高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

タヌキ学 感想

2015-10-05 21:13:10 | 私の著作
ありがたいことに多くの感想をもらっています。そしてその多くは好意的なものです。そうでないもののうち、建設的なものについて私の考えを書いておきます。

読書メーター

Satomi (2016年7月12日)
タヌキだけでなく、野生生物との共存について考えさせられる本でした。3.11で津波の被害を受けた自然は、意外と早く立ち直りつつあった。けれども、復興工事でせっかく生えてきた植物や戻ってきたタヌキがいなくなってしまったそうです。物事は、いろいろな側面から正しく理解して、考えないとダメですね。

涼色桔梗(2016年6月5日)
「けものへん」に「里」と書いて「狸」ってくらい、タヌキは人里に近くないと生きられない野生動物。アライグマでもアナグマでもハクビシンでも無いから注意。野毛山動物園でみんな並んでるから見比べると吉。糞の山から生態を研究するのは、好きでも大変そう…

小鳥遊小鳥(2016年5月26日)
まず、巻頭の写真が可愛いです。秋のタヌキってこんなに太るのね…… 著者は生態学の専門家ですがタヌキのイメージについての説明もわかりやすかったです。

ムージョ(2016年4月19日)
タヌキの生物学的説明からイメージの変遷。そして今日の生息環境の問題と一通りが学べる本。タヌキに関するイメージが実物とはずいぶんかけ離れていることが興味深い。身近な動物でありながら実はそれほど人と接触してこなかったということか。信楽焼きのタヌキがわりと最近個人が作ったというのも驚き。タヌキが食べる果実がどれも美味しそうでちょっと食べてみたくなった。著者は交通事故に対策がなされていないというが、町田には20年以上前からタヌキ道が作られている。使用状況は不明だけど。事故調査の際その話は聞かなかったのかな。

とりぞう(2016年4月13日)
「タヌキは同じイヌ科のキツネに比べると四肢が短く、太っている」なんていうあたりまえ(?)のことから、「アナグマはタヌキに似ているが、実はイタチ科」なんていうちょっと使ってみたくなるフレーズなど。「タヌキ学」があるのかどうか知らないけれど、タヌキのみならず動物好きには必ず得るものがある本。

みそ(2016年3月31日)
可愛い挿絵に惹かれて手に取った。中盤以降は調査記録的な記述が多い気がした。今日のタヌキのイメージがどう作られていったかという推理は興味深かった。

asiantamtam(2016年3月23日)
本一面タヌキタヌキとタヌキがゲシュタルト崩壊。タヌキが普通に生きていけるような里山が残っていったらいいのになあ。

ソラ(2016年3月18日)
タヌキには、どこか惚けていて親しみがわくイメージがある。本作では、昔話でお馴染みのタヌキを、食性や生態を分かりやすく述べられており、筆者のタヌキ愛が伝わってくる。意外だったのは、環境への適応力で、大都会でも生息していける種としての強さに驚いた。人間が生活範囲を広げていくにつれ、動物たちの棲家はどんどん狭められていったが、上手く生き残る術を身に付けた、まさにタヌキ親父的な立ち回り方は自分が持つタヌキの印象とはかなり違っていた。環境破壊が進み、これ以上タヌキ達が住む場所を追われる世の中にはなって欲しくないなあ

tall_hemlock(2016年3月16日)
シカが専門の方のタヌキの本で、生態学的なことだけでなく文化にも結構触れていて興味深い。東日本震災の後にタヌキが戻ってきた話も。  読み終わった翌日にロードキルされたタヌキ…通り過ぎざまにちらっとしか見てないからタヌキかハクビシンかわかんないけど、に遭遇してちょっと見につまされる思い。でも、「タヌキのための道を作った話は聞いたことがない」とあったけれど、「平成狸合戦ぽんぽこ」の頃にどっかでタヌキ道(車道の上だか下だかに設けたタヌキ横断用の通路)作ったという話はあった気がするなあ。

ayukaeru(2016年3月16日)
タヌキ愛にあふれている!イラストが非常にかわいらしい。タヌキ好きだ〜なんて健気なんだろう。そんな思惑なんて意に介さず、タヌキたちは淡々と生きているのだ。

