壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

秋来にけり

2010年08月07日 20時53分43秒 | Weblog
        秋来にけり耳をたづねて枕の風     桃 青(芭蕉)

 『古今集』・秋上、藤原敏行の
        秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども
          風の音にぞ おどろかれぬる
 を踏まえ、「耳をたづねて」と擬人的に翻案したところが、談林的な発想。『発句合(ほっくあわせ)』の判詞にも「秋風枕をおどろかす体、耳を尋ぬる詞づかひをかし」とある。
 『六百番俳諧発句合』に「立秋」と題し、『江戸広小路』にもある。延宝五年ごろの作。

 「枕の風」は、枕元にしのび寄る秋風で、それが聴覚にうったえる点を、「枕を欹(そばだて)てて聴く」(白居易)を心に置いて、「耳をたづねて」といったものである。

 季語は「秋来る」で秋。

    「秋がやってきた。目にはそれとは見えないが、さっそく、秋風が耳を尋ねて、
     枕元にしのび寄ってきた」


      塔恍とあり立秋の百花園     季 己