SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
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フォーレのすすめ

2007年07月06日 00時00分00秒 | ピアノ関連
★フォーレ・ピアノ・コレクション VOL.Ⅱ
                  (演奏:キャサリン・ストッツ)
1. 舟歌 第2番 ト長調 作品41
2. 舟歌 第7番 ニ短調 作品90
3. 夜想曲 第9番 ロ短調 作品97
4. 夜想曲 第10番 ホ短調 作品99
5. 即興曲 第6番 変二長調 作品86
6. 舟歌 第12番 変ホ長調 作品106
7. 舟歌 第11番 ト短調 作品105
8. マズルカ 変ロ長調 作品32
9. 夜想曲 第11番 変へ短調 作品104の1
10. 夜想曲 第8番 変二長調 作品84の4
11. ヴァルス・カプリス 第4番 変イ長調 作品62
                  (1988年録音)

あなたがもしも・・・。

もしも、自分はデリケートなこころの持ち主であり、ときにナルシスティックな思いに耽るアンニュイな時間が至福の楽しみなんです・・・にこっ。。。
などという勘違いも甚だしい想いが、にわかに頭をよぎることがある御仁であった場合。。。

・・・そんなあなたには、きっとフォーレの音楽がお似合いでしょう。

これは、他でもない私のことばでありますが・・・。(^^;)


少し前まで「おかあさんといっしょ」の歌のおねえさんだった、“りょうこおねえさん”もフォーレに心酔していらっしゃったようですし、もっと音楽史上でフォーレが取り沙汰されても何ら不思議はないような気がします。

ヘタすると、ラヴェルの師であったこと、パリ音楽院の院長だったことに触れられていながら作曲家であったことが書いてない(「彼が作曲した“レクイエム”は有名」みたいに、ヒット曲を持つ日曜作曲家のような書き方をされている場合もある)文献もあったりして、フォーレ・フリークの私としては非常に歯がゆい想いをすることがあります。

りょうこおねえさんの他にもチェリストのイッサーリスにあっては、自分の息子にフォーレにちなんで同じ名前“ガブリエル”と名付けるなど、ひとかたならぬ敬意を表している著名な音楽家はいっぱいいるんですけどね。。。


確かに、フォーレって音楽史上に確固とした地歩を築いてるんです・・・。
“レクイエム”は古今東西見渡しても、モツレクなかりせば・・・という人気曲だろうし、歌曲の世界ではシューベルトとシューマンなかりせばといっては褒めすぎかもしれませんが・・・。
他にも“シシリエンヌ”なんて通俗著名曲もありますもんね。

でもイメージ的には決してレギュラー・ポジションを獲得しているとはいえないですよね。
かといって代打の切り札という感じでもない・・・。
強いて言うなら、華麗な守備が売り物の交代要員みたいな感じではないかしら。


でもフォーレのピアノ曲に関して言えば、斬新さでは適わないかもしれないけど詩的であること、旋律と和声が独自の光彩を放っていることなどドビュッシーや、愛弟子のラヴェルと比較しても全く遜色ない唯一無二の世界を確立しているし、もっともっと評価されていいのだと(私は・・・強く・・・ぼそっと)思っています。

ただし、録音の現状はというとこれはちょっと別物かもしれません。
というのは、私、思いますに、彼のピアノ曲を聴きものにするためには独特のセンスが必要なんです。
そしてそれは名ピアニストであれば必ず克服できるというような課題ではないでしょうし、克服の道もこれはひとつではないと思えます。
したがってカリスマ・ピアニストの録音がこぞってあるというわけでもない・・・。


さて、このディスクの演奏者であるキャサリン・ストッツ(ディスクの解説表記に従っています。キャスリン・ストットと表記されている場合もあります)は、近年はヨー・ヨー・マの室内楽の伴奏ピアニストや、小川典子さんとの“ディーリアス(!)”の管弦楽曲のピアノ・デュオ盤のアルバムを発表したりもしている英国のピアニストです。

彼女がこのフォーレのディスクの後に同じコニファー・レーベルからリリースしたラヴェルのディスクの帯に、ラヴェルその人の薫陶を受けたことのある“ペルルミュテールの弟子”と謳われていたので、彼女がフォーレを録音するということは、曽祖父にあたる師匠の楽曲を採り上げたということになりますね。

そしてこのディスクこそ、私とフォーレの出逢いであり、たちまちその魅力の虜としてくれた元凶でもあります。
私がクラシックを聴き始めてほどなくこのディスクに出会い、まさにフォーレのピアノ曲の洗礼を浴びました。
もちろんストットというピアニストを初めて聴いたのもこのディスクなのですが、それまではアルゲリッチとかポリーニみたいなひとが、いろんな意味で神がかり的な内容の普遍曲のディスクを出していたのを聴いていただけだったので、この一枚には心底打たれました。

