明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
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【鉄男 THE BULLET MAN (2010)】

2011年05月14日 | 映画


最初に第一作目の『鉄男 TETSUO (1989)』を観たときの衝撃は忘れられない。

高校生の当時、テレビの深夜番組(たぶん「トゥナイト」)の映画特集でたまたまあの映像を観せられた。モノクロの画面の中で鉄に侵食されていく男。コマ撮りで宙に浮きながら疾走しながらのバトル。股間に生えるドリル。そしてなによりあの激しいビート。とにかく「なんじゃこりゃあっ」と頭をハンマーで殴られたような気分だった。今までに観たことのないもの、関わってはいけないのではと思わせる危険な淫靡さがそこにはあった。荒削りすぎるその映像の稚拙さは駄作ギリギリのようにも思えたが、そのほとばしるパワーに圧倒されたボクは、地方都市ではやらないその映画をずっと観たい観たいと潜在意識の中で想い続けた。


ほどなく『鉄男 TETSUO (1989)』はビデオでの観賞が叶い、『鉄男Ⅱ BODY HAMMER (1992)』ははるばると劇場で観た。なんだかよくわからないその映像と音に惹きつけられ、以後『妖怪ハンターヒルコ』やら『バレットバレエ』やらとほとんどの塚本作品は見続けることとなり、まあ観るたびに「なんじゃこれ」と思いながらもその世界感にはお付き合いさせていただいている。


ところで先日『GANTZ』で気の弱いオッサンを演ずる田口トモロヲを見て、「あんた変わったね」と思っているボクは、もうオッサンなのだろうね。あの人そんな人じゃないんだよ~(^m^)。劇場映画初主演が『鉄男 TETSUO』なのです。昔ヘンな映画ばっか出てなもんなぁ。『ギニーピッグ2』やら『オールナイトロング』やら(それらを観ている自分も相当ヤバい--;)。そしてなぜプロジェクト-Xなのかっ!ってか、これもトモロヲがやればいいのにっっ!




閑話休題。で、満を持してというか、今さら?の『鉄男 THE BULLET MAN (2010)』。DVDで観賞。映画をむさぼって観ていたあの頃の懐かしさを思い出ししばし感激。これは確かに『鉄男』だよ。ああ懐かしい。

なぜ彼らが鋼鉄の肉体へ変貌してしまうのかの謎が解かれて面白い。主演に外国人を据え全編英語で進んでいく展開も目新しくて面白い。鉄キグルミの完成度や特殊効果のレベルも上がっていて面白い。


でも“面白い”ってのは『鉄男』としてはちょっと違う。


この作品から初めて観た人には、ボクが当時感じた「うわ、なんじゃこりゃあ」の衝撃はあるだろうと思う。確かにそのぐらいのパワーはある。正直意味ワカンネぇし、安っぽいしと『鉄男』らしさもある。でもやっぱりキレイにまとまりすぎているのだと思う。

これは世界を視野に入れて制作された『鉄男』らしい。つまりはそれってメジャー化を目指したということ。つまりボクがこの映画に感じているのは自分のお気に入りのインディーズバンドがメジャーレーベルでデビューしてしまったような寂しさなのだろうね。「あの頃の粗い感じが好きなのよ」的な。でも『鉄男 TETSUO』が世界で高く評価されたのはインディーズだったからなんだよね。。


なんてこといいながらも結構楽しんで観てることは確か。

あいかわらずの暴力的なビジュアルとサウンドで、脳みそに腕つっこんでガタガタいわせたろか感は健在。

ただね。、なんかで塚本監督も言ってたのだけど「『鉄男』ってのは"ライブ感"」なのだそうだ。話の中身なんかよりもあの爆音と目まぐるしい映像に身を委ねて観るのが本来の見方。そういう意味でも家で小さな画面で観賞という愚行を冒してしまった自分が残念でならない。ってか劇場上映当時は地方にいて観られなかったのだよぅ(T_T)


興味ある人には一度この塚本ワールドは体験して見て欲しいのだけど、完全にカルトの文脈で語られる系の映画なので、普通の人が観るのは要注意です。


ところで不意に福居ショウジン監督のことを思い出した。東京出てきてすぐに観に行った『ラバーズ・ラバー』が懐かしい。塚本監督と双璧をなす同じテイストを感じる監督だったのだけれども、今何されているのでしょう。



■『鉄男 THE BULLET MAN』予告編(Youtube)

評価:★★★☆☆


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