旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

死仮面

2023-01-05 18:30:00 | 図書館はどこですか



復刻販売されている角川文庫版の横溝正史シリーズ、図書館でお借りした
第二弾がこの「死仮面」です。おそらくはこの一冊をもって、いわゆる
「金田一もの」に関しては、ほぼすべての書物を読み終えたことになると
思います(実は現時点で、あと数冊未読のものがあることがわかっているの
ですが、これはまたいずれかの機会に読めるはずなので)。

中学生~高校生当時の私がこの死仮面を手にすることができなかったのは、
昭和24年に計8回雑誌掲載されたうち、1回分(第4回分)が欠けたまま
発見されず、長期に渡りお蔵入り状態、発売が遅れたことが挙げられましょう。
で、結局見つけられないまま、本書の解説も担当されている中島河太郎氏が
その1回分を代筆する形で補填され、発表にこぎ着けたのがこのたびの
角川版の死仮面になるようです。

この話には続きがあって、後年、欠落していた第4回分が発見され、
春陽文庫版に収録されたとのことです。この完全版と読み比べてみたい
ところですが、残念ながら和歌山の図書館には所蔵されていないようで、
いずれどこかの図書館で巡り合えるのを心待ちにしたいと思います。


その死仮面、出だしのおどろおどろしさは最高なんですよね! 八つ墓村と
同時期に書かれたというだけあり、陰惨で、これはすごい事件になりそうだと、
震撼し、戦慄さえ覚えます。しかし途中から学園もの、少女の冒険小説風へと
シフトチェンジしてしまい、興味を削がれ、尻すぼみに終わってしまいます。
金田一耕助はそれなりの活躍を見せるものの、冒頭登場する磯川警部は
途中退場したままだし、舞台が岡山から東京へ移るのも、仕掛けがが華やかに
なりすぎてしまう、その遠因かもしれません。


同時収録されている「上海氏の菟集品(コレクション)」は、逝去直前に
発表された氏最後の作品とされているものの、実際の制作年度はずっと遡る
とのこと。少女の心の奥底に秘められた「悪」と「闇」、森村誠一さんの短編を
読み終えたあとの寂寥感と同じような虚しい余韻漂う秀作です。これは私の
まったくの当てずっぽう、もしかして本当に森村さんの作風に刺激されて
書き上げられた作品ではと勝手に想像し、ひとりでワクワクしています。

コメント
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