ヘンリー8世
ヘンリー8世の6人の王妃たち
(下段真ん中がキャサリン・ハワード)
王妃たちに纏わる幽霊の噂が絶えないハンプトン・コート
テューダー王朝のヘンリー8世といえば、英国国教会の基礎を築いた人物として知られる。
しかしながら、その功績の背景には、カトリックでは禁止されている離婚と結婚を繰り返した、王の破天荒な私生活があった。
*6人の妻との「傲慢過ぎる結婚生活」
兄の死去により、次男ながら王となったヘンリー8世は、兄の妻だったキャサリン・オブ・アラゴンと結婚した。自らの王位を盤石なものにする為には、キャサリンが必要だったのである。2人の間には王女はいたが、王子はできなかった。どうしても男児がほしいヘンリー8世は、王妃の侍女で既に愛人関係にあったアン・ブーリンに目をつけた。キャサリンを離縁してアンを正式な王妃とし、世継ぎを生ませようとしたのである。
ところが、キャサリンとの結婚も特例として許されたものであり、再びカトリックの掟を破る離婚など、許されるはずもなかった。加えてキャサリンは、神聖ローマ皇帝カール5世の叔母にあたり、こちらからも横槍が入った。こうした背景からローマ教皇は、ヘンリー8世の離婚と結婚を認めなかった為、ヘンリー8世はカトリックと縁を切り、英国国教会を設立したのである。
*「男の子を産めない妃」は用済み
しかし、アンとの間に王子ができず、2度に渡る流産に及んでヘンリー8世は彼女に見切りをつける。アンが姦通したとでっち上げて処刑してしまったのだ。アンの後釜には、彼女の侍女ジェーン・シーモアが座った。ジェーン・シーモアは待望の男児エドワードを生んだが、本人が産後直ぐに亡くなった。4人目の妻はクレーヴ公女アンだった。しかしこちらはヘンリー8世が彼女の容貌を気に入らず、直ぐに破綻。 ヘンリー8世はまたしても離婚し、離婚したアンの侍女であったキャサリン・ハワードと結婚した。しかし、キャサリンはヘンリー8世より30歳も若く、奔放な女性で、密通が発覚して処刑された。
最後の結婚は1543年。相手は女官のキャサリン・パーであった。 6人の妻のうち、ヘンリー8世の愛情を得られず離婚された2人も気の毒だが、更に気の毒だったのは処刑された2人である。特にアン・ブーリンは、全くの濡れ衣を着せられ、ただ「男子を産まなかった」という理由だけで殺されたのである。
*幽霊となって今も宮殿に住む3人の妻
ヘンリー8世の妻のうち、非業の死を遂げた2人と、若くして産後直ぐに亡くなったジェーン・シーモアは、幽霊となってハンプトン・コートに現れるという。 ジェーン・シーモアの幽霊は白いドレスを着て、ロウソクを持ち、宮殿の中を歩き回っている。けれど、ロウソクの炎は全く揺れず、ジェーンの表情は暗く、とても気味が悪いという。 アン・ブーリンの幽霊は青いドレスを着ている。その装いは彼女の肖像画に描かれたドレスと同じだ。首のない姿や、切り落とされた首を膝に乗せて現れることもあるというから恐ろしい。 3人の幽霊の中でも、最も劇的なのがキャサリン・ハワードだ。キャサリンは密通がバレたと知ると、王へ命乞いをする為に、必死に王がいる部屋へ駆け出した。そして、そのドアを開ければ王に会えると思った瞬間、護衛の者に捕まり、引き戻された。
この時の、泣き叫んで王に命乞いをする瞬間のキャサリンの姿が、幽霊になっても再現されるという。 彼女たちは、今もなおハンプトン・コートに留まり、無念を訴え続けているのだろうか。
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