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旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

お前の彼女は二階で茹で死に

2025-03-29 17:03:00 | 図書館はどこですか



「僕たちの青春はちょっとだけ特別」を借りに行った際、新刊本コーナーで
目について一緒にお借りしたのが「お前の彼女は二階で茹で死に/白井智之著」
です。2022年に文庫本化されたものが、最近になって図書館に配備になった
本のようです。イラストの可愛らしい少女は、ミミズ人間のリチウムなのか
それともマホマホなのでしょうか? いずれにせよ読書中はこの絵は頭から
切り離して読み進めたほうがいいでしょう、どちらの少女もイラストのような
ほのぼのとした雰囲気とはかけ離れ、過酷な運命を背負います。

妹のリチウムを死に追いやった者を探し出そうとする兄で刑事のヒコボシの
復讐劇に、それぞれの異なった事件が絡み合う二重構成で、事件解決のたび妹の
死の真相に近づくというのが大筋です。各エピソードタイトルが『ミミズ人間は
タンクで共食い』『アブラ人間は樹海で生け捕り』『トカゲ人間は旅館で首無し』
『水腫れ(みずばれ)の猿は皆殺し』そしてラストが『後始末』となります。
タイトルから内容を想像できる方はまずいないでしょうねえ。舞台は現代日本に
限りなく近い世界のようですが、そこにミミズ、アブラ、トカゲなどの特性を
持つ異端者が入り乱れる、異次元的な特殊設定下で事件が起こります。容易に
異世界などに転生、何でもありの世界観に親しんでいるアニメ好きなどのほうが
この設定には馴染みやすいかもしれませんね。やわらか頭でない方々だと端から
置いてきぼりを喰らうかも。

これまでも何度か触れているように、白井作品はけっしてお上品ではなく、相当に
エログロい内容が展開される(カバーイラストからはまったく想像できないような)
ので、人によっては拒絶反応を起こす恐れもあり、一般に広くお勧めするのは
難しいかもしれません。しかし、私のようにグロさに特別強い耐性があるわけで
ないにもかかわらず違和感少なく読めるのは、いつもながら白井さんの筆さばきが
ポップでライト、徹頭徹尾ドライタッチなのに尽きるかなと思います。でなければ、
あらすじや描写内容だけみると完全に有害図書指定? 実写映像化はまず不可能
ですし、アニメ化ですらも無理でしょう。

しかしグロい内容と相反するように推理は本格派、しかも多重解決は当たり前、
いくつもの解決パターンが用意され、それにより犯人、犯行手段などがコロッと
覆されるので、最後まで気が抜けません。主役級が途中あっさりいなくなったり、
あるいは犯罪を犯したりする主客転倒も常套なので、主役サイドに感情移入して
読むのもやめた方が無難です。この本でも、全編通しての主役であり探偵役で
あるはずの刑事・ヒコボシは、ミミズ人間の少女マホマホを拉致、監禁しており、
妹の死の真相に迫るという大義名分はあれど、正義とは真逆の立ち位置だし、
最初から意図したものではないにせよ、後輩の女刑事を結果的に殺害します。
「真の名探偵」で事件の謎を解くキーマンだと見られていたマホマホも途中退場
しますしね。


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