太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

無知とは恐ろしい世の中

2024-05-26 11:11:35 | 日記
しばらく更新できなかったのにはワケがある。

あれは5月15日のことだ。
その日は休みで、朝の9時頃にパソコンを使っていた。
すると突然、バーンと画面が変わって、AIの声で「このコンピュータはハックされました、けして画面を閉じないでください、そしてMicrosoftのカスタマーセンターに連絡してください」と繰り返す。

機械ものにはてんでダメな私。
心臓バクバク。
画面を閉じようにも、閉じられないし、何か大変なことが起きているという焦りばかり。
こんなときの駆け込み寺の、家電店に持って行こうと急いで支度をするも、時計を見たらまだ開店前だ。
そうしている間にも、AIの声は繰り返し同じことを叫んでいる。
仕方がないので、画面に出ているMicrosoftのカスタマーセンターに電話をしてみた。

これが大きな間違いだったのだが、何も知らない私は藁をもすがる思い。
応対したのは、ジェイムズ・ティーという男で、懇切丁寧にどうすればよいかを説明した。
まず、誰がハックしているのかを調べると、7人のハッカーが画面に現れた。
その中に、ロシアの子供ポルノを売買するグループがあり、ジェイムズが、
「あなたの名前でロシアの誰かがポルノを買ってしまえる、ということなんですよ」
と脅す。

ジェイムズとやり取りすること1時間。
途中で、私の携帯電話も誰かに聞かれているからという理由で、いったん切り、向こうから新たな電話がかかってきて会話が続く。
今度は電話の向こうで何人かの声が混線しているのか、後ろで他の電話と話しているのか、雑音が入る。
それまで、ジェイムズはMicrosoftのカスタマー担当だと信じて疑わなかった私に疑問が湧いたのは、相手が私の銀行口座にある金額を聞いてきたときだった。

「それを言わなければならない理由はなに?」

「あなたの銀行口座のお金を守るためだよ。もし犯罪に巻き込まれるようなことが起きた時、政府側とちゃんと話を通すためには、前もって銀行に、ハックされたかもしれないということを伝えておかなければお金は戻ってこない可能性がある」

疑問ではあったけれど、おおまかな数字を伝えた。
そうすると、今度は銀行の名前を聞いてくる。

「それを言ってどうするの?」

「こちらから銀行のヘッドクォーターに連絡して、その人と話をしてもらうためだよ」

「そんなの、私があとから電話するからいい」

「だってこの電話は誰かに聞かれているんだよ?」

「他の誰かの電話を借りるからいい」

ここまで来て、私は誰を信用していいかわからなくなっており、心の中で、私の後ろの人達に助けを求めていた。

「ねえジェイムズ、私はもう何を信用していいかわからなくなったよ」

「わかるよ、その人が本当のヘッドクォーターの人なのかも信用できないっていうんでしょ?」

「その通り」

「僕は確かにMicrosoftのカスタマー担当で、人々を助けようとしているだけなんだよ、わかってもらえるかな」

さんざん迷ったように見せかけて、私は全然違う銀行の名前を言った。


ちょうどそこに、午前10時過ぎだというのに夫が帰宅してきた。雨がひどくて仕事にならず、早じまいしたのだという。
私は電話を保留したまま、何が起きているのか手短に説明をした。

「ロシアの犯罪組織が私の名前でよからぬものを買うかもしれないって。Microsoftのカスタマー担当の人がそれをなんとかしてくれるっていうんだけど、銀行にあるお金とか銀行名とか聞いてきてさ・・」

最初はドッキリしていた夫も、だんだん信じられなくなってきたようで、電話を切っていいという。

銀行名も聞いたことだし、ここまできたらもう一押しと思ったのだろう。ジェイムズがたたみかける。

「今、〇〇(ウソの銀行名)のヘッドクォーターに電話するから、その人と話してくれるかな。あなたのケースナンバーは〇〇〇に設定したから、何かあったときにはこのナンバーを言ってくれればわかるようになっているから」

「あのねジェイムズ、いろいろ考えたんだけど、やっぱり信じきれないからやめとくわ」

すると先方は焦り、説得を試みるも私の意思が変わらないとみると、突然投げやりになった。

「わかった。それならもうさっきのケースナンバーは抹消されるし、何があっても自分でなんとかするしかないけどいいんだね?じゃ、バイバイ」

「(@^^)/~~~バイバイー」


午後、夫と共に駆け込み寺の家電店にパソコンを持ち込んだ。

「はは!それは奴らの手口。Microsoftは絶対に電話番号を画面に乗せたりしないよ、電話してほしくないんだもん」

パソコンは入院して、全部きれいにしてもらうことになった。


私とジェイムズのやり取りはスピーカーにしていて、夫もそれを聞いていたのだが、

「あれはジェイムズなんて名前じゃないよ。アジャタン・ポーとかいう名前だよ」

「なんじゃそれは」

「たぶんインドから電話してるんじゃない?そんなアクセントだよ」

英語のアクセントなど、私にはイギリスかアメリカかぐらいしかわからない。
聞き取れなくて何度も聞き返したり、スペルをいちいち言わせたりする私に、ジェイムズはあまりに辛抱強すぎた。本物のMicrosoftの人だったら、明らかにめんどくさそうになるに決まっている。


とにかく、パソコンは無事に退院してきた。
一応プロテクトするものには入っているので、今後気を付けるのは、定期的にすべてのパスワードを替えること、もし同じようなことが起きたら、ESCを押して画面を閉じて、家電店に持ち込むこと。
と言われた。
私も懲りた。

無知とは恐ろしい世の中である。






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