太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

天使に出会った実話 21

2024-07-31 06:49:02 | 天使に出会った実話
Carmel reilly 「With angels beside us」より


Tom   72

妻が亡くなって10年になる。
彼女は私よりも若かったから、当然私の方が先に逝くのだとばかり思っていたのに、私が退職して、もっと多くの時間を妻と過ごす前に逝ってしまった。

週に何回か、私は妻の墓に行く。
それは家族墓で、彼女はそこに埋まっているわけでないのだが、荼毘にふしたあとの灰を撒き、目印の石をそこに置いてある。

妻と話したくなったとき、私はそこに行って、日常に起きた些細なことを話す。
あの人がどうしたとか、仕事でこんな失敗をしたとか、洗濯機がうまく動かないとか、そういったことだ。
妻からの返事はないけれど、彼女が何を言うだろうということは想像がつく。
だから返事はなくとも、私はこの会話を楽しんでいるし、妻が、私が食器洗い機と格闘しているのを見て笑っていると思うと、それだけで元気が出る。

時々、私はどうしようもなく寂しくもなる。
ある時、新しい孫のジェイについて話していた。
ジェイは妻が亡くなった2年後に生まれた。だから妻はジェイがどんなに素晴らしい女の子か知らない。もし妻がジェイを見たら、どんなに誇りに思うだろうか。そう思ったら泣けてきた。
私は立ったまま泣きじゃくりながら、ジェイのことを話し、そして、どんなに君がいなくて寂しいか、君がいない生活がどんなにつまらないかということを話した。

その時、温かい手が肩に置かれたのを感じた。
そして誰かがこう言った。

「彼女もまたあなたが恋しいと思っているのですよ。でもあなたは彼女の分もジェイを愛してあげなければ」

頬にかかる息まで私は感じた。
けれど私は目を閉じたままでいた。なぜか、開けてはいけないような気がして。

私は墓の石によりかかり、目を開けた。
私以外にはそこには誰もいなかった。
でも、私は確かにメッセージを受け取ったと感じていた。
妻が亡くなって初めて、妻はいつでも私のそばにいるのだと強く確信した。
そして、いつか私の番が来たとき、妻はそこで待っていてくれるのだと。
私の肩に置かれた手の感触が、静かに消えた。

その声の主が言ったことは正しい。
妻は孫たちが成長するのを見届けることはできないのだから、その分、私が彼らを見守り、彼らのおばあちゃんがどんなに素晴らしい人かを伝えなくていこうと思っている。












グッときた

2024-07-30 07:21:53 | 日記
日本人は、あまり「愛してる」と言わないけれど、ここじゃ挨拶がわりと言っていいほど、アイラブユーが飛び交う。
そもそも、「愛してる」と「アイラブユー」の持つ意味合いには違いがある。
日本の「愛してる」は、男女間にほぼ限られていて、その意味は重くて湿り気があるのに対して、「アイラブユー」は男女にも使われるが、誰にでもいつでもどこでも使えて、重くて湿り気がある意味になることもあるし、ただ好意を持っていることを伝えるだけという軽い意味もまた、あるのである。

アメリカ人は、ほんとによくアイラブユーを使う。
友達にも同僚にも、ペットにも。
夫婦間でも、ちょっとした合間に、思い出したように「アイラブユー」と言い、「アイラブユー、トゥ」と返す。
アイラブユーを言わない日はなく、もはやその言葉は掛け声に合いの手のようなもので、その言葉に対する感動などというものはなくなってしまう。

昨日、夫と洗面所で寝る前の歯磨きやら何やらをしていたとき、夫が言った。

「一緒に年をとってくれてありがとう。これからが楽しみだよ」

それは胸に直球で入ってきた。

「Same to you, thank you 」

あわててわざと明るく返したが、不覚にも涙が出そうになってしまって困った。

夫には、まあ、言いたいことはいろいろとある。
どの夫婦も似たようなものだろうけども。
それは向こうも同じこと。
私が離婚した時に姉がくれた手紙に、

全く違う人間同士なのだから、わかりあえなくて当たり前。だけど、相手のことをわかりたい、わかってあげたいというひたむきな気持ちが互いにあれば、きっと乗り越えていけるはず。