木崎智行(2016年3月8日)
人間にどんなイメージを持たれるかは、その動物の生存に対して大きな影響を与えます。タヌキはどうでしょうか。ぽんぽこ腹鼓のポン太でしょうか。カチカチ山の残忍なタヌキでしょうか。人を化かすいたずらもの?やっかいなタヌキ親父?老練な古狸?タヌキ顔のおっとり優しいあの娘?たんたんタヌキのぶーらぶら?タヌキほど多彩なイメージを持たれている野生動物は他にいないかもしれません。なぜそんなにたくさんのイメージを持たれるようになったのか。日本人の暮らしの変遷や生態などから著者が考えます。他の野生動物が姿を消していく中、逞しく

夜兎(2016年3月7日)
たぬきがマイブームなので読んでみた。付かず離れずの関係でたぬきと暮らしていきたい。毎日餌をもらいに訪ねてくるけど、決して触らせないし一定の距離を保ち、餌を貰ったら少し離れた場所で食べる、みたいな。自然との共生という意味でも、付かず離れずのたぬきを。

詩ごとのblog(2016.3.5)

これはかわいらしくも、まじめでおもしろい本なのですね。
私はタヌキについてほとんど知らないけれど、
読めます。

イヌ科である。
というような、非常に基本的な情報からはじまって。

周囲の環境に合わせて、柔軟に餌を選ぶこと。
そのため、「これしか食べられない」
「これがなくなったら生息できない」
ということが、あまりないようなのです。

都市部でも見かける(私は見かけたことがありません)理由は
そのあたりにあるようですね。


しかし、やはり胸が痛むのは
交通事故で命を落とす件数が、多いということです。

とにかくざっとでも読んでみると、
あたりまえのことではあるけど

命は自然という舞台があってはじめて存在すること、

自然とは、人工物の対義語であること、

などが理解できる。


理解だけじゃだめということも。


都市部にもっと緑地を増やしたいと
やはり思うようになりますね。

ただ、緑地っていっても、
小さな緑地が途切れ、途切れにあるようでは
野生の動物たちのすみかとして不十分なようです。


というのも、
ある程度の距離を移動することが、彼らには
必要だから。


都市部になんらかの手を加えるときには
(例えば川沿いの土地をどう処理するか)、

人間以外の命が、ひきつづき生きていけるように
考える必要があると思います。

そのとき、必ずしも人間にとって
便利な結果だけを望むわけにはいかない。

そこがたぶん、いちばん人々を納得させにくいところでしょう。

先入観とか誤解とかによって
かえって不自然な環境、つまり人工的な環境を作ってしまうことも
ありますよね。

整備という名の、破壊です。


自然とは、お庭のお花畑のようなもの。
そういう先入観をもっている人が、多いのではないでしょうか。


よくよくまわりを見ると、そんなカラフルなお花だけが
集まって咲いている場所は、
あまりないはず。
しかも、なぜか外国原産のお花を
植えたがる人が多いのは、
いったいあれは、なぜでしょうか。


本来の自然とは、
もっと地味なものだと思いますね。
枯れたものは枯れたまま
季節が巡ってくるまでそこに放っておく。

その方がいい。

野々ゴリラ(2016年2月26日)
 タヌキについての入門書であり、イラスト付きでわかりやすく説明されています。本書はタヌキの基礎データから始まり、世間でのイメージについて、自然環境との関係、人と社会との関わり、と続きます。本書を読むと、タヌキは都会でも被災地でも生息できるたくましい生き物であることがわかります。しかし現代日本のように経済成長ばかりを優先し自然を破壊すれば、そのタヌキさえ生きていけなくなってしまうのではないかと、著者は最後に警告します。

魚京童!(2016年2月21日)
誠文堂新光社の栁千絵さんとは何度も議論し、ときに意見がぶつかることもあったが、よい本にしたいという思いは一致していた。

shiropiyo(2016年2月16日)
タヌキに思い入れがあるので手に取ったのですが、非常に楽しく読ませて頂きました。本書の中で高槻先生のタヌキ愛(?)が想定外のユーモアを生み出しています。

