業務執行権を有する役員について5月15日にお話しましたが、今なお、「日本の会社の経営者は、その会社でどんな役割を担い、どんな責任を負っているのかよくわからない。」
という人が多い。
確かに、上場企業でも、その有価証券報告書を見て経営者の方々がそれぞれその会社でどんな役割を担っているのか、社外の者にとっては分かりません。
何故そうなのかはさて置くとして、先ずは“会社の経営者とは”について整理してみたいと思います。
企業の発展段階によって、経営者はいくつかの形態に類別することができます。代表的なものとしては、
①所有経営者:出資者がそのまま経営者になる
この経営者は起業者とも呼ばれ、親から子へと世襲される場合が多い。(世襲経営者)
②専門経営者:経営に関する能力と経験を第一条件として、株主によって選任される経営者
企業の高度化により、出資者の多数化による所有の分散と投資家化が発生・進展するとともに、複雑化した企業組織の確実な運営のために、出資者とは別の専門的能力と経験を有する人に日常的な経営活動が委ねられる。(資本=所有と経営の分離)
経営者とは、企業の経営について最高の意思を決定し、経営活動の全体的遂行を指揮・監督する人又は機関(人たち)をいいます。
経営効率を高めるために、経営業務区分や事業分野毎に役割分担されているのが一般的です。
会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役、取締役などの肩書が付いているものの、日本の会社では「誰が」「何を」担っているのか社外に向けて明示されていない場合が多いのです。
経営者は、「臨時的決定」、「経常的決定」、「評価的決定」の三つに分類される意思決定を行います。
1 臨時的決定
①企業の設立、改組、合併、解散などの基本的存立に関する組成的決定
②取締役、監査役、その他重要役職者の任免に関する最高人事決定
2 経常的決定
①経営理念と経営目標の決定
②経営戦略の決定
③経営構造の決定
④長期経営計画の決定
など
3 評価的決定
経営業績の確定、評価、開示と経営成果の分配に関する決定
このような学問的な内容はわかっても、具体的に「誰が」、「どんな責任を担うのか」はわかりません。
「わが社は合議制で全ての意思決定を行うことにしている。従って、不都合は何も発生しない。」
と言って憚らない経営者もいます。
本当にそうすることが最善・次善なのでしょうか。合議制の場合、ともすれば、“声の大きい者”の意見が皆の意見のようになってしまったり、職席責任主義になったり、合議決定したのだから役員全員の全体責任という考えが蔓延し、分掌する職務への責任感が希薄化したりするなど、“そうする方が楽”なので、マイナス面が定着してしまいかねません。
上手く運用されている合議制までをも否定するものではありませんが、時代は明確な責任所在の開示を求めていると思います。
私は決して欧米至上主義者ではありませんが、良いものは素直に認めざるを得ません。
欧米では役割分担に基づいた以下のような『最高責任者』を設置・公表するのが慣わしとなっています。
(CEO CCO CRO CFO CIO COO) などについて
日本の企業でもグローバル企業や一部のドメスティック企業で、この最高責任者制を導入、明示しています。
ドメスティック企業であっても、より多くの企業で従来の「社長」とか「常務」といった役職の他に、このような最高責任者を任命し、開示すれば、責任の所在が分かり易くなるとともに、経営者一人一人が分掌する経営責任に対する認識と緊張感が高まるものと思います。