夫婦仲の冷え切った初老の男が、元同僚で末期がんの女性を励ますため、自宅から800km離れたホスピスまで歩いて訪ねることを突発的に思いつき出発。道中でマスコミに報じられ大勢の支援者が現れたり妻が中止の説得に姿を見せたり、さまざまな出来事があるが、最後にはスタートと同じ一人に戻り目的を果たすロードムービー。
新聞の論評にもあったが、真っ先に思い出すのは「フォレスト・ガンプ」。だが主人公の年齢や物語の背景を見ると、さらに前の「ストレイト・ストーリー」の方が似ているように思える。ただし上記2作がアメリカが舞台であったのに対し、本作はイギリスが舞台となっている。
歩く苦難だけが描かれているのではなく、主人公の過去の悔いが全編を通じて重くのしかかってくる。けっして美談ではない、本人にとっては贖罪の旅と言うことが観客に伝えられ、晴れやかな気持ちで観続けられるわけではない。それでも主人公がゴールに辿り着き、不仲だった妻とも和解でき(?)、十分ハッピーエンドと言えるのだろう。主人公が神を信じないと言うのが皮肉的で興味深かった。
2024年6月7日 川崎・チネチッタにて