「対決」と同じ記事で紹介されていた「女の国会/新川帆立著」も順番が回り、
ようやく読むことができました。どちらも、現代日本の女性のおかれた立場を
端的に描いた作品で、とても読みごたえがあります。男性優位社会で、様々な
差別、ハラスメントに抗いながら奮闘する女性の姿を生々しく描いているのは
対決と同様で、諸外国と比べても男女平等が進んでいないとみなされ、特に女性
の政治参加の低さが顕著な日本の現状が、国会を舞台に浮き彫りにされます。
対決と違うのは、こちらはいくぶんサスペンス要素も織り交ぜ、女性与党議員の
死(自殺か他殺か? その原因は?)の謎に迫る、与党議員とライバル関係に
あった女性野党議員を中心に、第一章が彼女の議員秘書、二章が新聞記者、
三章が地方議員とヒロインを変えながら、それぞれの女性の立場、視点を通して、
事件を解決に向かわせます。各々の章が終わりに近づくにつれ事態は大きく動き、
事実が暴かれ、一瞬すべて解決したのかなと勘違いしますが、実はその時点でまだ、
総ページ数の半分とか三分の二程度しか進んでおらず、これはなかなか手ごわいぞ
と感じます。
それでも途中で、もしかして真相はこうじゃないかなと、事件の謎はヘボ探偵
でもそれなりに迫ることができました。謎解きのヒントらしきものを著者が
フェアに出してくれることもあるし、たとえネタがバレようともどうってこと
ないのを著者は心得ているから動じていないようなのです。謎解きはこの
小説の魅力の一部分でしかなくて、ブレない極太の本筋が貫かれているから
なのでしょう。
ミステリー部分の関心だけにとどまらず、政界で女性を含む日本のマイノリティ
がどのような不当な扱いを受けてきたかに鋭く切り込む本格派、世代を問わず
幅広くお勧めできる一冊です。
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