報道によりますと、米国の核融合技術開発のベンチャー企業である「ヘリオン・エナジー社」が、磁場反転配位(Field-Reversed Configuration:FRC)型核融合実験設備である「Polaris(ポラリス)」の一部を稼働させ、FRC型プラズマの生成に成功したとのことです(注1)。思わずブログ主は我が目を疑いました。急いでヘリオン・エナジー社のホームページを閲覧(注2)してみましたが、どうやら本当のようです。60年以上生きていると思いもよらなかった出来事を見たり聞いたりできることに驚きます。一昨年から昨年にかけて米国のローレンス・リバモア国立研究所におけるレーザー核融合により入力エネルギーを遥かに上回る出力エネルギーを得ることに成功したというニュースが続いています。確かに進歩ではありますが、核融合発電の実用化には更に時間がかかりそうですし、実用化されたとしても現在試みられている核融合反応は、重水素とトリチウムを融合させて(これをDT反応と略します。Dは重水素、Tはトリチウムです)熱エネルギーを取り出すことが目指されています。DT反応から有害な放射線が発生しない代わりに大量の中性子が発生し、これは人体に有害ですから遮蔽する必要があります。また大量の中性子は炉材を痛めてしまうため、長期間核融合炉を使用できない可能性が高いそうです。この問題は以前本ブログでも取り上げたことがあります。
ところがヘリオン・エナジー社が開発した核融合の方法は重水素とヘリウム3を融合させ(D-3He反応と略します)エネルギーを得る可能性が見えてきたということです。この反応ですと有害な中性子の発生量がDT反応よりも、かなり少なくて済むそうなのです。これは朗報と言えるでしょう。もう一つの特徴は核融合反応からエネルギー形態として熱を取り出すのではなく反応から出てくるα粒子を使って電磁誘導で直接発電を行う可能性があるということです。これも、もし本当ならかなり画期的なことだと思います。(続く)
(注1)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08812/
(注2)上記の写真がPolaris(ポラリス)の本体で、長さ19m ヘリオン・エナジー社のFace Bookから引用させていただきました。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=859474262539021&set=pb.100054293659828.-2207520000