ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

2023年8月にテーマ・タイトルを変更(旧は外国語関連)
2015年4月にテーマ・タイトルを変更(旧は健康関連)

一酸化窒素の不足と胸痛

2013年05月02日 |  関連(生物学医学)

〔更新履歴:5/5追記、5/19追記〕


 前回記事(ココ)は前置きということにして、一酸化窒素の不足について引き続き頭の体操をしておこう。

 一酸化窒素はいろいろな生理作用をもつので、仮に高血圧の原因が一酸化窒素の不足にあるなら、他の症状の出現にも影響を与えているものと考えられる。小坂眞一 著「心臓病の9割は防げる」(講談社、2008.10月)をながめていると、他の症状というのは胸痛かなという気がしてくる。

 3.11後は、不可解な胸痛や違和感などを訴える人をよくみかける。最近だと、ツイッターから、

@ShinmonK
@onodekita 大阪ガレキ焼却丁度3ヶ月:ネットの健康被害報告は約千名。目、鼻、喉がいつまで経ってもすっきりせず。日本全国、放射能からは逃げらないが、大阪から70kmほど離れると空気は随分ましに。大阪に帰り様子見。時折胸に違和感、阪大卒の医者は調べても分からず気のせい?
2013/5/1 (強調は引用者)


 ここで言及されている報告というのは、「大阪おかんの会のブログ」の記事だろうか。大阪ガレキ焼却に際しての体調変化の報告を集計した結果によれば、8%程度の人が「心臓・動悸・胸が痛い」の症状を訴えているらしい(動悸も入るので胸痛のみの数字ではないが・・・)。

大阪で119番通報が激増!体調変化レポートNo,10(~3/13)
2013年03月26日(火)
http://ameblo.jp/osakaokan2012/entry-11498469658.html

≪症例数≫

症例総数1,505/報告人数806名 =1.87(一人あたりの平均発症数)

① 喉の異常・咳・痰…554
② 鼻の異常…鼻水・痛み181+鼻血86 ! =267
③ 眼の痛み・かゆみ…263

④ 頭痛…131
⑤ 皮膚の異常…71
⑥ 肺、気管支の異常・息苦しい…79 !

心臓・動悸・胸が痛い…69 !
⑧ 発熱…48
⑨ 倦怠感…47
⑩ 腹痛・下痢…38

その他…吐き気、骨・筋肉、吐き気、耳、めまい、眠気、ヘルペス、痙攣等
*( )は、前回からの変化。 (強調は引用者)


 通常、心臓からくる胸の痛みは、動脈硬化の進行に伴う酸素不足に起因するとされている。小坂眞一 著「心臓病の9割は防げる」(講談社、2008.10月)から、

 しかし、運動したり、興奮したり、また風邪を引いたりして心臓が激しく動くと冠動脈は拡張して、血流が4~5倍にまで増加するのです。

 ただし、動脈硬化で冠動脈が硬くなると、血管が拡張できなくなります。そうなれば、血流が十分に増加せず、心筋に十分な酸素が運ばれなくなるため、酸欠となります。手足の筋肉と同じように、酸欠になると乳酸が溜まり、心筋に痛みを生じます。これが心臓の胸痛で、通常、「締め付けられる」とか、「胸に重しを載せられたように感ずる」ので、狭心痛と言います。 (同書19-20頁)


 中高年に起こる胸痛はこのタイプが多いと想像しているけど、3.11後の胸痛は中高生あたりの子供達にも出ているようなので、別のタイプのものもあると考える必要があるだろう。

 多分、「異型狭心症」(あるいは冠れん縮性狭心症)の初期状態における狭心痛がこれにあたるのではないだろうか。これは、高血圧の場合と同様に、●の影響由来の酸化ストレスによって一酸化窒素の不足が起こるという流れが関与するものである。再び「心臓病の9割は防げる」から、

 冠動脈を含めた動脈が拡がるのは、血管壁を構成する三層構造の真ん中にある中膜のはたらきです。中膜は主に伸び縮みしやすい平滑筋や弾力繊維から成り立っており、弛緩すれば血管は拡がり、緊張すれば収縮して狭くなります。

 中膜の平滑筋をコントロールしているのは、自律神経の交感神経と副交感神経です。しかし、交感神経と副交感神経以外の生理活性物質も、平滑筋を緊張させたり弛緩させたりします。

