくという、こちらはかなりオタクっぽい話。面白くはあるがネガティブ思考に嫌悪感を抱くかもしれない。 今回の「ネガチェン」は題名こそ「ネガティブ」が入っているが、かなりポジティブな映画。原作を読んでみたが、心理描写など映画以上に深く書き込まれており満足はしたのであるが、残念ながらこっちはネガティブ作品だった(^_^;。 滝本氏は心底ネガティブな人なのだろうか。

これまであまり好みではなかった関めぐみ。体を張ったアクションがとてもカッコ良し。そして主人公の親友役である浅利陽介の飛びぬけた個性がすごくいい。これから注目株。 彼の顔がジョン・キューザックに似ていると思っているのはボクだけだろうか。


評価:★★★☆☆

期待してなかっただけに拾い物。


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