
今回図書館でお借りしたのが、「ミステリー・オーバードーズ/白井智之著」
です。少し前に、今度文庫本化され再発売されるとの記事を新聞で見かけ、
いい機会だし、読んでみようと思いました。私が借りたのは旧単行本版です。
白井作品は、「名探偵のはらわた」「名探偵のいけにえ」という、『名探偵』
シリーズのみ読んだことがあり、両作品ともとても面白く気に入ったのですが、
それ以外の著書は、かなりグロいと聞いていたので、手を出すのを躊躇していた
のです。この本も、なかなかに期待にたがわぬグロテスクさが全般漂っていて、
しかしそれよりも、よくぞこんなストーリー、こんなシチュエーション、こんな
トリックを次から次へと思いつくことにまず感心します。これを読んでしまうと、
あの名探偵シリーズが、ありふれた推理小説に思えてしまうほどです。
『オーバードーズ』という言葉、数年前ならこの意味からしてわからなかった
ところ、昨今ニュースで頻繁に報道されるうちに、すっかり馴染みましたよね。
この本には、過剰摂取を題材にした短編5編が連作のように収録されています。
私はこれまでに、ミステリーと呼ばれる分野の作品において、読書中声を上げて
笑い転げるなんて経験、記憶になかったのですが、この本の『げろがげり、
げりがげろ』『ちびまんとジャンボ』編でツボにはまり、途中笑いが止まらなく
なりました。これ、図書館で閲覧してなくて良かったですよ、周囲の人たちに、
間違いなく気味悪がられるよねえ。
白井さんはどういうわけか、「ゲロ」あるいは「ゲボ」に妙なこだわりがある
ようで、この本内でもたびたび登場する場面があり、名探偵シリーズでも
何度か出ていたと思います。関西ではゲボって言い方しないと思うんだけど、
関東方面などでは、こういう言い方するんでしょうかね?
とにかく、これぞミステリーって感じの不思議世界で、奇天烈な世界観に
ついていけないうちにするどい推理が連発され、置いてきぼりにされること
必至です。なにこれ? こんな現実離れしたこと起こるわけないじゃん!
と思っていると、いつの間にかそちら側の住人になっている、それが心地いい
のです。最初尻込みしちゃうけど、やがて病みつきになるんですよねえ。