2016年7月の一ヶ月間は、喜久屋書店で購入した一冊の文庫本を何度か読み返していました。
これは恋愛小説です。恋愛小説が特に好きという訳ではなく、“甘酸っぱい”だけ、“きゅんきゅんする”だけの恋愛小説は「どうでもいい」のジャンルに入るものです。ところがこの小説は恋愛以外の記述、『歩く植物図鑑』たる樹による野草に関する記述、食べれる食べれないだけではなく、野草の名前を知ることができた! が私の心に突き刺さりました。6月4日に映画が公開され上映中とのPRもあり、7月中はこれの読み返しで過ごしました。
書名:植物図鑑(文庫)
著者:有川 浩
発行所:株式会社 幻冬舎
初版発行日:2013年1月10日
2009年6月30日に角川書店から単行本(四六版)で発行され、2010年12月24日には同社から電子書籍で発行、その後2013年に幻冬舎から文庫本化して発行されました。
何度も何度も読み返し、何度も何度も涙しながら、一つずつ野草の名前と特徴を記憶し、町や野に出てその野草を探しました。
この小説を読み始めてからは、近所に生えている“ヘクソカズラ”が目に付くようになりました。小さなフリルが付いたような花は、女性には“かわいい”と人気があります。
また、娘の家の庭に小さなニワゼキショウ(庭石菖)が1本生えているのも見付けました。イタドリ(虎杖)が食用になることは女房によって知らされていたし、播磨地方では「ダンジ」と呼んでいることも知りました。私の故郷ではスカンポと呼んでいたように思います。イタドリは生食できるが、シュウ酸を多く含むので、沢山食べるとおなかを壊します。このことは、天野頌子さんの小説『タマの猫又相談所』でも触れられています。
この物語の凄いところは、さやかの樹に対する根拠のない信頼と、帰るところができたという樹の思い。そして、家柄はいいとはいえ、フリーターだった樹が趣味で撮り貯めた写真でいつのまにか恩師である教授の助手になり、大学で講師として教鞭をとるようになっていたこと。この樹の転身は、まるで“さかなクン”さながらですね。現実には非常に稀なことではないでしょうか。
“甘酸っぱさ”と“胸きゅん”以外に、野草を紹介しながら多くの読者の心を掴む。恋愛小説としては少し違反ではないだろうか。
いづれにしても、大変楽しませてもらっています。これからも何度か読み返す本の一つになったようです。
(注)さかなクン(1975年8月6日生)は、日本の魚類学者で、タレント、イラストレーター。本名は宮澤 正之(みやざわ まさゆき)
【関係サイト】
○ 株式会社幻冬舎HP-植物図鑑
○ 株式会社KADOKAWAオフィシャルサイト-植物図鑑
○ 植 * 物 * 図 * 鑑 運命の恋、ひろいました(2016「植物図鑑」製作委員会)
○ さかなクン -オフィシャルサイト
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