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Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「図書8月号」(岩波書店) その2

2019年07月30日 09時53分23秒 | 読書

★武満徹5「聞かせてよ愛の言葉を」          片山杜秀
「戦争に必要な資源や労働力を‥国家が統制しうるという大枠だけを定め、時局の様相に基づく判断を行政に丸投げした国家総動員法は、まことに悪法であった。しかもそれは狡猾な法でもあった。私の自由は、企業から個人まで、大日本帝国憲法によって、原則としてはあくまで守られるという体裁である。私の自由と公の論理によって強制的に抑制しすぎれば、‥国体の変革に繋がり‥治安維持法に抵触してくる。したがって、学徒の勤労動員も、建前としては国家による強制的命令ではなく、学校に自主的に組織された報国隊という名の団体が、国家に自らの意思で協力するかたちをとった。‥国家はいざというときに曖昧さの森の中に逃走でき、免責されうる。‥いわゆる無責任の構造である。日本ファシズムの恐ろしさはそこにある。」
「西洋的な文化教養は日本精神を害する。西洋のどの国が見方で敵で中立なのかということは、いちいち問われない。‥舶来信仰と西洋崇拝とそれがより行き渡ったのが有閑階級であるということへの不快感と反感。それが民衆レベルでの自主的な検閲の論理というよりも情念であった。20歳になっても例外的に兵役を猶予され高塔教育機関に通い続ける「青白きインテリ」と、その予備軍としての中学校以上の学徒に対する、国民の多数派である小学校での庶民の怨念が総動員を社会で下支えした。‥大学生や専門学校生を軍隊に行かせ、未成年学徒に労働者の苦労を味わわせることに一種の快感があったわけだ。」
 
「日本型ファシズム」の定義として、少し丁寧に引用してみた。70年代をピークに、形の上では「学歴」の差は解消したことになっていたが、現在は所得差が拡大し、所得水準による学歴差が大いに拡大している。もう一度、現代を見つめ直す契機としたい。

★風土記博物誌 神が遺したもの    三浦佑之
「(常陸国風土記那賀郡)今も各地に伝わる大男伝説の一つで、ダイダラ坊、ダイダラボッチなどさまざまな名で呼ばれ、山や池などを作った話が遺る。同様の伝承は播磨国風土記にもあって‥。そのなかで(常陸国風土記の)大櫛の伝承が興味深いのは、そこが、縄文時代の貝塚として現代まで伝えられていることである。‥縄文時代の貝塚は、七世紀の人びとにとってもわれわれと大して変わらず数千年も前の遺物であり、大男のしわざだとかんがえたのはよくわかる。それに対してたかたが二、三百年前のことでもわからなくなってしまうこともある。‥風土記の編纂から二、三百年前のことでも、とうに事実はおぼろになり、神や偉人の事績になてしまう。そう考えると、伝承の深浅を測るのは、なかなかむずかしいものだと思わざるをえない。」

 今月号は16編のうち、9編に目を通した。



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