明るいときに見えないものが暗闇では見える。

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【ウォッチメン】 ボクにはアレ、鼻水に見えます・・・

2009年10月13日 | 映画



『ウォッチメン』をやっとこさ見た。
実は早々に原書を読んで待っていたのだが、その時点ではあまり面白さを感じられなかった。評判のワリには、へぇ~なるほどねという感じ。とはいえ英語を100%理解できているわけでもなく(たぶん40%)そもそも難解なオハナシなので、細かい意味を把握できていないためその程度に感じてしまうのだろうと思っていた。そして今回映像化された本作を見ることで、なんとなくいろいろなものが見えてきた。

この原作コミックって日本に例えると『アップルシード』や『攻殻機動隊』などの士郎正宗なマンガなのだと思う。難解なマニア向け作品であると同時に、それぞれのコマひとつひとつにさえ個別の意味を持たせてある・・・ように見える。街の人々のつぶやき、看板、新聞の見出し、小道具などモノによっては本編への関係性にも疑問が残るほど多彩な情報を詰め込み、その濃密な意味を探ること自体を作品の楽しみに昇華させている。また同時にそれが作品全体の醸し出す雰囲気をカタチ作っていく。さらに読者は(もしかしたら意味のないかもしれない)それらのディティールをさらに深読みすることで、その作品を自分だけの想像の領域に拡大し、ついには神聖化する人まで現われる。それが良い悪いということではなく、つまりはそのように楽しむ作品だ、ということだ。そのため英語ネイティブでないボクには残念ながら原作をそこまで楽しむだけの技量はない。

で、本作『ウォッチメン』はその性質上、映像化された時点で濃密さは薄れてしまいその面白さは半減してしまう。いやザック・スナイダーは本当によくがんばっていると思う。原作に忠実ながら微妙な端折りや追加、入れ替えにてある意味これ以上の映像化は無理ではないかというレベルまで良く作ってある。コミックであるがゆえ映像とは親和性も良く、オープニングのコメディアン落下シーンはさすが『300』の監督だと魅入ってしまう。ただやはり行間に漂っていた<何か>は失われれてしまっているようだ。

ではディティールを削り落として見えてくるストーリー本編はどうだろう。残念ながらこちらは当初原作を読んで思った感想に同じだ。"ウォッチメン<監視者>"と呼ばれたヒーロー達は実はただの人間+αの自警団であり、ヒーローと言えどもそその人格、政治理念等によりその正義は変わってしまう。そんなヒーロー達を誰がウォッチ<監視>できるのか、という斬新な設定は興味を惹くが、それ以外はなんだか突拍子もなく詰めも甘い。

最も寒いのはDR.マンハッタンがあの程度のことを「奇跡」として人類を助けに戻ってしまうこと。彼は自身が粒子分解できる存在になったことですべてを神のレベルから捉えていたはずだ。人間の存在や争いなど宇宙的視点で見れば諸行無常で意味はない、よね?(『地球が静止する日』も同じ寒さ。)

好みだったのはロールシャッハのキャラクター。
実は悪を暴力で制圧するただの危険人物とも言えるが、唯一最後まで妥協をせず自らの正義を貫いた。見た目のダークヒーローさもステキだ。
ただ幼女誘拐犯を直接その手で裁くゴア描写は原作と違っており本来のロールシャッハ像を歪めており不満であった。

なんだかイロイロ能書きを垂れてしまい申し訳ない。
ま、こういう映画、単なる好みなのでしょうなぁ。あとはそれなりのバックボーンがある人向けの作品だと思われ。アメコミ好きであること、もちろんその上で原作を読み込んでいること。冷戦以降のアメリカの歴史にある程度精通していること、そしてできればネイティブスピーカーであること。普通の日本人としてはかなりハードル高いですなぁ(= =)


評価:★★☆☆☆

原作読んだ人にはススメます。


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