とにかく今聴いても冒頭の“舟歌 第2番”とハープ曲の編曲である“即興曲 第6番”には感動を禁じえません。

舟歌の出だし、かわいらしいフレーズで始まり上行走句がきらめくように立ち昇っていくさま、まさに印象派の絵の水辺を印象付けるような音楽が味わえます。澄み渡った青空、まばゆい日差しが水面に照り返すときのきらめきが見事に音化されているようです。
即興曲はピアノのオリジナル曲だと言って差し支えないぐらいのアレンジですが、原曲の楽器であるハープには出しえない華麗な大迫力のアルペジオの飛沫(しぶき)に胸が踊ります。
他の曲も秀演で、ホントに一時期ハマッて聴いていましたね。

最初に魅かれたのはVOL.Ⅱですが、併せてむしろ昨今魅力を再発見しているVOL.Ⅰも併せてご紹介しておきましょう。


★フォーレ・ピアノ・コレクション VOL.Ⅰ
                  (演奏:キャサリン・ストッツ)

1. 即興曲 第2番 ヘ短調 作品31
2. 夜想曲 第1番 変ホ短調 作品33-1
3. 3つのロマンス(無言歌集)作品17
4. 舟歌 第6番 変ホ長調 作品70
5. 夜想曲 第6番 変二長調 作品63
6. 舟歌 第5番 嬰へ短調 作品66
7. 夜想曲 第4番 変ホ長調 作品36
8. 舟歌 第4番 変イ長調 作品44
9. 即興曲 第1番 変ホ長調 作品25
10. 舟歌 第1番 イ短調 作品26
11. 即興曲 第3番 変イ長調 作品34
                  (1986年録音)

こちらはピアノ曲としては比較的初期の楽曲を集めています。
先にも触れたとおりVOL.Ⅱを狂ったように聴いていたわりには、このVOL.Ⅰのディスクの良さに気づいたのは比較的最近になってからであります。
正確に言うと、このディスクに収められている楽曲の良さがわかり始めたのが最近であるということですが・・・。
今ではむしろ、お気に入りの楽曲はこちらの方に多いといっても良いのではないかというほどになりました。人間嗜好は変わるものです。(^^;)

即興曲の第2番、第3番に挿まれて主として夜想曲と舟歌が収められるというプログラム。
夜想曲・舟歌ともにフォーレには13曲ずつありますが、歳をとる、すなわち作品の番号が大きくなるにしたがってだんだん晦渋になっていくとはいえ、どれも聴きやすい名曲ぞろいだと思います。

個々の曲では夜想曲第1番・第6番など名演だと思うし、舟歌第1番もこれは名曲だと思います。
即興曲第3番ってホントに夢見がちな素敵な曲ですよねぇ~。

今改めて聴くとストッツの演奏は、ジャケット写真と同じように化粧がややケバいような気がしないでもない・・・それは初期のレコーディングであるために勢い込んで入れ込みすぎている、あるいは気負っているのかもしれませんが、全般的には若々しい表現意欲にあふれておりこれらの曲の詩情を十分に弾き表しているといってよいかと思います。

なんといっても、2枚とも私がフォーレにのめりこむきっかけになったディスクですし・・・。
中身は保障しますといいたくなる演奏ですね。
今の私だからこそこのストッツの演奏を「あのころは青かった」などとぬかしておりますが、逆に私のほうがまだ若くてギラギラしていたということかもしれませんので。。。(^^;)
要するに、私が歳をとって変わったわけです。

ストッツは、この後コニファーにラフマニノフ、ドビュッシー、リスト、ショパン、ラヴェルなどのピアノ独奏曲のディスクを録音し(現代曲のコンチェルトもあったけど聴いていないから割愛)、例外なく私を楽しませてくれました。
録音を重ねるたびに気負いも薄れていき、確かな技巧で真面目に弾き抜かれたこれらのディスクは今でも私の耳に心地よく響いてくれますね。


★フォーレ:ピアノ曲全集
                  (演奏:キャサリン・ストッツ)

※4枚組のフォーレのピアノ曲全集
                  (1994年録音)

彼女は一時期ハイペリオンに身をおき、そこでこのフォーレのピアノ曲全集を録音します。
コニファー盤は事実上入手が難しいでしょうから、ストッツでフォーレを聴きたいと思えば、今なら必然的にこれを聴くことになるのだろうと思います。

こちらは曲種ごとのアンソロジーとしてプログラムが並んでいますから、資料的な価値もあると思います。
ハイペリオンからは抜粋の選集もでているようですから、そちらを聴くというのも手かもしれませんね。(^^)/

いずれにせよストッツの演奏からは、もはや若気の至りの気負いらしきものは消えています。
先ほどの喩えに倣えば、ケバかった化粧が見ため自然にメイクできるようになって、ますます心地よく聴けるようになっているというべきなのでしょうか?

フォーレのピアノ曲全集というと、ユボーのそれとならんでこのセットを思い浮かべます。
ユボーのそれがフランスのエスプリ(訛?)を表現したものだとしたら、ストッツのはフォーレの音楽をインターナショナルに普遍的なものであるかのように表現している。
むしろ、コテコテのフランス趣味のかたでなければストッツの奏楽の方がファースト・チョイスとしては相応しいのではないでしょうか?

フォーレのピアノ曲、まだ知らないと仰る方はぜひ体験してみてください。
冒頭私が述べた要素がある方であれば、虜になること請け合いですよ。(^^)/

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