活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

人は、ここまでのことを成し遂げることが出来るのか! ~黒四ダム紀行(前篇)

2009-07-13 03:06:19 | 自然の海

駅に、降り立った瞬間。
感じたものは、標高1500mになろうとする地点故の冷気だった。

時は7月だというのに、ここでは吐息が白い。
構内にあるトイレで手を洗うと、まるで氷水のようだ。


ここは、黒部ダム。
正確には、扇沢駅から関西電力の運営する電動のトロリーバス
乗って、黒部ダム駅へと着いたところである。

バスは、約15分をかけて両駅を結んでいる。
その通行ルートはそのほぼ全行程がトンネルであり、このトンネル
こそが黒部第四発電所建設当時に、その建設資材運搬のために掘削
された大町トンネルそのものである。

トンネルの全長は、5.4Km
(トロリーバスの運行距離は、約6.1Km)。
標高2600m超、日本で95番目の高さを誇る、後立山連峰赤沢岳。
その直下を貫通しているこのトンネルは、その立地条件の厳しさ故、
多くの犠牲を人に強いる
こととなる。

そのもっとも有名なものが、破砕帯突破のドラマであろう。

着工から貫通までに、約2年を要したこのトンネル工事。
(黒部ダムの工事期間 : 昭和31年7月~昭和38年6月)
(大町トンネル 〃  : 昭和31年7月~昭和33年5月)
(破砕帯に要した期間 : 昭和32年5月~昭和32年12月)

その中でも、約7ヶ月という全工程の1/4以上の期間を、僅か80m
の破砕帯の突破に人々は費やすことを余儀なくされる。

その、最大の脅威は。

毎秒660Lという、途方も無い量の噴出水。
しかもそれは、4度という氷に近いような低水温である。
そして、日本列島を左右から挟みこむ地盤の圧力で、グズグズに砕けた
軟弱な地盤構造。

これらの障壁に作業者が苦しめられ続けた場所を、トロリーバスは
いともあっけなく通り過ぎる。

僅かに、車内放送で流れる説明と、一瞬窓の外を過ぎる青いランプ
~破砕帯の場所であったことを示すマーカー~ が、その名残りを
留めているに過ぎない。

それでも…。

最後尾に陣取ることが出来たお陰で、後部の窓からトンネル内を
じっくりと観察できたため、破砕帯を通過する際には、脳裏には
昨日に宇奈月温泉にある関西電力の黒部川電気記念館で観た、
トンネル貫通の際の映像がリアルに像を結ぶ。

もう脳内BGMは、中島みゆきの「地上の星」が大音量で流れ
まくりである。


(写真は、黒部ダム駅からトンネルを振り返ったところ)



黒部ダム駅から黒部ダムに向かうには、展望台経由と直接ダムに
向かうことが出来るルートの、二通りの選択肢がある。

展望台経由は、200段以上の階段を上り下りしないといけない
ルートとなるが、迷わずこちらを選択。



ここまで来て、全景を眺める機会をロストする訳にはいかない。

通路の床や内壁が湿っているのは、折りしも表に降っている雨の
所為ではあるまい。
恐らく、トンネルに未だ湧き出ている水のためだと思うと、
水溜りを踏みしめる足にも力が篭る。

途中。ちょうど、中間地点あたりに、黒部峡谷の湧き水ですと
書かれた岩を組み合わせた水溜りがあり、上部から水が注いでいる。

備え付けの手水(ちょうず)を、軽く漱いで口に含む。
冷たい水が、階段の上りに少し疲れてきた体に優しく染み渡る。



さあ。後、もう一息。
ようやく登り詰めたその先は、屋内展望台。
そこを抜けると、いよいよ黒部ダムと周囲の連峰を一望に見る
ことが出来る屋外展望台だ!

(この稿、続く)


(付記)
トンネル内を通行中は、景色を楽しむ術も無い。
が、2箇所だけ楽しめるものがある。

一つは、上で紹介した破砕帯通過を示す青い明かり。
そしてもう一つは、長野県と富山県の県境を示す黄色い明かりである。

実は、バスの中から写真も撮ったのだが、手振れがひどくて掲載を断念。

僕の心の中だけのメモリーとして、保存した次第である。



脳内BGMは、勿論…。
地上の星(紅白・黒部ダム生中継バージョン)



ようつべに投稿されていたXイントロ風の黒部紀行。
よくまとめられているなあ。
黒部ダムへGO!



黒部ダム開発の模様を丹念に描写した小説。
扇沢駅の売店で売っているのを見て、思わず購入してしまった。
高熱隧道 (新潮文庫)
吉村 昭
新潮社

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