この作品は、プラハから669人のユダヤ人の子供たちをイギリスに送り出した青年ニッキーことニコラス・ウィントンとその後半生(物語としての現在はあんソニー・ホプキンスが演じる)のシーンが繰り返えされる。第二次大戦前、平凡なビジネスマンだった青年が、プラハでの難民の窮状をなんとかしなくてはと、プラハ現地のイギリス大使館で説得を試みる。子供たちを、イギリスに送り込み、養子として受け入れてもらう。その受け入れ家庭を探し、活動資金も母親の支援を得ながらやり遂げ、669人の子供たちをイギリスの家庭に送り届けることに成功した。ナチスによるチェコスロバキア地方のユダヤ人は強制収容所に5000人が送り込まれ、生還したのはその一割に満たないと言う。
イギリス政府は、この計画に主体的はかかわらず、現地大使館員の協力があったにしても、腰の引けたものだった。ニッキーの物語が次第に明らかになるのは、 1980年台の彼の晩年のことで、彼が身辺整理のために自宅に保管されていた膨大な資料を資料館に持ち込み、受け入れた資料館がテレビ番組にその内容を知らせて、生存する子供たちとニッキーを対面させるという企画番組の放映以降のことだった。
物語の初期、プラハのユダヤ人ラビに養子による避難が必要であることを訴えた際、受け入れ家族がユダヤ系とは限らないと否定的であったラビも、ニッキーの両親はイギリスに移民してきたドイツ系ユダヤ人であるものの彼自身は国教会でユダヤ教にはゆかりが無いとしても、それはユダヤ人には違いないとして、ニッキーの計画の協力してくれた。
日本でも6月から放映されていたようだ。ウクライナやガザに限らず、人道支援が政治的な争点になってしまう現在、この作品はもっと視聴されても良いのではないかと思った。