たくのみ(2016年2月14日)
タヌキのことに詳しくなる、というよりタヌキ雑学の入門書。キツネ、アナグマ、アライグマに比べ、世界での分布は狭い(アジアの一部)。震災後のタヌキの復活ドキュメント、ちょっと上から目線の問答解説Q&Aは読みにくいけど、画像が豊富で絵が可愛い。身近なだけにあまりにも知らないことが多かったタヌキ。ユーモラスな彼らの写真で癒されたい人にはピッタリです。

かい(2016年2月13日)
キャラクターとして、野生動物として、タヌキを解きあかした一冊。とはいえ「入門」とつく上に著者の専門は生態学なので、そちらがメインの本である。キャラクターとしての参考文献はほとんどあげられていない。それにしても挿し絵がかわいい。

yamakujira(2016年2月11日)
第4章の「東日本大震災とタヌキ」に、震災からまもなく5年を経た時期に発行する意味を思う。壊滅した沿岸部に戻ってきたタヌキが、防潮堤工事で追い払われる現実を嘆く。田老の被害を見れば愚行を重ねているとしか思えないのに。最終章の「タヌキと私たち」では「玉川上水とタヌキ」が近所の話題なので興味深かった。でも、グラフと本文の記述にズレを感じたのは理解不足だろうか。読んでみると、なるほど、タヌキという感じが獣偏に里と書くのが頷ける。生態については物足りないけれど、書名が「入門」だからね。

ㄜƕ(2016年2月6日
タヌキはイヌ科!!!!!

Daisuke Azuma(2016年2月2日)
タヌキの生態だけでなく、文化的な面からも考察されていて、化かすイメージ、狐と比べて間が抜けたイメージ、タヌキおやじのイメージ、等考察されていて面白い。生態のところも楽しく読めた。しかし震災でいなくなったタヌキが戻ってきたのを研究することで被災者を励ましたいみたいなくだりはどうかと思うし、あまつさえせっかく戻ってきたタヌキが防潮堤の工事で追い払われた、と批判的に書くに至っては神経を疑う。タヌキをかわいいのかわいくないのと言っていられるのも日々の生活が安定してあってこそで、そこをはき違えてはいけないと思う。

高槻:私の主張が理解されていないようで残念です。まず震災で被害を受けたタヌキが戻ってきたこと。このことで被災者が勇気付けられると思うことが「どうか」ということの意味が私には理解できません。それはふつうの感覚ではないでしょうか。あれほどの災害を受けながら植物も昆虫も鳥もけものもしっかりと生をまっとうしていることは、私にはいのちのすばらしさの象徴のように思えます。
 このことと、堤防工事のことはまったく別の話です。私は津波を防潮堤で防ぐことには、たくさんの意味で批判的です。これについて同様の結論に達した研究者は数多くいます。日本列島は本質的に津波を宿命のように受けるのです。まさに「日々の生活が安定」するためには、防潮堤を作るという、自然をねじ伏せるような姿勢は日本列島では逆効果なのです。東日本大震災はそのことを学ぶ最大のチャンスであったにもかかわらず、まったく学ぶことをしないで防潮堤を作ることに私は批判的です。なぜ「神経を疑い」ますか?論理的に書いてほしいものです。研究者は行政のすることを賛同するものだとお考えでしょうか?申し訳ありませんが、それはまちがいです。自分の研究の結論から批判すべきとなれば批判する、それが科学者の態度です。私は日本列島で日本人が暮らしてゆくには、自然に立ち向かうのではなく、自然とおりあいをつけることが肝要だということを半世紀の研究人生で学びました。この本にもそのことを書いたつもりですが、残念ながらこの方には読み取ってもらえなかったようです。


しぇるぱ(2016年2月1日)
シカと植物群落との関係を研究するのが得手のようです。当然、シカ、クマ、タヌキなどとも親しい。根が真面目な人なんでしょうね。懸命に面白くしようと筆を掻き立てているが、面白くない。東北大学で学んで研究生活に入ったのだそうです。後に東大で教授してます。東日本大震災が起きました。海岸は津波で破壊され、植物は塩害で枯れました。タヌキの溜め糞があると聞き、調査に赴きました。植生は回復し、タヌキも戻ってきました。巨大堤防を築く工事が進行し、溜め糞は重機で蹴散らされました。タヌキは再び海岸から追い払われました。

