SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

リスト没後120年特集 (その16 番外編)

2006年12月16日 00時03分52秒 | ピアノ関連
★《ボレットの遺産/リスト&ショパン・リサイタル》
                  (演奏:ホルヘ・ボレット DVD)
1.ショパン:バラード第1番 ト短調 作品23
2.ショパン:夜想曲 嬰ヘ長調 作品15-2
3.ショパン:夜想曲 ヘ短調 作品55-1
4.ショパン:バラード第4番 ヘ短調 作品52

5.リスト:ペトラルカのソネット第104番(巡礼の年 第2年《イタリア》より)
6.リスト:ペトラルカのソネット第123番(巡礼の年 第2年《イタリア》より)
7.リスト:ゴンドラを漕ぐ女(巡礼の年 第2年補遺《ヴェネツィアとナポリ》より第1曲)
8.リスト:カンツォーネ(巡礼の年 第2年補遺《ヴェネツィアとナポリ》より第2曲)
9.リスト:タランテラ(巡礼の年 第2年補遺《ヴェネツィアとナポリ》より第3曲)
                  (1987年録音)
番外編ということで、初めてDVDを取り上げてみました。
このピアニストがディスクにおいてリストを弾くときには、いつもベヒシュタインが使われていましたが、ここではそうではなくスタインウェイが用いられています。
もちろんそのことに起因するであろう感触の違いはありますが、ロマン溢れるグランドマナーに依った演奏はまぎれもなくボレットのものです。
ショパンも含め、映像が残っていたことに感謝です。特にバラ4は入っているのには感激です。
音楽が生み出される瞬間の動く映像が見られることはとても嬉しいものがあります。

巡礼の年から抜粋されていますが、お城のサロンで演奏されていることもあり、とても雰囲気のいい演奏が展開されています。
演奏されている曲の内容は豊かですが、演奏姿はどこまでも淡々としており、画面にもほとんど細工がしていないというか工夫がありません。でもよいものはよいです。最上の意味で芸術家が芸術を想像しているという瞬間の記録という気がします。
尊い!

★展覧会の絵 ~ザ・ヴィルトゥオーゾ
                  (演奏:斎藤 雅広)

1.リスト:ラ・カンパネラ
2・ムソルグスキー:展覧会の絵
3.スクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 作品2-1
4.ワーグナー/リスト:イゾルデ愛の死
                  (2002年録音)
このラ・カンパネラは外せません。ということで、番外編に収録です。
世界中でラ・カンパネラをこのように弾く人は、この人をおいて他にありません。まずはスピードが速い。それだけでスカッとさせられます。
技巧が鮮やか。前にクズミンのところで“難しい曲じゃないみたい”とコメントしましたが、斎藤さんはたやすい曲ではないがこんなに鮮やかに弾いて見せますといった感じで、ヴィルトゥオジティ全開で弾きとおします。正しく看板に偽りなし、タイトルどおりですな。
ペダルのせいか、録音のせいか響きも潤沢に取り入れられており、さらに華やかさを増して演奏効果を高めています。

この後の展覧会の絵も、高橋多佳子さんを聴きなれた耳からすると響きの多い録音です(どっちかというと多佳子さんのほうがソリッドなのかもしれない)が、聴き手を飽きさせずに楽しませてくれるという意味では特筆もの。いたるところに音作りの工夫がいっぱい。さすがは音楽の森の“キーボーズ”!
スクリャービンを経て、イゾルデ愛の死もやりたい放題入れ込んだ演奏で、聴いてる側も巻き込まれてつい頬が緩んでしまう一枚ですね。

我が国のピアニストによる本格的レパートリーのディスクで、ここまでのエンターティメントを感じさせてくれるとはスタンディング・オベーションものです。
きっとオマージュを捧げられたホロヴィッツも、愛好を崩しているに相違ありません。
ブラヴォ~~!!

