かの有名な『奇跡の人』(1962年アーサー・ペン監督)のファイナル・シーンである。ここでパティ・デューク演じるヘレン・ケラーは、ポンプの水に触れたことをきっかけに世界をいっきに理解し始めている。木に触る直前の、そのよろめきながら世界を掴み取ろうとしているヘレンの動作に注目してほしい。そう、この動きこそが荒川修作が造り出そうとしている空間の対象なのである。つまり荒川はヘレンを空間に合致させるのではなく、空間をヘレンのこの動きに合致させようと、世界の全体を秒毎に造り変えようとするのだ。そして荒川はこの反転を生と死の問題にまで拡大している。
かの有名な『奇跡の人』(1962年アーサー・ペン監督)のファイナル・シーンである。ここでパティ・デューク演じるヘレン・ケラーは、ポンプの水に触れたことをきっかけに世界をいっきに理解し始めている。木に触る直前の、そのよろめきながら世界を掴み取ろうとしているヘレンの動作に注目してほしい。そう、この動きこそが荒川修作が造り出そうとしている空間の対象なのである。つまり荒川はヘレンを空間に合致させるのではなく、空間をヘレンのこの動きに合致させようと、世界の全体を秒毎に造り変えようとするのだ。そして荒川はこの反転を生と死の問題にまで拡大している。