未破裂脳動脈瘤患者さんからよく「スポーツはして良いですか?」と質問を受けます。今回はこの点についてお話しします。
未破裂脳動脈瘤患者さんにおけるスポーツや運動をどうすべきかについては日本のガイドラインには記載がありません。一方、ヨーロッパのガイドラインには、「制限なし」と記載されています(https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/23969873221099736)。
このような理由から、私はスポーツなどのアクティビティを基本的には禁止していません。
しかし、論文によっては高強度の運動が動脈瘤の破裂リスクを上昇させる可能性があると報告していますので紹介します。
- 高強度の運動:
- 一部の研究では、高強度の運動は運動中に心拍数や血圧を急上昇させ、動脈瘤にかかる圧力が増加することで、破裂の危険性が高まる可能性があると報告しています(J Clin Hypertens. 2022;24:861–869.)。ウェイトトレーニングや全力疾走などの激しい運動などが該当します。
- 軽度から中程度の運動:
- 軽度から中程度の運動は血圧コントロールやストレス緩和などの利点があり、心血管を健康に保つ作用があるとされており、脳動脈瘤の破裂リスクを低減する要因の一つと考えられています。ウォーキング、軽いジョギング、水泳、ヨガ、ピラティスなどが該当します。
- 個別的な考慮:
- 脳動脈瘤の大きさ、形、位置、増大の有無などは破裂率に影響することが知られており、破裂率が非常に高いと想定される場合には運動制限を提案される場合があります。また、患者さんの健康状態に応じて、運動の種類や強度を調整する必要もあります。
私自身は前述のように「基本的に運動制限は必要ない」とする立場ですが、非常に破裂率が高いと想定される患者さんには、脳動脈瘤の治療前に運動制限を提案することもあります。
このように個人によってリスクは大きく異なるため、どこまで運動すべきか迷う場合には、専門医と相談することをお勧めします。