温暖化がもたらす問題として、最も心配なことの一つは食糧問題です。日本の食料自給率はカロリーベースで約37%と先進国の中では際立って低いことはよく知られています。米以外の主要農産物の内、小麦は約83%を、大豆は約94%、トウモロコシに至っては100%を、主に米国、カナダ、オーストラリアなどから輸入しています。温暖化が進むと米国中西部やオーストラリアの穀倉地帯が深刻な干ばつに見舞われて生産量が激減する可能性があることです。実際に、独立行政法人 農業環境技術研究所は、地球温暖化が進行すると世界の穀物主産地の収量は低下するというレポートを2012年に公表しています(注)。本当にそうなったら日本の食料供給は深刻なダメージを受けるでしょう。
既存の穀倉地帯が悪影響を被る一方で、温暖化によってカナダやロシアの現在は農業に適していない広大な高緯度ツンドラ地帯が肥沃な穀倉地帯に様変わりする可能性も指摘されています。ただその場合でも、農業生産に必要なインフラストラクチャが皆無ですから、それらを建設することから始めなければなりません。農道の整備、肥料などの供給網、トラクターなど農業機械の配備・運用施設の設置、収穫物の貯蔵や搬出のための設備・大量輸送のための鉄道路線の敷設、運河・港湾の開削、農業従事者の生活圏の建設などなど、現状では何もないところから始めなければなりません。どれも一朝一夕にできることではないので、事前に対策を準備しないと、わが国は深刻な食糧難に苦しむことになる可能性があるのです。対策としては、将来、上記のような事情で農地として利用できそうな国内外の地域を探査し、開発援助あるいは共同開発を各国政府に提案するなどが考えられます。具体的にはロシアのオホーツク海沿岸やカナダ北西部のユーコン準州などが考えられます。現状では気が遠くなりそうなほどに不毛な地域なのですが。
(注)http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/sokuhou/120918.html
※上の写真は、https://sites.google.com/site/ukurainadeqiushangnoparadaisu/system/app/pages/sitemap/hierarchy から引用させていただきました。