高槻:不思議なことにおもしろくない本を最後まで読まれたようです。根が真面目なひとなんでしょうね。ふつうのレトリックであれば、おもしろくないといったあとに、その理由を述べることで説得力をもたせるのですが、この人はただ目次を写しただけのような記述をし、感想が書いてないため、読む人を納得させることに成功していません。

Saku(2016年1月23日)
狸のことを知らなくても、生きて行く上では全く支障がないのだけれど(笑)この本では狸の生態だけでなく、人を化かすとか腹鼓を打つとかどこか抜けているとかっていうイメージが付いたのは何故かという観点からも 語られているのが面白い。意外に都会にも狸は棲息しているというのに驚き。読み進めていくうちに狸に親近感がわいて、3.11で被災し居なくなった狸が戻ってきたところで、帰ってこれて良かったね狸!ってなった。

あんこ(2016年1月23日)
「ケモノヘンに里と書いてタヌキと読みます。人にとって身近な野生動物です。ほんとんどの東京23区で生息が確認されています。」えええっ?うちの近所では見たことないぞ。でも、もしかしたらいるかもしれないタヌキは、あらためて見るところころしててかわいい。シティーダヌキの生態についてもうちょっと知りたくなった。

ささ(2016年1月21日)
たぬきかわいい。意外に知らない狸というものに少しばかり迫れた気がした。質問コーナーは誰かから寄せられたものなの?寄せられたものに対してなら、辛辣すぎやしませんか?

高槻:最近の若い人の反応でおもしろいのは、大人にきついことを言われたことがないものだから、正論をきちんというだけで「辛辣だ」「きつすぎる」「上から目線きらい」などということです。もし世界の同年代の人と交流するつもりなら、それではまったく通用しないことを覚悟してください。こういうふうにしてしまったのは私たちの世代の責任で、まことに申し訳ないことです。

Book Hunting

帰り道、住宅街の物陰から、ひょいとネコが出てくる。だが、ネコにしては歩き方がおかしい。しっぽも太い。なんだ、タヌキじゃないか。という程度には、タヌキに化かされたことはある。こんなふうに身近にいるといえば、タヌキは身近にいる。しかし詳しいことは、ほとんど知らない。いや、知っていることなど皆無に等しい。ここはひとつタヌキ学に入門とくか?

そして、タヌキといえば、キツネである。内山節の『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』は、べらぼうに面白かったので、タヌキも同じように面白いことを期待する(安直)。なお、2月10日に荻上チキのラジオ番組「Session-22」に著者の高槻が出てた。音声はこのリンク先から聞ける。かなり渋い声してる。

里山はもちろん、東京23区のほとんどで生息が確認されている一方、その生態はほとんど知られていないタヌキ。

どこにすんでなにを食べているのか、どうして化かすと思われたのかなどの基礎知識から、津波後の仙台湾にヒトより早く戻ってきた話など、野生動物の専門家がひとつひとつわかりやすく解説。

タヌキへの親しみと敬意を与えてくれる一冊

投稿者 dynee 投稿日 2016/1/8

生態学を専門とする筆者ではあるが、本の内容は人間から見たタヌキの文化的イメージなどにも触れており、タヌキを網羅した内容となっている。3.11後のタヌキの糞の組成を調べた記述は非常に興味深く、彼らの逞しさに改めて驚嘆するばかりである。また添えられたイラストも非常に愛らしく、まさにタヌキ学入門の名を冠するに相応しい入門書である。

深夜放送
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シカ問題を考える 感想

2015-10-05 09:50:47 | 私の著作
読書メーター


科学に佇む(2016年7月10日)
複数シカ本をあたった中でこれがまずイチオシ。手軽な新書で、全方位目配りで、濃い。ほかには『シカと日本の森林』『シカの脅威と森の未来』『世界遺産をシカが喰う』などがあるが、おおむね専門書仕様が過ぎて一般の入門には推しづらい。

