壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

天の川

2010年08月16日 21時51分35秒 | Weblog
        水学も乗物貸さん天の川     桃 青 
      
 『山之井』・『増山井』には「妻迎舟(つまむかえぶね)」という季語が見え、さらに後者には「妻こし舟」・「彦星のと渡る舟」とある。また『萬葉集』・『古今集』にも、天の川を渡る舟を想像した歌があって、古くから七夕の夜に舟を考えたことがわかる。

 この句は七夕の句で、「天の川」は、牽牛・織女二星の逢瀬を妨げるものといわれている。普通の人なら「貸小袖」といって小袖を貸すところだが、水学(すいがく)は、天の川を渡るための乗物を貸すことだろうと興じているのである。

 「水学」は、水学宗甫、船に施す特殊な細工や、水からくりに妙を得た人。長崎よりその術を伝えたといわれ、江戸の文学にしばしばその名が見える。

 季語は「天の川」で秋。

    「一年に一度の逢瀬である今宵を、もし天の川があふれて越えかねる
     ようなことがあったら、水学も同情して、その巧妙な細工を施した船
     を、乗物として貸すことであろう」


      生かされて六十余年 天の川     季 己