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哪吒(なた) 孫悟空とも戦った中華世界の英雄

2017-05-07 14:26:47 | Weblog

一神教であるユダヤ、キリスト、イスラム文化圏に対し、多神教と土着の民間信仰が混然となっている東洋では、純然たる仏教のキャラクター以外で、天使に該当する存在を見つけるのは難しい。
天使とは、神や仏そのものでなく「神の遣い」であって、元は人間だった者が武術や仙術を極めて超人になった者とは違う。
とすると、東洋には天使はあるか?...
敢えて言えば、哪吒は中華世界の天使である。

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「人か?神か?玉帝が遣わした童子」

哪吒は『西遊記』や『封神演義』にも登場する、実に人気の高い英雄だ。
その姿は、童子の姿で表わされることも多いのだが、戦闘時には身長六尺(つまり十八㍍)、三面八臂となり、
首には金の首輪をはめ、剣火尖槍などの武器を持ち、風火輪で天空を駆けるとされる。

明代に成立した『封神演義』などでは、哪吒は、周代(紀元前十二世紀)の李靖(りせい)王の第三子として生まれたことになっているが、元代の『三教捜神大全』にまとめられた哪吒伝承の起源などでは、彼は「玉帝上皇の遣い」とされている。

この玉帝上皇とは、実在の皇帝ではない。
中華文化圏には、本来ヤーヴェやアッラーの様な人格神としての最高神と云う概念はないのだが、
道教での玉帝上皇(或いは儒教の用語での「天帝」)とは、最高神の様な存在である。
哪吒は李靖王の子として生まれたが、玉帝が、人間に災厄を為す悪鬼の類を懲らしめる為に、
李靖王の夫人である素知の胎内に直接その魂を送り込んで(投胎)生ませ、地上に遣わした者とも謂われている。

実際、周代と云うのは、半ば史実、半ば神話の時代。
哪吒と並ぶ中華世界の英雄である二郎真君(『封神演義』では楊戩)は、より後年に実在モデルがいて、
一応、仙術を極めた人間の道士と云うことになりそうだが、哪吒は、仙人とも、神や仏そのものとも言い難く、敢えて言えば神の子だから天使となりそうだ。また、仏教が普及して以降、これと混然となった伝承では、哪吒は毘沙門天の子であるとも、李靖王が毘沙門天の化身だったとも言われている。

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「時代を飛び越え、活躍し続ける英雄」

いずれの伝承、物語に於いても共通しているのは、哪吒は幼童の頃から相当の暴れん坊で、べらぼうに強かったと云うことである。
哪吒は幼児期(生後三日目、七歳など諸説あり)に水浴びをしていて龍王の水晶殿を踏んづけてしまい、そのまま龍王と喧嘩になった末、これを倒したと云う。この話の印象が強い為か、彼は可愛らしい幼童の姿で描かれることが多い。

哪吒は、唐代が舞台の『西遊記』でも、暴れん坊だった当時の孫悟空を懲らしめる役の一人として登場する。この時の哪吒は仏の遣いである。幾つかの伝承では、哪吒は一度自決したが、如来が復活させたとされている。

哪吒には金吒(きんた)・木吒(もた)と云う二人の兄がおり、彼は李靖王の三男坊であった。
それ故、哪吒三太子とも呼ばれる。金吒・木吒も玉帝の遣いで、李靖王の子として生まれた。
金吒は真面目だが地味で、儒教の建て前から謂えば長男が一番偉いはずだが、幼童の姿をしていながら暴れん坊の哪吒が、
昔から庶民には大人気だった。
そればかりか、哪吒は派手な親子喧嘩もしている。
彼の父である李靖王が、息子の蛮勇が世を騒がすものと思い込み、哪吒の廟を壊した為である。
そう、中華文化圏では、支配階級の建て前は、年長者を立てる儒教の忠孝悌の道徳だったが、庶民の本音は道教の自然主義で、龍や鬼神はもとより、兄や父さえ圧倒する奔放な末っ子の哪吒は、庶民の本音を反映したヒーローだったのだ。
哪吒は、現代でも、中国大陸はもとより、台湾や香港なども含めた広い中華文化圏で大人気であり、哪吒が登場するTVドラマや漫画が、大量に作られている。

              

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今日も小雨が降ったり風も少し強め、しかも「黄砂」が確認されましたですね。

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