 生理活性物質のうち一酸化窒素(NO)は、血管の内膜を構成する内皮細胞から生じ、平滑筋を弛緩させて血管を拡張させることが知られています。何らかの原因で内皮細胞に障害が起きると、血管は十分に拡張しなくなります。それどころか平滑筋の緊張が高まって、血管が狭くなることもあります。・・・これが「異型狭心症」発症のメカニズムで、その多くは喫煙によって誘発されることが知られています。 (同書20-21頁)


 少し脱線してみると、この本の残念な点は、著者が古いタイプのタバコ有害説を信奉していることだろうか。このため、喫煙で摂取するニコチンの作用でこのような症状が起こることがあるとしているようだ。

5/5追記:ニコチンの作用について、次のような理解をしているらしい。

 ニコチンは、交感神経を興奮させる強力な血管収縮物質です。タバコを吸った直後に血圧が上がり、手足の温度が下がるのは、ニコチンで全身の動脈が収縮するためです。
(前掲書110頁)


 実際にはニコチンの作用はそれほど単純ではなく、臓器によって異なっていることが最近は明らかになってきている。日本薬学会のサイトから、

 明らかにされてきたニコチンの血管作用
http://www.pharm.or.jp/hotnews/archives/2003/08/post_28.html (2003.8月の記事か?)

 タバコの主成分のニコチンは,喫煙によって肺から吸収され血液中を循環する. ニコチンでよく知られているのは実験動物に静注すると血圧上昇が起こることである.この作用は自律神経を介したもので, 交感神経節のニコチン性受容体を刺激し交感神経の興奮を起こす.しかし,ニコチンは血管に直接作用させると血管を開く(弛緩)作用があり, 最近,その仕組みがわかってきている.脳の血管(豚,猫,犬)では,ニコチンによって血管弛緩が起こる. この作用を起こすには血管を取り巻く神経が必要で,その神経は一酸化窒素(NO)を神経伝達物質とする. ニコチンはこの神経に働きNOを遊離して血管弛緩を起こす.・・・


 分子生物学レベルでみれば、サイト「ストレスと自律神経の科学」から、

アセチルコリンとアセチルコリン受容体 ~副交感神経を中心に~
http://hclab.sakura.ne.jp/nerve_phis_parasympathetic.html

アセチルコリン受容体 (アセチルコリンレセプター)
 迷走神経(副交感神経に属する)の終端より放出されたアセチルコリンの受容体が心臓にあることがわかっています。アセチルコリンがこの受容体に結合することで、心臓の活動が抑制され、拍動が遅くなります。その一方、運動神経と骨格筋の接合部でも、アセチルコリンの放出とその受容体があることが分かっています。こちらは、アセチルコリンが受容体に結合することで、骨格筋である横紋筋(おうもんきん)が興奮し収縮することがわかっています。つまり、アセチルコリンは心臓の細胞活動を抑制し、その一方、骨格筋を興奮させています。このようにアセチルコリンの作用は臓器によってまったく異なっており、アセチルコリン受容体は複数種類あることが推測され、実際にそれが確認されています。

  [中略]

ニコチン性アセチルコリン受容体 (ニコチン受容体・ニコチンレセプター)
 その名前の通り、ニコチンがアセチルコリンと同様の効果を示す受容体です。・・・


 上記によれば、ニコチンは神経伝達物質の一種であり、骨格筋では交感神経を緊張させるが(血管を収縮させる方向)、脳や心臓では副交感神経を刺激し活動を抑制方向に作用するとされている(血管を弛緩させる方向)。

 この理解のほうが実感にあっているのではないだろうか。多くの人は一服するために喫煙し、傍から見ていてもリラックスしているように見えるので(仕事をさぼっとるから当然か?)、やはりニコチンの作用で交感神経が緊張するのみというのは違和感があるのではないだろうか。

 個人的には、タバコに関しても安保 徹氏の言説を支持している。タバコは少量であれば有益だろうというものである(10本程度が境目かどうかはよくわからないけど・・・。また、3.11後は非汚染のタバコは少なくなっていることだろう)。他力本願でいくと、ブログ「アンタッチャブル 911」の記事から、