と、あった。正しいことをまっすぐ貫こうとする姉の、姉らしい手紙に胸が熱くなった。
それは最初の結婚で私達になかった最大のことだった。

私は夫を許してる、などと調子に乗っているが、私だって許されているのだ。きっとわたしが思うよりも、多く。

これからが楽しみだと言った夫の言葉が嬉しかった。私はそんなふうに考えたことはなかったけれど、私も楽しみにしていよう。







天使に出会った実話 20

2024-07-29 06:47:18 | 天使に出会った実話
Carmel reilly 「With angels beside us」より


Sally 42

私はいつも、若者たちの車の運転が乱暴であることに懸念を抱いていた。彼らは命知らずで、他の人のことなどまったく気にかけていないようだ。

田舎に住む私の友人、アンナの話である。

ある夜、眠っていたアンナは、誰かが乱暴にドアを叩く音で目が覚めた。
ドアを開けると、とても取り乱した様子で女性が立っていた。
その女性は、事故の通報をしたいので電話を使わせてもらえないだろうかと言う。
女性が電話で話している内容によると、車の事故があり、3人はまだ息があって、そのうち一人は茂みの中に放り出されている、ということだった。

アンナは二階の寝室に行って上着をひっつかみ、家の鍵をつかんだ。
何か助けになるかもしれないと思ったからだ。
アンナが1階に降りた時、女性はもういなかった。事故があったという場所は、アンナの家から歩いて5分ぐらい、むろん彼女は走った。

で、これが不思議なことなんだけれど、アンナが家を出たその瞬間に、車同士が衝突する音を聞いた。急ブレーキの音、そして爆音が2回続いた。その直後、大きな火柱が上がるのが、樹々の向こうに見えた。
アンナはできる限り速く走って現場に向かった。
2台の車が路肩にあり、その1台は逆さまになって燃えていた。もし誰かが中にいたとしたら、助からないだろう。
もう1台は柵を突き破って木の茂みに突っ込んでいた。
アンナの家に来た女性は、どこにもいない。

そこへ救急車や警察の車が次々にやってきた。文字通り、事故発生から1分もたっていない。
救急隊員や警察官が忙しく走り回り、救急車はここから5分もかからない町の病院に向かった。

そのあと警察官がアンナの家に来て、事故の詳細を尋ねた。
アンナは、辻褄が合わなくても正直に説明するしかなかった。
ある女性がいきなり訪ねてきて、事故の通報をし、アンナが外に出た後に事故が起きた音を聞いたということを。
アンナはその時、他の事故が起きたのだと思った、とも話した。

警察官は、全員十代の若者で、3人は命を取り留めたこと、燃えた車にいた一人はたぶん即死だったこと、2台の車とも常識を超えるスピードで走っていて、コントロールを失ったのだろうと説明した。

後日、アンナはその事故についての新聞記事を読んだ。
記事には、警察が、誰かわからない事故の通報者に感謝している、なぜなら、通報者のおかげで3人目の若者の命が助かった、と書かれていた。
3人目の若者は少女で、車のフロントガラスを突き破って深い茂みに投げ出されたから、女性の通報がなかったら発見が遅れて、彼女は助からなかっただろうということだ。

この話はこれで終わり。
あの女性が、なぜ事故が起きる前に、事故が起きることを知っていたのか。
通報は、たぶんその少女を助けるためだったのではないか。
アンナの疑問は答えを見つけ出せないまま、宙に浮いている。

私はスピリチュアルとかいったことをあまり信じないのだが、私は何か目に見えない力が働いて、あの少女の命を救った、ということを認めないわけにいかない。
私たちはなぜここにいて、どんなにここにいることの大切さをないがしろにしているか。
私たちは生かされていることのありがたさに日々感謝し、与えられた時間を無駄にしてはいけないと、改めて思う。






