脳動脈瘤とは、脳の血管の一部がこぶのようにふくらんだ状態のことを指します。これが破裂すると「くも膜下出血」という、命にかかわる重大な状態になることがあります。
では、脳動脈瘤は「自然に治る」ことがあるのでしょうか?
1. 基本的なポイント
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脳動脈瘤は基本的には自然に治ることはありません。
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つまり、薬や生活習慣で「元通りの血管に戻る」ことは、通常は期待できません。
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ただし、ごくまれに自然に血栓(血のかたまり)ができて、動脈瘤の中の血流が止まることがあります。
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この状態を「自然血栓化(しぜんけっせんか)」と呼びます。
🔍 自然血栓化とは?
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血流のよどみや瘤の形によって、瘤の中に血栓が形成されることがあります。
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その結果、動脈瘤が縮小したように見える、あるいは画像上で「見えなくなる」こともあります。
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これは主に以下のような瘤に起こりやすいとされています:
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10mm以上の大型動脈瘤
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血流の入り口が狭いタイプ
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動脈硬化や石灰化が進んだ瘤
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参考論文:
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Hoh BL et al., Neurosurgery, 2001:後交通動脈瘤が自然血栓化で画像上消失。
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Takeuchi S et al., Surg Neurol Int, 2014:自然消失後、再出血を起こした症例を報告。
⭐️自然に縮小・消失しても安心できない理由
一見いいことのように思える自然血栓化ですが、実はそれで「治った」と考えるのは危険です。
血栓化=安全とは限らない
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血栓が形成されることで、動脈瘤内の血流が不安定になり、圧力が特定の場所に集中する可能性があります。
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時間がたつと、血栓が溶けて再び血流が再開することがあります。
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また、血栓の周辺で炎症が起きたり、壁が弱くなったりして、破裂リスクが高まることもあるのです。
参考論文:
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Mizutani T et al., Stroke, 1995:完全血栓化後でも、壁の炎症や壊死によって破裂が起こる可能性を報告。
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Kim DJ et al., J Neurosurg, 2009:MRIで完全閉塞と診断された巨大動脈瘤が、その後破裂。
実際の報告:
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完全に血栓化して、MRIなどで瘤が見えなくなったが、 その後にくも膜下出血を起こしたというケースも存在します。
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つまり、「画像で見えない」=「存在しない・破裂しない」とは限らないのです。
まとめ
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脳動脈瘤は原則として自然に治癒することはない。
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ごくまれに自然血栓化によって縮小・閉塞することがある。
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しかし、
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血栓化した後でも破裂することがある。
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再び血流が通ることがある。
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壁の炎症や変性が進行している可能性がある。
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「検査で見えなくなった=安心」と考えず、定期的なフォローが必要。
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特に、大型瘤や症状のある瘤では、専門医と相談して治療のタイミングを見極めることが重要。