★リスト大好き!
                  (オムニバス)

1.交響詩「前奏曲」・・・ハイティンク指揮 ロンドン・フィル
2.ピアノ協奏曲第1番抜粋・・・リヒテル(ピアノ) & コンドラシン指揮 ロンドン・フィル
3.ハンガリー狂詩曲第1番 ヘ長調・・・マズア指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス
4.ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調・・・ミッシャ・ディヒター(ピアノ)
5.エステ荘の噴水・・・アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
6.演奏会用練習曲第3番「ため息」・・・クラウディオ・アラウ(ピアノ)
7.愛の夢第3番・・・ユリ・ブーコフ(ピアノ)
8.ハンガリー狂詩曲第3番 ニ短調・・・マズア指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス
 
このディスクの基は、フィリップスへの録音の集大成と見えて大物の演奏が並んでいます。
まあ、それなりの方もいらっしゃいますが・・・

このディスクで一番恐れ入ったのは、ライナーに楽曲解説はあっても演奏者について一言も(!)触れられていないこと。。。
デジタル録音も混じってるというのが凄いというくらい昔に買った(何といっても私が入門用に買ったのだから)ので、もちろんDGやデッカとも合併していないころでクラシック音楽も隆盛を誇っていたころなのでしょうか?
随分恐れ多くもという、この方の演奏が収録されているというだけでハクがつく連中だと思うんだけどなぁ。
初心者はそんなこと考えずに買うのかもね。

さて、これを取り上げた理由はひとえにこの中の“愛の夢第3番”が素晴らしいからであります。
確かにリヒテルが豪胆な演奏を展開していますし、コンドラシンってこんなに素晴らしい指揮者だったのかという再発見もののサポートも聴かれますが。。。
さらにブレンデルやアラウの特徴のよく出た名演もありますが。。。
でもここでは“愛の夢”なのです。

さりげなく気取らない演奏で、どこにも奇を衒ったようなところはなく誠実に描かれていきます。自然体であり特にファンタスティックにしようなどと思っているフシはまったくなくとても好感が持てるのです。
クライマックス後のカデンツァに入る瞬間に一瞬「荒いか?」と思わせる箇所もあるのですが、その後も実に流れよくまとめられています。
フィリップスですから、このほかにもこの曲の名演は数あるはずですが、これを選んだ理由は「初めてリストに触れる人」にデフォルメされていない素の良さを伝えられる曲だと思ったに相違ありません。
個性的な演奏をいっぱい聴いた後にこれを聴いても、地味に思われてしまうかもしれませんけれど。。。
その意味で、ごく初期にこの演奏に出会えていたというのはラッキーだったかもしれません。

演奏者のユリ・ブーコフについてはぜんぜん知らなかったのですが、ネットで検索したらエリザベート王妃国際音楽コンクールの1952年(第1回?)に8位で入賞している人で、メジャーレーベルにもそれなりに録音は残しているらしいですね。CD化はされていないようですが。。。残念。。。と思いつつさらにサイトをのぞいていったら、今年1月に亡くなっていた(!)。。。さらに残念でした。

ともあれ、この演奏がなんとも言えずよいので前回の“愛の夢”特集に繋げるため、わざわざここに“番外編”を置こうという気になったわけですが、追悼の想いも捧げさせていただこうと思います。
ついでみたいで、申し訳ないけれど。。。合掌。

それにしてもメジャーレーベルには、まだまだ私の知らない音源が数多く眠っているんでしょうね。可能な限り復刻してもらいたいものです。
多分そのアーティストの最も旬な時期の演奏が聴けるわけでしょうからね。

ところで、このディスクの選曲を見るとハンガリー狂詩曲が3種類入っている。。。
リストの捉えられ方が今とはまったく違うような気がします。
昔は、リストというと“愛の夢”など人口に膾炙した作品を除けば、ハンガリー狂詩曲が代表作だったという話を聞いたことがあります。他にといったら、トランスクリプションをとんでもなく膨大にやらかしたという話になってしまったとか。。。
誤解されてきた作曲家っていっぱいいますよね。それでも今やリストは評価が正当になされている方なのかもしれない。

蛇足ですが、私が最初に読んだ音楽の本(詳細は忘れましたが)にはショパンのことを“ポーランド生まれのフランスの作曲家”てなことが書いてありました。
間違いではないのでしょうが、なんかひどく間違っているような気がする。。。
“マズルカ”や“ポロネーズ”なんて、阿倍仲麻呂の“三笠の山に出でし月かも”と同じ心境だったのかなぁなんて思ったりして。。。

この表記について、みなさんはどう思われますか?

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