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カンチャン狂騒曲

日々の事をあれこれと、大山鳴動してネズミ1匹がコンセプト。趣味さまざまなどを際限なく・・。

水曜日のうそ

2012-06-03 11:29:59 | 本と雑誌

「水曜日のうそ」(仏)クリスチャン・グルニエ著(河野万里子訳)2006年9月講談社

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年老いたおじいちゃんの扱いを中心に、それをとりまく思春期の子供達と中年に達した現役バリバリの大人達の悲喜こもごもの日常生活が描かれる。

若い者への気遣いを忘れず、それゆえ過去のみに生きようとする老人、昔語りに興味津々で老人にも優しい心根の子供達、今日を戦う親世代の老人にも子供にも足りない理解など、ともすれば手段に汲々として目的や本質を見失いがちな大人の日常に警鐘を鳴らす。

登場人物は善人ばかりの、心温まる物語である。

ゆえに切ない。

どこにでもある物語であるがゆえに・・・。

老人の問題は自分の近未来の問題であり、子供達の悩みはかつて自分が悩み苦しんだ筈の悩みである。

それでも、そういう問題に煩わされていては今のキャリアが積み上げられない。

現実は厳しいのだ、これ以上煩わせないでくれと思う、のだ。

毎週水曜日30分間だけのおじいちゃんとのお茶の時間をめぐる小さな嘘は、ある意味でけっして小さくない傷を私達の心に残す。

図書館の本棚から引っ張り出したのは、運が良かったと自分でも思う一冊。

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