ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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脂肪分解促進物質の過剰と糖尿病・動脈硬化などの疾患

2013年04月13日 |  関連(生物学医学)

〔更新履歴:4/14図の追加〕


 ちょっとサボリ過ぎたので、リハビリを兼ね予定を変更して、ググッていてみかけた記事をメモしておこう。少し古い話だけど、コルチゾール過剰原因説(過去記事はココ)に関連する話である。

 脂肪分解を促進するある特定のタンパク質(AIM。Apoptosis Inhibitor of Macrophage。無理に訳せば「マクロファージ自殺死阻害剤」か?)が体内で過剰になると糖尿病や動脈硬化になりやすくなるらしい。日経記事から、

太っても動脈硬化にならず、特定たんぱく質解明 東大教授ら
2011/7/5
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0500K_V00C11A7CR0000/

 東京大の宮崎徹教授らは、太っていても特定のたんぱく質が働かないと、糖尿病や動脈硬化にならないことをマウス実験で突き止めた。・・・

 体内では「AIM」というたんぱく質が働き、脂肪細胞にため込んだ脂肪を分解している。研究チームはAIMができないマウスを作製。高いカロリーの食事を与えて肥満にしても、糖尿病や動脈硬化が起きなかった。

 通常のマウスはAIMが脂肪を分解し、免疫細胞を呼び寄せる。免疫細胞が炎症性物質を作り、この状態が続くと糖尿病や動脈硬化に進む。AIMがないと、この流れが断ち切られる。・・・


 上記記事の詳細については、プレスリリースと解説記事を東大のサイトから、

肥満から糖尿病や動脈硬化への橋渡しメカニズムを解明
(2011/7/5掲載)
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/2011press.html#20110705
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20110705.pdf (詳細はpdfファイル。以下に一部引用)

3.発表内容:

   [中略]

 発表者[(宮崎 徹 (東京大学大学院医学系研究科附属 疾患生命工学センター 分子病態医科学部門・教授)]らは[2010年]、肥満に伴いAIMの血中濃度が上昇し、脂肪組織に蓄積した中性脂肪を分解することによって、からだ全体の肥満の進行を妨げることを明らかにしていた (文献2)。おそらく肥満が進行すると、からだがAIMを沢山作り、脂肪滴を溶かすことによって、これ以上太るな、という反作用を起動するようになるのであろうと推察される。

 今回の研究では、こうしたAIMの抗肥満作用を上回る食生活の乱れなどにより肥満が進行してしまい、血中にAIMが多量に存在する状態では、AIMによる中性脂肪の分解により脂肪細胞から多量の脂肪酸が放出され、それが脂肪細胞表面にあるToll様受容体(注2)の一つを刺激することによって、脂肪細胞自身が、マクロファージを呼び寄せるケモカイン(注3)というタンパク質を産生していることが明らかになった。すなわち、マクロファージを脂肪組織に呼び寄せ炎症を惹起し生活習慣病の引き金を引くのは、肥満して大量に蓄積した中性脂肪を、大量のAIMが分解することなのである

 実際、AIMを作れなくしたマウスに高カロリー食を与え、過度に肥満させても、脂肪組織にマクロファージはほとんど浸潤しない。そのため、慢性炎症も起こらず、結果的に糖尿病も発症しない(文献3)。動脈硬化についても、AIMを作れなくしたマウスでは、発症や増悪が著しく抑制されることを、発表者らはすでに報告している(文献4)。したがって、血中のAIM濃度が低いメタボリックシンドロームの初期には、AIM自身により肥満を抑制し得るし、肥満が進行して血中AIM濃度も高くなってしまい、糖尿病や動脈硬化の危険性が高くなっている状況では、AIM阻害剤を用い、肥満からこれらの病気への橋渡しを阻止できると考えられる。

  [中略]

 7.用語解説:

(注1)AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage):
 当初マクロファージから分泌され、細胞のアポトーシス(細胞死)を抑制する分子として発表者が発見したもの。その後の研究で、アポトーシス抑制以外にも作用する細胞の種類などの違いにより様々な作用があることが明らかになった。

(注2)Toll様受容体(Toll-like receptor: TLR):
 リンパ球を中心とした獲得免疫に対し、いわいる自然免疫において中心的な役割を果たす、免疫細胞や脂肪細胞の細胞膜上に存在する分子である。刺激されると、サイトカインやケモカインの遺伝子発現を促し、炎症の惹起に寄与する。現在9種類のToll様受容体が見つかっており、脂肪酸は主にTLR4を刺激することが分かっており、脂肪細胞はTLR4を発現している。

(注3)ケモカイン:
 血液細胞や脂肪細胞を始め様々な細胞によって産生される液性タンパク質。マクロファージやリンパ球など、ケモカインの受容体を有する細胞を組織に呼び寄せる働きを持つ。多数のケモカインが見つかっており、今回の報告にある、脂肪細胞によって産生されるケモカインは、主にマクロファージを呼び寄せる働きを持つものである。  (強調は引用者)


図 脂肪組織の肥満進行から慢性炎症が起こるプロセスとAIMの関与
注) 「lypolysis」は脂肪分解の意味。「TLR4」はToll様受容体(前出の注2)の一種。
出典) 前出pdfファイルの資料4頁。



肥満になっても、いいの?
2011/11/09
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/todai-research/editors-choice/obesity-in-their-sights/

 東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授らは、血中に多く存在するAIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)というタンパク質が、炎症の根本的な原因となっていることを突き止めました。

 実は、AIMには脂肪細胞中の中性脂肪を分解する性質があります。つまりAIMは肥満を防ぐ役割を持つタンパク質なのです。AIMの働きを超えて太り続けてしまう状態は、ちょうど車のブレーキをかけながら同時にアクセルを踏み続けているようなものです。肥満にブレーキをかけるためAIMがどんどん増加し、やがてAIMの血中濃度がある値を超えると炎症が起こり、その炎症が全身に波及する結果、生活習慣病が発症するのです (強調は引用者)



 以上をまとめると、次のような経路があるのであろう。

肥満 →血中AIM濃度の増加 
→更なる肥満進行による血中AIM濃度の過剰 
→血中への脂肪酸の多量放出 
→脂肪細胞によるケモカイン(マクロファージ遊走活性物質)産生・放出 
→炎症(マクロファージの呼び寄せ・浸潤)
→全身に波及し糖尿病・動脈硬化へ

 この理解によれば、脂肪分解促進作用を持つ物質が過剰になることがあれば、AIM以外の物質であっても類似のこと起こり得ると考えられる。


 チェルノブイリの例によれば、糖尿病や動脈硬化が増加したとされている。実際、福島でもこのような傾向がみられるようだ。福島県の調査によれば、避難区域等の住民において、肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常の割合が増加している(関連過去記事はココ)。

 また、コルチゾールの主な作用の一つは、脂肪分解促進作用である点が思い出される(関連過去記事はココココ)。


 AIMの場合は、体内での濃度の増減が肥満と密接に関連しているらしい。コルチゾール過剰原因説によれば、コルチゾール濃度の増減が●の影響の程度と密接に関連しているはずなのだが、果たして・・・