北欧の商品は、おしゃれだからね。
全国に広がるかもね。
ただ、日本人のニーズに合うかだけれど。
“北欧の100円ショップ”「タイガー」日本上陸、その実力は?
nikkei TRENDYnet 7月23日(月)11時6分配信
2012年7月21日、デンマークの激安雑貨チェーン「タイガー・コペンハーゲン」のアジア1号店が、大阪・ミナミのアメリカ村にオープン。初日には約400人が開店前に並び、終日大勢の客でにぎわった。
三角公園近くのプレヴュービルに、売り場面積530平米、2層の大型店を出店。北欧デザインのカラフルでユニークな生活雑貨を約1000アイテムそろえ、均一の低価格で販売する。欧州の標準店は売り場面積200~300平米で約2000アイテムを展開。毎月300アイテムが入れ替わるが、日本1号店は入荷が間に合わず半分のアイテム数でのスタートとなった。順次新商品を投入し、3カ月後に2000アイテム、半年後には2800アイテムに拡大する予定だ。初年度の売上高約1億円をめざす。
日本1号店を大阪に出店した理由は、「東京はマーケットが巨大なうえ、毎日多くの店舗がオープンしているので、その中に埋もれてしまう。大阪はコンパクトな都市なので注目されやすい。関西の人はカラフルなものが好きだと聞き、1号店にふさわしいと判断した」(タイガーを運営するゼブラA/Sのレナート・ライボシツCEO)。
大阪の中でもアメリカ村はヤングカジュアルファッションの聖地。一時の隆盛は見られないものの、アジアからの観光客も含め、多くの若者が往来する。また、心斎橋や御堂筋からも近く、「都心の中心部やSCでスタイリッシュな低価格品を売る」タイガーの戦略を生かせる立地といえる。
さらに日本市場については、「ポテンシャルの高いアジアの中でも日本は世界で2番目の規模の小売り消費市場。イケア、H&Mといった北欧の小売企業が成功していることも参考になった」と、ゼブラA/S日本法人・ゼブラジャパンのクラウス・ファルシグ社長は話す。今後の計画では、年内に2店舗を大阪市内に出店。商圏特性の異なる店舗での実験結果を踏まえたうえで、ほかのエリアにも展開していく。
タイガー・コペンハーゲン(欧州では「タイガー」)は1995年、デンマークの首都コペンハーゲンに開業。それまで複数の業態を展開していたが、店名を統一して価格も10デンマーククローネ(日本円で130円程度、2012年7月20日時点)に統一した。CEO一家が動物好きなことから店名を「タイガー」に名付けたという。
2000年代に入り、欧州各地で店舗網を拡大。デンマーク以外は全て現地の企業との合弁会社が運営する。現在、欧州16カ国で150店舗を展開し、2011年度の売上高は9400万ユーロ(日本円で90億5900万円、2012年7月20日時点)。買い上げ客数は年間1800万人を超える。今年度は欧州に65店舗、大阪に3店舗を出店する計画。9月1日には、イタリア・ジェノバにカフェを併設した最大店舗を開業する。
安さだけじゃない、ユニークでカラフルなデザインが人気
価格は100円と200円が大半で、300円、400円と100円刻みで設定。カラフルなヘッドホンも500円と驚きの安さで、一見したところ1000円を超えるものは見当たらない。しかも、デンマークで10クローネ、欧州で2ユーロのものを日本では100円で販売。円高差益分がお得ということになる。
タイガーの特徴は、商品のユニークさにもある。「生活の役に立つもので、しかもほかにはないユニークなものでなければ意味がない」とレナートCEOが言い切る通り、店内には初めて見たような商品が多い。知らず知らずのうちに商品に魅せられるのも、ユニークさを追求した商品開発をしているからだろう。
