実は自分もそういう風に
危うかった出来事を感じたかった。
そんな気がした。
しかし妙に自分の心は静まってしまった。
自分の心には、何かしら死に対する
親しみが起こっていた。 志賀直哉
半分記憶をなくし気絶するように眠りに落ちる。
友人にほどほどにしておけとたしなめられても止めることはできない。
スポーツジムも行きたくない早朝草野球なんか失くしてしまえ。
ラグビー中継もサッカー中継もシャットアウト。
新聞も週刊誌も遠ざけろ。
カラオケも消してくれ。
ずぶ濡れのKAWASAKIのバイクだけが俺を待っていてくれる。
水を一杯。それだけでいい。死に水なのか。
夜迷いごとを遺言にかえて。
ガソリン満タンにして震える指先押しとどめアスファルトへ飛び立つ。
風の知る音が俺に囁く。
寂しいなんて思う暇ない。
クラッチ切ってギヤ入れる。
夜の酒場から遠ざかる。
高速SAの古い自動販売機でコーヒーを無理矢理飲み体温上げてひた走る。
錯覚が楽しいのだ。
勘違いするから生きていられるのだ。
400ccのエンジンの塊りにしがみつき生を取り戻すのだ。
嘘と見限りと嘲笑の中でまた生きるのだ。
錯覚こそ真実也。