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名勝負の残す過酷さ

2017年10月04日 | 雑記帳

(この迫力には参った、毒をもつ強さか)

 秋場所のようなことがあっても大相撲人気は続いているようで、盛んに雑誌等でも特集が組まれる。「語り継がれる大相撲名勝負20」と題されたそのランキングは、私のようなごく普通の視聴者であっても納得できた。というより印象深い三つがそのままベスト3になっていて、大相撲の普及度の高さを改めて知った。


 1位は、貴花田が千代の富士を寄り切った取組。いわば「若貴ブーム」の到来を告げた勝負である。千代の富士の引退が印象的であったこともあるか。相撲など見る余裕もない時期だったが、あの勝負の瞬間をTVで目にした時、素直に「若い力は凄い」と感じたことを覚えている。千代の富士は自分と同年齢だった。


 2位は2001年の千秋楽の優勝決定戦。あの貴乃花が武蔵丸を破り、鬼気迫る表情を見せた取組である。あれは凄かった。当時の小泉首相の表彰パフォーマンスは、この首相、どこまでもラッキーな御方と思わされた。そして、3位が今年春場所の優勝決定戦。記憶に新しい稀勢の里が照ノ富士を破ったあの一戦である。


 あの時、誰だったか定かでないが、稀勢の里の強行出場に強い懸念を示した親方がいた。「力士生命」という言葉を出したことを覚えている。それは、考えるまでもなく2位の名勝負に位置づけられた貴乃花を想起させるものだった。どちらも「痛みに耐えて」土俵に上がり、気迫を前面に出して勝ちとった戦いだった。


 貴乃花は長く休場し復帰後も優勝できないまま引退。稀勢の里は周知のとおり、依然懸念が残る。二つの取組の代償はあまりに大きい気がする。何かを犠牲にしなければ心打つ勝負は生まれないものか、と複雑な気持ちになる。結果がもたらしたある意味過酷な運命があるからこそ、名勝負と人は呼ぶのかもしれない。