たばこの害に異議あり
2011年01月21日
http://untouchable911.seesaa.net/article/181794473.html

 ちなみに、僕は日に10本ほど吸っています。何故か?免疫学の先生の本より抜粋します。「自分ですぐにできる免疫革命」安保徹ーこの本、お奨めです。

 「タバコは肺がんの原因とされているが、実際に肺がんが増えているおもな原因はタバコではないと考えられる。、、、ニコチンは副交感神経を刺激し、リンパ球を増やす作用をしますが、タールなどは逆に顆粒球を増やすという反対の作用をする。、、、、いい作用と悪い作用の境目は一日十本程度までで、それ以上吸うと悪影響のほうがどんどん大きくなる、、、。沖縄の100歳以上の長寿者でタバコを吸っている人は、のんびりとした暮しの中でタバコも嗜好品として楽しみで吸っているので、一日せいぜい十本程度です。、、、、」抜粋終わり。 (強調は引用者)


 少量のタバコに何らかのストレスを除去する効果がありそうな点は、次のエピソードが示していると個人的に感じている。サイト「武田邦彦(中部大学)」の記事から、

知の侮辱(8)・・・副流煙(結論が先にある罵倒合戦)
***http://takedanet.com/2012/02/post_d70b.html

 日本に住む誇るべき民族:アイヌは平和を愛し、戦争をしなかった民族ですが、人間が戦争をしないというのはかなり大変なことで、それを達成するためにアイヌはタバコを愛しました。ケンカをしそうになると相手にタバコを勧め、一服して争いを収めたのです.


 本題に戻ると、異型狭心症の一般的な解説については、例えば、東大医学部附属病院のサイトの記事が参考になるだろう。

異型狭心症
http://plaza.umin.ac.jp/~utok-card/info/03.html


 これによれば次のように、誘発因子として「心身の疲労・ストレス」が含まれているので、●の影響由来の酸化ストレスもこの場合に含まれるとして理解してよいと思われる。

治療について
  [中略]

 誘発因子として、心身の疲労・ストレス、喫煙、怒責、寒冷、過換気、女性ホルモン欠乏(更年期など)、アルコールなどが、あります。


 ついでに、異型狭心症も命にかかわる事態になることもあるので(心室細動や心筋梗塞に発展した時)、当然注意が必要であろう。3.11前のエピソードだけど、サイト「怖~い病気のお話」の記事から、
 
怖~い病気のお話 - 異型狭心症
2008 05-07
http://blogpress6.blog111.fc2.com/blog-entry-29.html

・・・胸に重石を載せられたような痛みは、病の始まりを告げる最初のサイン。この時、ストレスによって異常をきたしていた心臓の冠動脈は、過剰に縮んでいたのです。そのため、心臓の筋肉に血液が届かず、酸素不足に陥っていました。しかし、冠動脈は数分後には元に戻ってしまうため、痛みはウソのように消えてしまったのです。これが異型狭心症の恐ろしさ。すぐに痛みが治まるため、多くの人が「たいしたことはない」と思い込んでしまうのです。こうして症状は次第に悪化。そして極度の酸素不足に陥り、異常な動きが生じてしまう心室細動によって死に至ってしまったのです。・・・ (強調は引用者)


 前回もあわせて考えると、●の影響に一酸化窒素の不足が関与するというのが正しいとすれば、酸化ストレスの亢進により体質によって、全身の多くの部分で一酸化窒素が不足するようであれば血管が拡張しないため高血圧の傾向にとなり、心臓の冠動脈付近でで一酸化窒素が不足するようであれば酸素不足を経由して胸痛の傾向になるということかもしれない。

 

・5/19追記: この著名人も異型狭心症だった可能性があるということらしい。

天海祐希「心筋梗塞」45歳スリム女性がなぜ?三谷幸喜の舞台に緊張
2013/5/9
http://www.j-cast.com/tv/2013/05/09174663.html

・・・天海は身長171センチでスリムな体型。心筋梗塞とは無縁のようにみえるが、健康院クリニックの折茂肇名誉院長は原因について、「ストレスや過労だと思う。緊張状態が続くとよくない。血管を収縮するような物質が出て、血管が詰まってしまうのです」という。・・・


コメント    この記事についてブログを書く
« 高血圧の増加には一酸化窒素... | トップ | 交感神経の緊張と心臓病(不... »

 関連(生物学医学)」カテゴリの最新記事