いつ頃か忘れたが鉄五郎新道というのを知ってから、一度歩いてみたいと思っていた。
今日こそその日だと思って、寸庭峡へひとり戻った。
何でも鉄五郎新道は地図にないというが、ま、行ってみりぁ何とかなるだろうって。
1時半頃寸庭橋を渡って今度は朝とは反対に左へ。
分かれ道が二か所あって迷いながら進みつつ、畑仕事のおじさんに聞いてみた。
すると鉄五郎新道を知っていたので教えてもらった。
おじさん曰くイワウチワの群落があるが、もう3月でおわったな~と。残念!
お蔭で何とか登山口にたどり着いた。
今になって思い返せば地図に載っていないからとはいえ、地図持参なし。
熊よけの鈴は付けたが、下山時には熊の大きな黒いうんちを3回見た。
この道標を最後に山中には全く道標がなかった。
人っ子ひとりとして歩いていなかった。
不安がちょっとよぎったが、いつものケセラセラで突き進んでしまった。
お腹が満たされ知らない山へ登るという面白さもあったかも。
いくら登って行っても同じような杉林の景色が続いた。
右に沢の音が絶えずしていた以外は静けさそのもの。
時折新緑がある位で花もなく、飽きて来た。
でも急坂がドンドン続いていて引き返すに引き返せず。
どこまでもどこまでもザラザラとした急な坂があって、もう意地になって登って行ったような。
がしかし3時を回って、このまままだまだ登るんかい?と一抹の不安がよぎった。
スマホで位置情報を入れて目的地、御岳山や大塚山、大楢峠など入れてみた。
でもスマホにはわかりませんと言われてしまった。山の中じゃ……。
バッテリーの残量は12%、もしかすると遭難の連絡をする事も考えて。
そこでどうしようか?と初めて下山を考えた。
3時がタイムリミットと思い、来た急登を今度はひたすら下る事にした。
急坂なので滑りやすくて時々木につかまりながら、捻挫や骨折しないように下った。
途中までピンクのテープがあって助かったが、半分も下らないうちに無くなった。
踏み跡を探して、登ったり下ったり行ったり来たり右往左往。
どうにも道が見つからず、ヤブの中やスギやホウ葉のたまった斜面を下った。
唯一沢の音が聞こえていたのでその方向へ下った。
いつしか沢にぶつかってしまったが、沢に下りずに登り返した。
ワンゲル時代に沢へは下りるな、登り返せと教わったから。
横移動をしたり登り返したり、丸太を登ったりヤブをくぐったり、這いつくばったり……。
障害物競走に出ているようで、ズボンや手袋、靴までもがドロドロになった。
4時を過ぎても見通しは明るくならず……。
遭難したのかも、そうなんよ、なんてダジャレ行ってる場合じゃなくて。
そんな時上の方に見えた木の立て札、そういえばこんなのが道にあったな~って。
ズルズル滑りながらも登って行って、ヤッター、来た道にたどり着いた。
それからは気持ちに余裕が生まれてトレランで登山口まで。
午後一で渡った登山口の細い橋が見えた時は、思わずガッツポーズ。
里山に出て電車の時刻を見て、6時までには家に帰り着かねば……とひたすらロードを走った。
ここ数年ひとりハイクが多くて、青梅丘陵や野鳥の森で道迷いしている。
でもでも今日の道迷いが人生最大最悪だった。
夜お風呂に浸かりながら、生きているっという実感がヒシヒシと湧いて来た。
遭難しかかって、脳みそが5年位若返った気がしている。