太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

名前

2017-05-03 08:06:07 | 日記
小学生の頃、持ち物のすべてに母がマジックで名前を書いた。

竹製の30センチのものさし、体育で使う鉢巻、上履き、傘、そろばん、ハンカチにまで書いた。

それはありがたいことなのだが、

母はときどき、カタカナと漢字を混ぜて書く。

私がそれが嫌でしかたがなかった。

どういうことかというと、

私の旧姓の苗字には、最後に「川」がつく。

その「川」だけが漢字で、上の部分をカタカナにするのだ。


たとえば、


吉川だったら  ヨシ川  と書く。


なぜカタカナで書くのか、母に聞いたことがある。

すると母は言った。

「だってめんどくさいもの」

それなら全部カタカナにすればいいではないか。

「カワ、より川のほうが簡単じゃない」


今となれば母の理屈もわからないではないが、子供の私はそのカタカナ+漢字をみるとため息が出た。

そろばんの赤いケースに書かれた「カタカナ+漢字」の名前を見せて

私はそれがどんなに嫌かということを友達に話してきかせた。


「人生はうまくいかないことのほうが多いんだよ。いやになるね」


友達はそう言って、ピンクのランドセルの蓋を閉めた。

今でこそ、ランドセルはいろんな色があるようだが、当時は男子は黒、女子は赤と決まっていた。

でもその友達だけが、ピンクのランドセルだった。

彼女は越境通学をしていて、時々近くの祖父母宅に帰った。

彼女の家庭にどんな事情があるのか話さなかったし、聞いたことはなかったけれど、

10歳にして人生を見切るような体験をしている彼女の前で、

名前をどんなふうに書かれようが、そんなことはあほらしくどうでもいいことにみえた。

ジンセイの意味は知っているけれど、

自分のそれが始まっていることも、その意味を考えたこともなかった。






「でもさ・・・やっぱ好きじゃないんだもん・・・」


私は心の中でそう言って、名前の上を指でなぞった。









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2 コメント

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Unknown (みき)
2017-05-04 09:03:54
シロちゃんの
全部漢字で書いてほしいっていう
子供心、わかるなぁ。。
私もそうしてほしいかも。

ランドセルを背負っていた時代に
人生の意味を考えたこともなかった。

うまくいかない「正体」を知れば
ちょっとは楽になるのかなー。







みきちゃん (シロ)
2017-05-04 13:48:08
わかってくれるか!ありがとう。


私も人生なんて言葉、考えたこともなかったさ。
子供は大人の事情にまきこまれてしまうから、無力感があったのかもね。
うまくいかない正体、かあ。
どうにかならなくても、それが見えたら、なにもわからないよりはいいかもしれないよ

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