イグアナの会 事務局長(2016年6月28日)
急激にシカが増えたことで、山が壊れていく。農作物への被害。林業への被害。生態系の変化。。。シカが急増の原因は、森林伐採によるシカの食糧増加、牧場の増加、暖冬、ハンター数の減、オオカミの絶滅。。。。いいテーマだし、よく調べられていると思うのですが、、、ロジックツリーが見えづらく、読みづらい。なんで、著者が何をおっしゃりたいのかが、研究者でない私にはよくわからない。

MOKIZAN(2016年6月27日)
この四半世紀で鹿が急増し、様々な懸念事象が発生している。とくに食害により、森林の世代交代は勿論、最早不毛地帯と化し、地盤崩落の危機に陥っている地域が増えているとのこと。同様のケースは、とうに無人島になった島で、住民が置き去りにした山羊が繁殖、やはり食害で草木が繁らず地肌が露出し、風雨の度に土砂が海岸伝いに流出している画像を見たことがある。林野庁あたりで、もみじ肉の普及国家プロジェクトを立ち上げ、意義ある鹿捕獲策を検討、着手しませんか。それとも浅草あたりで、鹿革なめす?にしても本書あとがきは秀逸と感じる。

光影光(2016年5月7日)
タイトル通り、近年、ようやく問題視され始めたシカ問題について書かれているのですが、シカ問題を通して、自然の営みについて、我々人間について考えさせられる本でした。

yamakujira(2015年12月29日)
各地で問題視されているシカの食害と対策について考察する。高山植物が食われ、草原が裸地化して、斜面が崩落するなど、自然環境に与えるシカのインパクトは座視できないほどだと、あらためて驚愕した。オオカミの絶滅、積雪量の減少、狩猟圧の低減、山村の過疎化など、さまざまな要因が一気に噴出した感じだね。シカ柵の設置で凌ぐのも限界となった現在、当面は心を鬼にしてシカを駆除するしかないだろう。環境省が主導して、啓蒙活動と並行しながら都市住民の非難を怖れずに、思い切った駆除対策を施してほしい。

now and then

シカ問題、つまりニホンジカが増えすぎ、日本のあちこちで被害が出ている問題のことなのですが、前から関心があるので、関連した本をこれまで何冊か読んできました。
しかし、著者の高槻先生が冒頭で書かれている通り、どちらかというと研究発表的な難しいものばかりでした。そんな中で、長年シカと植物の関係を研究されてきた高槻先生が、一般の読者向けに書いた新書です。
シカの被害…と言うと、農作物への被害を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際はもっとグローバルに森林・山地の植物への被害が深刻になっています。
急増するシカの話で真っ先に出てくるのは、今や石巻市内ということになった金華山のシカの話。現在あの小さな島に400頭のシカがおり、これはかなりの高密度なのだそうです。そのため、慢性的なエサ不足で、島の植生にも大きな影響を与えています。
農作物への被害はわかりやすいですが、森林の植物への影響は、都市部に住んでいる私たちには日頃目にすることがないだけに、日本全国そんなことになっているとはと思うほどのもの。先生は「森を食べ尽くす」とまで書かれています。植物に影響が出ると、森に住む他の昆虫や動植物にも影響が広がるというわけです。
後半は、なぜこれほどまでにシカが増えてしまったのか、原因と思われることを1つ1つ考察していくのですが、諸説あるもののズバリの正解は浮かんできません。それは複合的な要素もあるからですが、最終的には日本の農村社会の崩壊が招いたことなのではという結論に達しています。


趣 深 山

『シカ問題を考える』高槻成紀著 山と溪谷社 2015年12月25日初版

著者は動物生態学、保全生態学を専攻してきたが、今日のシカ急増の背景を動物生態学から説明しよう試みたが、どの要因でも十分に説明できない。

1 森林伐採による食料の増加
2 牧場の存在
3 地球温暖化による暖冬
4 狩猟圧の低下
5 オオカミの絶滅

そして 著者の手には余る大きな課題として
6 農山村の変化
に 大きな要因があるのではないかと論じている。

「かつての農山村は人がたくさんいて、密猟を含む野生動物の頭数抑制や徹底した草刈りが行われたから、草食獣にとっての食糧は乏しく、身を隠すところもない、近づきたくても 近づけない場所であった。」


