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目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

経営理念 第13回 キーエンス「顧客の欲しいというモノは創らない」

2009-08-03 00:00:40 | Webの海


ビジネスパーソンに贈る経営情報誌
GLOBIS.jpより 2009年3月19日UP 筆者:嶋田毅(GLOBIS.JP発行人)
コラム「経営戦略」
経営理念 第13回 キーエンス「顧客の欲しいというモノは創らない」

※ 元サイトは、こちらとなります

※ 画像は、キーエンスHPより。


今回取り上げた、このコラム。
タイトルを見て、おお!?と思わない営業マンは少ないのではないか?

およそ営業マンたるもの。
顧客ニーズをどれだけきちんと汲み取り、提供することによって、
顧客満足を極大化することこそが目的だと通常は考えるだろうから。
この挑発的なタイトルの次には、どのような話が展開していくのか。
気にせずにはいられないのである。


キーエンス
と言う会社について。
あまり知っているとは言い難い。
過去に、新大阪の傍に特徴的な概観を持つビルがあるなあと思って
調べてみると、それがキーエンスだったということが在った位だ。

(画像は、キーエンスHPより)

後は、あの有名な都市伝説(30代で家が建ち、40代で墓が立つ)
くらいなモノだろうか。

今回の筆者のコラムの中の記述によると「平均年収およそ1400万円
(平均年齢32.0歳。かなりの部分をボーナスが占める)」とあるから、
少なくとも都市伝説の前半分は実証出来たことになる。

平均年齢の若さが、後半分を実証しているとは思いたくない(笑)。
#ちなみに、政府統計によれば、2007年における製造業の平均
 年齢は39.7歳
である。


では、なぜキーエンスが、それだけの高収入を実現出来ているのか?

答えは簡単。
社員の高収入に見合うだけの高利益を、キーエンスという会社が上げて
いるからである。

答えは簡単だが、悩みは尽きない。
なぜなら、高利益というキーワードは、およそ経営者層なら誰もが
念頭においているものであり、お題目のように唱えていれば実現できる
いった話ではないことは明白だからである。

それでは。
キーエンスに高利益をもたらしているものとは何なのか?

今回のコラムによれば、それは『徹底的に「価値(Value)」を生み出す』
というキーエンスの体質に拠るものだとされる。

付加価値をつけるということについて、否定する企業はそうはいまい。
だが。実践できている企業がどれほどいるのか?
(企業を人と読み替えても、全く同じである)

結局、が提供するサービスや製品に籠められた価値が、顧客にとって
原価すれすれのものでしかないために、常に低収益に泣かなければ
ならないのではないか、とする筆者の指摘は、実に耳が痛い。

この話に端を発して、標題に有る「顧客の欲しいというモノは創らない」
という流れに話は展開していく。

つまりは、顧客でも気がつくようなレベルの機能、あるいは品質を付与
した製品を提供したとしても、顧客満足はそれなりのものでしかない。
いい意味で顧客の気持を裏切ることによってこそ、顧客がその製品に
対して付加価値を認め、引いては高利益をもたらす源泉である。
という趣旨である。


ここまででは、営業マンとして十分に耳が痛い話であるが。
更に、元技術者として耳が痛い話へと、論は進んでいく。

曰く。
キーエンスが製品を生み出すときには、徹底して汎用化に拘る。

恐らくそれは、二通りの意味を内包している。

一つは、開発プロセスにおいて、如何にその製品に汎用性を持たせるか
ということ。
そしてもう一つは、製造プロセスにおいて、如何に過去に開発している
部品なりパッケージを活用して、製造コストを下げていくかということ。


元技術開発者として、自戒の念を籠めて言えば。
ソフトであれ、ハードであれ。
とかく技術者は、フルスクラッチでモノを造りたがる。
その方が、制約は少ないし、何よりモノ造りの喜びも味わうことが出来る
ためである。
かくして製造現場では、オーダーメードの、他社はおろか、同じ会社
からの再注文が来ても流用や応用が効かないような、一回きりの製造品
(ワンオフ)が横溢することとなる。

いや、うちはそんなことは無い。
きちんと共通化を図っているよと主張する企業がいれば。
それはそれで、自社内を徹底的に分析しなければならない。
なぜならば、製造工程においてキーエンスと遜色ない合理化が達成済と
すれば、他の要因で利益を食う構造がどこかに巣食っているからだ。


キーエンスは、そうした製造工程でのロスを極小化するためだろう。
製造工程を自社内に持たず、研究開発と営業に業務を特化している。

自社内に製造部門を持つことによって、客注に迅速に対応することが
出来るメリットよりも、馴れ合い等がもたらすデメリットを重んじた
ためと思われる。

ただ、このことは、キーエンスマンにとっては非常に大きな負荷を
もたらす。
なぜならば、別会社の製造部門の人間に対して、その提案の無駄を
指摘し、合理化を徹底させるためには、当然のことながら、別会社
に対して同等以上の技術力と分析力を持って相対しなくてはならない
からである。


ただ。そのサイクルが上手く回った時の効果は絶大である。
上述したように、ワンオフ(特注品)の場合。その開発に要した
コストはあくまでその製品の中で回収する必要がある。
勢い、コストは高めにシフトせざるを得ず、顧客が支払う価格に
限りなく原価は近づいていく傾向とならざるを得ない。

一方、汎用性の付与に成功すれば。
2ロット目以降は、少なくとも開発原価は回収済なのだから、
より安価に、より信頼性のあるものを提供することが可能と
なるのだから。


総括すれば。

顧客に対しては、徹底的なニーズの分析による真に必要な製品仕様の
提案を。
製造ベンダーに対しては、やはり徹底した仕様段階での汎用性追及に
よる、投下コストの早期回収の実現を。

キーエンスマンは、上記の二つの重責を担い、かつそれに応えている
からこそ、会社に高い収益をもたらし、引いては自身の高収入を達成
しているということだろう。


さて。
こうしたキーエンスの実態を見聞した上で。
あなたは、キーエンスで働きたいと思うか。

それは、別に人間価値としての踏み絵などではなく。
その人が、人生において何にどれほどの価値を見出すかという踏み絵
なのだが。

(この稿、了)


(付記)
社員一人ひとりの戦力を極大化させることの出来るキーエンスであれば。
さぞかし人材育成でも、優れたスキームを開発しているだろうと思う。
#まさか、大量採用して篩(ふる)いにかけていく方式ではないだろう。

そんなキーエンス。
内部研修は伺う余地もないが、採用時における面接方式に、その一端を
垣間見ることができそうだ。

ちなみに。キーエンスの採用HPの中で、自己分析ナビというものを
見つけた。
20問の設問に答えていくことで、性格の自己分析ができるというもの。
僕の場合は、「効率重視タイプ」だった。
これって、どうなんだろう…?(笑)


経営とは何か?
戦略とは何か?
分かっているようで、実は明確な定義もしないままに使っている
これらの言葉を、きちんとまとめて提示してくれる良書。
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