金融経済の基礎-ゼロクーポン債
掲載日:2008年12月23日
ゼロクーポン債とは?
ゼロクーポン債は、期間中の利払いが無い代わりに、購入時の価格を額面よりも安く設定し、償還時には額面通りの金額を受け取れる割引債であり、クーポン(利息)の付かない債券の事です。
償還までの複利利回りでの運用が確定しているため、より安定した余裕資金の長期運用が可能です。
通貨・債券の種類としては、米国債、カナダ国債、フランス国債などが有り、
債券の平均残存年数は1年程度から20年以上のものまで、流通量の多い米国債であれば種類が豊富です。また中途売買も可能です。
以下の例の様に、年1回複利利回り5.07%で資金運用すれば、
61万円の資金が10年後には100万円となります。
つまり10年後には100万円となる債券を、現在61万円支払って購入する訳です。
世界の金融経済の基本は、この資金の複利運用にあると言っても過言では無いでしょう。
一例、2006年発行、米ドル建て10年債
発行体 国際復興開発銀行(世界銀行)
売出価格 額面1,000米ドルにつき610米ドル
利回り(税引前) 5.07%(年1回複利利回り)
発行日 2006年7月27日
償還日 2016年7月27日
購入時(元本)<2006年> $6,100、為替レート 115.50円704,550円
704,550円で購入。
償還時(元利合計)<2016年> $10,000、
為替レート 115.50円、であれば1,155,000円、
為替レート 65.00円、であれば65万円
為替レート 140.00円、であれば140万円の受け取り。
1996年から2006年までの、ドル/円推移
最高値147.26円1998年8月、
最安値101.45円2000年1月
米国債10年物の利回りは12月23日現在2.177%ですから、
米国債10年物は10年後に1.2403倍となり、$10,000の売出価格は$8,062の計算値となります。
また、2007/7/13には5.097%でしたから、$6,100以下でした。
つまり、5.07%では$6,100、2.177%では$8,062と金利が下がれば債券価格は上昇する訳です。
年金資金の複利運用
この資金の複利運用を国家的規模にまで推し進めた制度として、年金制度が有ります。年金資金の複利運用利率を年金の予定利率と言います。
日本の年金の予定利率は、1997年度までは年率5.5%、
2004年度以降は年率3.2%です。
この予定利率は相互の約束事ですから、変更は許されません。
以下国民年金を考えます。
国民年金保険料金を月額14,100円、払い込み期間を40年間と仮定すれば。
年金支払い期間は20歳より60歳までの40年間、受給期間は66歳より86歳までの20年間とすれば、実質36年間の複利運用期間となります。
月額14,100円、払い込み期間40年間の払込総額は676万8千円。
年率3.2%の予定利率で考えれば。36年後には3.1079倍の2103万4千円になりますから、受給国民年金月額は87,643円となります。
この金額は2004年度以降国民年金保険料金を払い始めた若者達の当然なる権利であり、国家の税金は使われていません。
国民年金は国民の相互扶助であると言う、政治家、官僚は無知蒙昧の輩か詐欺師か、のどちらかです。
以下は昨年の記事ですが参考として下さい。
お金の教室2007年11月16日
私が「債券投資っていいかも」と初めて感じたのは、米ドル建てゼロクーポン債との出会いでした。債券にはあらかじめ決まった時期に利金(利息)が支払われる利付債券と、利金支払いがなく、その分購入価格が低い割引債券があります。ゼロクーポン債はクーポン(利金)がゼロ、つまり割引債券の一種です。私が「米ドル建てゼロクーポン債」の存在を知ったのは1983年の年末のことでした。
このときの米国10年国債利回りは年11%台の複利利回りです。そして私を虜にしたのは20年後に償還を迎える米ドル建てゼロクーポン債でした。20年後の1万ドルがなんと800ドルで手に入るのです。
この債券は無事20年後償還を迎えることができれば、持っているだけで投資元本の12倍が約束されているわけです。20年間、年13%複利利回りということは、20年間継続して年13%ずつ勝ち続けることを意味するはず。
図は1983年から2003年までのニューヨークダウ株価指数の推移です。1983年年末の水準は約1200ドル程度。ITバブルの時はおよそ10倍の12000ドル程度までありました。ニューヨークダウ株価指数は特に89年を越えてからは急上昇しました。89年2000ドルから95年4000ドル、97年8000ドル、そして99年には1万ドルの大台に乗せました。
「長く株式投資をやっているけど儲かったためしがない」という人の大半は、途中で大きな損を抱え投資をあきらめて、相場がよくなってまた再開し、そこでまた損をして投資をあきらめる、を繰り返す人です。債券のように保有しているだけで投資が継続できる、メンテナンスいらずの金融商品が何故、投資家から注目されていないのかが不思議です。
■今回の執筆者前川貢(ファイナンシャルプランナー)