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脳動脈瘤に関する質問編 その4 「脳動脈瘤は自然に治ることがありますか?」

2025年05月09日 | 動脈瘤

脳動脈瘤とは、脳の血管の一部がこぶのようにふくらんだ状態のことを指します。これが破裂すると「くも膜下出血」という、命にかかわる重大な状態になることがあります。

では、脳動脈瘤は「自然に治る」ことがあるのでしょうか?

1. 基本的なポイント

  • 脳動脈瘤は基本的には自然に治ることはありません

  • つまり、薬や生活習慣で「元通りの血管に戻る」ことは、通常は期待できません。

  • ただし、ごくまれに自然に血栓(血のかたまり)ができて、動脈瘤の中の血流が止まることがあります。

  • この状態を「自然血栓化(しぜんけっせんか)」と呼びます。

🔍 自然血栓化とは?

  • 血流のよどみや瘤の形によって、瘤の中に血栓が形成されることがあります。

  • その結果、動脈瘤が縮小したように見える、あるいは画像上で「見えなくなる」こともあります。

  • これは主に以下のような瘤に起こりやすいとされています:

    • 10mm以上の大型動脈瘤

    • 血流の入り口が狭いタイプ

    • 動脈硬化や石灰化が進んだ瘤

 参考論文:

  • Hoh BL et al., Neurosurgery, 2001:後交通動脈瘤が自然血栓化で画像上消失。

  • Takeuchi S et al., Surg Neurol Int, 2014:自然消失後、再出血を起こした症例を報告。

⭐️自然に縮小・消失しても安心できない理由

一見いいことのように思える自然血栓化ですが、実はそれで「治った」と考えるのは危険です。

 血栓化=安全とは限らない

  • 血栓が形成されることで、動脈瘤内の血流が不安定になり、圧力が特定の場所に集中する可能性があります。

  • 時間がたつと、血栓が溶けて再び血流が再開することがあります。

  • また、血栓の周辺で炎症が起きたり、壁が弱くなったりして、破裂リスクが高まることもあるのです。

 参考論文:

  • Mizutani T et al., Stroke, 1995:完全血栓化後でも、壁の炎症や壊死によって破裂が起こる可能性を報告。

  • Kim DJ et al., J Neurosurg, 2009:MRIで完全閉塞と診断された巨大動脈瘤が、その後破裂。

実際の報告:

  • 完全に血栓化して、MRIなどで瘤が見えなくなったが、 その後にくも膜下出血を起こしたというケースも存在します。

  • つまり、「画像で見えない」=「存在しない・破裂しない」とは限らないのです。


 まとめ

  • 脳動脈瘤は原則として自然に治癒することはない

  • ごくまれに自然血栓化によって縮小・閉塞することがある。

  • しかし、

    • 血栓化した後でも破裂することがある。

    • 再び血流が通ることがある。

    • 壁の炎症や変性が進行している可能性がある。

  • 「検査で見えなくなった=安心」と考えず、定期的なフォローが必要

  • 特に、大型瘤や症状のある瘤では、専門医と相談して治療のタイミングを見極めることが重要


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