実際 かつての山村は人が溢れて 活気があった。
きれいに手入れされた田畑は動物の入るスキがなかった。
しかし いまでは 山村では 人口が減少し 耕作放棄地 廃屋 人手の入らない里山、山林が いたるところにも 野生動物が闊歩している。

シカ問題解決に向けての 取り組みも 本書のなかで 紹介されているが 著者の動物生態学の立場だけでは どうにもならない 山村の活性化の課題を提起している。


http://blog.goo.ne.jp/shumiyama/e/9eaa1c31ba8a75cfc83b7f1a192db497

16.1.28
【書評】●高槻成紀著『シカ問題を考える』●
     ~バランスを崩した自然の行方~ ヤマケイ新書

 乙女高原でお世話になっている高槻さんがまた,本を出されました。すごいペースです。
 高槻さんの本は、このメールマガジンでも何回か紹介しました。
 メルマ319号で紹介した『唱歌「ふるさと」の生態学』
  http://fruits.jp/~otomefc/maga319.html
(ヤマケイ新書)もそうだったのですが、今回のこの本も、このテーマで書くとしたらた高槻さんが一番ふさわしく、しかも、書くことが一番求められているの
は「今」だよなと心から思える本です。

 この本は,今,日本中で問題となっているシカの急増に伴う自然保護問題を解説した一般の人向けの本です。今,シカ問題を知らない人のほうが少ないと思います
が、シカが増えることによって、そこの自然にどんな影響があるのか、その影響をどのようにして「見とる」のか、そもそもシカとはどんな動物なのか・・・など、シ
カ問題に対峙するための基本的な知識と、向き合うさいの立ち位置や考え方の方向性を示唆してくれる本です。
 たとえば、シカが増えるということは、その土地の土も問題を抱えてしまうし、花だけでなく虫にまで影響が及ぶし、森林の更新にも影を落としてしまいます。ま
た、シカの増加が害になる動植物ばかりかと思えば,シカがたくさんいた方が生存に有利に働く動植物もいます。具体的に、どんなことが起きているか想像がつきます
か?

 この本には高槻さんと麻布大学野生動物学研究室の皆さんが乙女高原で行ってきた調査観察の成果も書かれています。見慣れた写真も出てきますよ。私たち乙女高
原ファンにとっては、それもこの本の魅力のひとつです。

 シカが急増した「背景」には何があるのか?も考察しています。森林伐採による食糧の増加? 牧場の存在? 地球温暖化による暖冬? 狩猟圧の低下? オオカミ
の絶滅? それぞれについて疑わしい点、それだと断定すると出てくる矛盾点について分析し、最終的には農山村での暮らしのあり方の変化であると言っています。

 シカ問題は、乙女高原でも顕在化し,最近,シカ柵を作ってもらったばかりです。多くの人でシカ問題を考え,そのよりよい解決方法を探っていくためにも、ぜひご一
読をお勧めします。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
16.1/1
『シカ問題を考える』高槻成紀著 山と溪谷社 2015年12月25日初版

著者は動物生態学、保全生態学を専攻してきたが、今日のシカ急増の背景を動物生態学から説明しよう試みたが、どの要因でも十分に説明できない。

1 森林伐採による食料の増加
2 牧場の存在
3 地球温暖化による暖冬
4 狩猟圧の低下
5 オオカミの絶滅

そして 著者の手には余る大きな課題として
6 農山村の変化
に 大きな要因があるのではないかと論じている。

「かつての農山村は人がたくさんいて、密猟を含む野生動物の頭数抑制や徹底した草刈りが行われたから、草食獣にとっての食糧は乏しく、身を隠すところもない、近づきたくても 近づけない場所であった。」


実際 かつての山村は人が溢れて 活気があった。
きれいに手入れされた田畑は動物の入るスキがなかった。
しかし いまでは 山村では 人口が減少し 耕作放棄地 廃屋 人手の入らない里山、山林が いたるところにも 野生動物が闊歩している。

シカ問題解決に向けての取り組みも本書のなかで紹介されているが、著者の動物生態学の立場だけではどうにもならない山村の活性化の課題を提起している。

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