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『インコは戻ってきたか』

篠田節子、2004、『インコは戻ってきたか』、集英社 (集英社文庫)

女性誌の編集部で働く響子は、家庭を持ちながらも、つらくなったときには「響子、がんばるのよ」と自らを励ましながらタフな生活を送っている。子供に優しく、響子の仕事に理解を示してくれている夫だが、性生活も途絶えてひさしい。30代後半の懸命に働く女性、そんなそんな彼女に、久しぶりの海外取材旅行がとびこむ。
東地中海のキプロス島のリゾートの取材旅行である。女性誌であるので、高級リゾートや地中海の夕日、世界遺産の教会など、限られた日程と予算をやりくりして、取材プランを立てる。予算をカットする目的もあって、以前に依頼したことのあるヨーロッパで仕事をしている日本人カメラマンとロンドン空港で待ち合わせることになっていた。しかし、予定していたカメラマンは、都合がつかず、待ち合わせにやってきたのは風采のあがらない、とりつくしまのない雰囲気のカメラマン檜山であった。
キプロス島でレンタカーを借りて予定の場所の取材をつづけるが、地元を知っているらしく、実用英語を駆使する檜山にたよらざるを得ない。それなりに順調に取材を続けるが、方向をよく間違うトラブルが時々ある。
キプロスは、南半分がギリシャ、北半分がトルコが支配する分裂国家である。ギリシャ正教とイスラム教という対立も当然存在する。高級リゾートを要する一方、分裂国家としての矛盾と陰謀が渦巻いていた。カメラマンの檜山は、それまで、ビルマの少数民族の取材の際、やまれず銃をとったこともある。日常の生活をしているのが少数民族、それを破るのが政府軍という状況の中で、かれは、少数民族のが後して戦うことになったのだ。彼の背中には、そのときに追ったという傷があることに響子は気づき、かれはファッションや風景をとるカメラマンではなく報道カメラマンではないかとの疑いをもつ。
彼らの旅の中で、事件は起こった、ギリシャ系の少年が境界線を越えて北側に侵入し、殺され、そのことをきっかけに愛国的な行動が起きる。しかし、それには、国際的な政治的陰謀が隠されていて、巻き込まれたの市民がひどい目に遭うのだが、主人公の響子と檜山もまた渦中にはいる。檜山の運転するレンタカーが境界線を越えて、警備するトルコ軍に逮捕される。

檜山の写真のねらいは、戦争のような渦中にありながらも、人々の日常である。アナロジーとして、人生という戦争を戦う響子の一瞬息を抜いた写真やキプロス紛争のさなかの白いインコを持つ少年の写真という檜山の撮影した画像が本書の最後のキーとなる。

檜山は紛争に巻き込まれて死亡し、響子は日常に帰るが、しかし、檜山の遺作展に文章を寄せ、会場で先の画像を見た響子の胸の中、読者はどのように読み取るだろうか。

インコは戻ってきたか (集英社文庫)
篠田 節子
集英社

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2009-09-04 21:19:50 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


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