特に重視しているのが、デザイン性と品ぞろえの豊富さだ。「低価格でも豊かな気持ちを味わってもらうために、価格は最重要事項ではない」(レナートCEO)という。デザインはカラフルでシンプルな北欧テイストが基本。イケアやマリメッコなどで日本人にもなじみのあるデザインだ。
例えば、手の形をしたプラスチック製のはさみ棒のようなものは「ハエたたき」で200円。昔、日本にもハエたたきはあったが、それよりもシャレていて面白い。また、日本のこけし人形をモチーフにしたメモはさみやボールペン、貯金箱などは日本だけでなく、欧州でも販売されているもの。ほかにも、日本の文化を取り入れたデザインが目立つのは「日本で北欧デザインが受け入れられているのと同じように、日本のデザインもデンマークで人気があるから」(レナートCEO)。デザイン面で共通点が多いことも、日本進出に踏み切った理由のひとつという。
商品は、オリジナル企画を中心に既製品も展開。オリジナル商品は、デンマーク本国の4人の社内デザイナーと外部のデザイナーで企画する。生産地は中国50%、デンマーク40%、デンマーク以外の欧州10%の構成。自社工場を持たず、サプライヤーからの直接仕入れで原価を抑え、一定基準の品質のものを低価格で提供する。これはH&Mのビジネスモデルに近い。タイガーではさらに、現地企業とのパートナービジネスによって店舗投資と人件費を抑制。驚きの安さと均一価格で販売する独自のビジネスモデルを強みにしている。
「価格設定は全世界共通。どの国もワンコインで設定しているので100円からにした。今後、為替差損が広がっても価格設定を変える可能性は低いだろう。もともと税率も違う」とクラウス社長。単に値上げするのではなく、100円ショップとは一線を画すデザイン性の高さと顧客の期待に応えられる商品を提供する雑貨店として打ち出していくようだ。
欧州の店舗と全く同じ内装と品ぞろえ
店舗はカラフルな商品を引き立てる白を基調とした、シンプルでモダンなデザインが印象的。木製の可動式什器や柔らかな照明なども北欧らしさを演出する。
「1号店はあえて欧州の店舗と内装も品ぞろえも全く同じにした。消費者の反応を見ながら必要なら修正を加えていく」(レナートCEO)。
同店で取り扱う商品はリビング用品、キッチン用品、食器、文具、クラフトグッズ、ボビー用品、パーティグッズ、ゲームなど多岐にわたる。ただ、欧州で展開している食料品とコスメはオープン日には扱っていない。今後、日本の検査を経た後に投入する予定だ。また、市場や売れ行きを見ながら日本限定商品も検討するという。
オフィスを楽しくする文具から手芸グッズまで
タイガーでは、買い物を楽しめる売り場づくりにも力を入れている。開放的な空間のなかでレイアウトと照明にも工夫。「お客様にリピーターになってほしいので、商品で鮮度を保つのに加えて心地良く買い物ができる店舗であり続けたい」とクラウス社長は話す。
1階には、ペーパークラフトやステーショナリー、電気小物、手芸グッズ、手帳などが並ぶ。オフィスのデスクを楽しくするユニークなデザインのポストイットやホッチキス、消しゴム、クリップ、メモホルダーなどがおすすめ。また、手芸好きにはジグザグに裁断できるピンキングハサミや毛糸、動物型フェルト、布用マジック、各種ビーズが見逃せない。店内は迷路のような作りになっていて、全ての商品を見られるようになっている。
つい手が伸びてしまう“遊び心のある雑貨”が目白押し
2階はホビーグッズやパーティーグッズのほか、キャンドルなどのリビング用品やキッチン用品、靴下、スカーフなどのファッション雑貨、バスグッズなどがそろう。そのうち、ホビーグッズやパーティーグッズといった趣味やゲーム関連の商品はかなり多い。背中に付ける大きな天使の羽根やカラフルな日本の提灯、小さな昆虫標本といった“用途不明”だが遊び心満載の商品も見られた。