天使に出会った実話 19

2024-07-28 07:24:31 | 天使に出会った実話
Carmel reilly 「With angels beside us」より

Bill  75

妻が亡くなってから、天使が妻からの手紙を届けてくれる夢をよくみるようになった。その手紙は、几帳面な妻の文字で書かれていた。
手紙の内容は、特に重要なことではなく些細なことが大半だった。
たとえば、私たちが若い頃にあった、笑い話のような思い出だったり、
私がちゃんとした食事をしているか、出かける時にドアの鍵をかけているのかというような、もし妻が生きていたらまさに言ったであろうことだ。

ある手紙には、結婚式の日のどんな小さなことも覚えていると書いてあった。
結婚式の披露宴で、私の従兄弟が酔っぱらってパーティ会場の隅っこで寝てしまったことは、手紙を読むまで私はすっかり忘れていた。
そして、妻がどんなに私が恋しくて、愛しているか・・・・・

私も、いつも返事を書いて、家族からの手紙を入れておくのに使っていたビスケットの缶に入れている。
ばかばかしいと思われるだろうのはわかっているけれど、そうすれば、天使がそれを妻に届けてくれるような気がするのだ。
私が返事に何を書いたかはここには書かないが、殆ど些細なことばかり、そう、妻が書いてくるようなことだ。
もちろん、私がどんなに妻を愛していて、恋しいと思っているかはいつも書いている。






天使に出会った実話 18

2024-07-27 07:32:23 | 天使に出会った実話
Carmel reilly 「With angels beside us」より

Marco  28

僕は父の死を天使から聞いた。
いや、その言い方は違っているかもしれないな、ことのあらましは、こうだ。

僕は家から遠い大学に通っていて、父は癌で臥せっていた。でも、治療の効果は目にみえてあり、僕らは父が元気になれるのではないかと期待していた。
ある日、広い市場で買い物をしていたら、誰かが肩を軽く叩いた。振り向くと、会ったことのない男性が立っていた。彼は、

「あなたのお父さんが、僕のことは心配しなくていい、そしていつも自分らしく、幸せでいなさい、と伝えて欲しいと言っているよ」

それだけ言うと、にっこりと笑って歩き去った。
市場はとても混雑していて、彼を追いかけたけれど見失ってしまった。

なぜかわからないけれど、何かよくないことが起きたのだと思った。
僕は走りに走って自分の部屋に戻り、実家に電話をかけたが話し中だった。15分も電話をかけ続けたのに、その間ずっと話し中なのだ。

その時、誰かが部屋のドアをノックした。
開けてみると、妹だった。妹は夜明け前に起きて、ここまで車を運転してきたのだと言う。
妹が入ってくるなり、僕は言った。

「何か悪いことが起きたんだろ?」

妹は頷いて、泣きだした。
僕は妹を部屋の中に座らせて、家に電話をかけ続けたのに繋がらなかったと言ったら、これは電話なんかじゃなく、面と向かって伝えなければと思って、わざと電話の受話器を上げてから家を出たのだといった。

あとになって妹が、なぜ僕が悪いことが起きたことを知っていたのかと尋ねた。
突然訪ねたし、何が起きたか知らなかったはずなのに、僕が知らせを聞いて意外と落ち着いていたのも不思議だったという。
妹はちょっとがっかりしているようにみえたのは気のせいか。
僕がもっとひどく驚いて泣いたりするのを期待していたのかもしれない。
もちろん、僕は泣いた。でもそれは一人になってから。
誰か大切な人が亡くなったとき、悲しみが沸き上がってくるのに時間がかかることってあるだろ?

とにかく、僕は父が亡くなったその瞬間に、父からメッセージを受け取ったのだ。
僕は天使なんて信じていたわけじゃなかったのだけれど、あの男性は天使だったとしか説明のしようがないと思う。