「なかには容易に想像つかないようなものもあり、今回仕入れた商品の半数は売れないまま残ってしまうかも。デンマークのコンセプトが日本でどれだけ通用するか見極めたい」と、クラウス社長は打ち明ける。
たしかに実用性に欠ける商品も多く、買ってみたものの使い方が分からず、そのままになってしまいそうな商品は少なくない。ただ、そういった商品でも、色の楽しさやデザインのユニークさに引かれ、見ているだけで気分が楽しくなってくる。買い物の気分を高揚させ、つい手が出てしまう商品を多数ラインアップし、結果的に買い上げ率のアップにつなげるのがタイガーの狙いのようだ。
来日したレナートCEOにあえて日本での競合について聞いてみた。「ユニークをコンセプトにしているので、ほかにはないと自負している。フランフランや無印良品とは価格が違うし、100円ショップとはデザイン性が違う。日本市場でも棲み分けができると思う」
おしゃれでユニークな北欧デザイン雑貨を激安均一価格で販売、というインパクトをどれだけ訴求できるか。イケアやH&Mとは規模の違いこそあれ、北欧企業のしたたかな戦略に注目したい。
なぜ大阪? 北欧の人気100円ショップ、日本上陸の内幕
大阪に進出するデンマークの雑貨チェーン大手、タイガーの色鮮やかな商品【拡大】
北欧の人気雑貨チェーン店「タイガー」が今夏にもアジア1号店を大阪に出店する。欧州では約120店を展開する同店だが、なぜアジア第1号店を首都・東京ではなく、大阪に決めたのか。来日した「タイガー」を運営するデンマークのゼブラ社のレナート・ライボシツCEO(最高経営責任者)が大阪進出の理由を明かした。
「東京には、それぞれ特徴的なエリアがたくさんある。1店舗をオープンしても、限定された地域のものになるため、東京では埋もれてしまう危険性があると考えた」。ライボシツ氏はこう説明した上で、「東京に比べ都市のサイズがコンパクトな大阪では、1店舗をオープンしたら、全体からお客さんに来てもらうことができ、広く知れわたると考えた」と言う。
大阪進出に際し、日本貿易振興機構(ジェトロ)や大阪商工会議所のサポートを受けながら出店準備を進めているが、「サポートがあってのこと。東京には企業が多く、われわれ1企業に対し、ここまでのサポートが受けられたかわからない」とも話す。
日本での出店準備を、中心になって進めているクラウス・ファルシグ日本地区部長は、学生時代にバックパッカーとして日本を旅行したことがあり、好きな都市は「京都、金沢、長崎」。「日本の文化がより感じられる」と京都に留学した経験からも、関西出店のメリットをライボシツ氏にアドバイスする。
海外の大手チェーン店が日本進出で大阪を選んだケースはほとんどない。昭和46年に日本1号店を開店した「マクドナルド」、平成8年の「スターバックス」は共に東京・銀座だった。仏高級ブランド「ルイヴィトン」「カルティエ」も銀座、「エルメス」は丸の内、ベルギーのチョコレート専門店「ゴディバ」は日本橋だ。
タイガーと同じ北欧ブランドはどうか。スウェーデンの衣料品チェーン「H&M」は銀座に、同くスウェーデン発祥の家具チェーン「イケア」は、郊外型店舗形態をとることから、1号店は平成18年に千葉県船橋市にオープンしている。
「今後の日本展開は、まず大阪で3店舗の成功をおさめること」と話すライボシツ氏。すでにタイガーに対する日本での引き合いも多く、「日本市場では100店舗単位での展開も期待できる」としており、大阪の後には、東京をはじめ日本全国に展開していくことになるだろう。
人口500万人のデンマークでは、すでに60店舗を展開するタイガー。東京より規模は小さいが、大阪も人口は267万人と、世界的にみても大都市だ。大阪での成功が、タイガーの日本展開のカギになるとともに、今後海外ブランドが戦略的に大阪に進出することになるのか、といった点でも注目が集まっている。